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有縣 勝蔵・民子 6
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片野医師が救急科が着くと、調度、外に救急車が到着した。片野医師はそのまま救急搬送口の扉から外に出て、日比野医師たちと合流した。
「日比野先生!」
「あっ片野先生。すみません、一応ご連絡しといた方が良いかと思いまして。…救急隊からの連絡時点では、大分危険な状態のようで…。」
救急車の扉が開き日比野医師は会話を止めて駆け寄った。ストレッチャーが数人で引き出され、日比野医師も勝蔵に声を掛けながら、そのまま処置室へ向かっていった。
すると、救急車から、民子が一博に支えられながらゆっくりと降りてきた。片野医師は、すぐに民子たちの元に駆け寄った。
「有縣さん。」
「…先生。本当に急なことで…。」
涙を流し、どもりながら話す民子に対し、一博が民子の肩を叩き、片野医師に話を始めた。
「親父、自分の部屋に戻るまではいつもと同じだったんです。しばらくしてから、何かが倒れる音が聞こえまして、慌てて親父の部屋を覗いたら…。」
「…そうですか、大変でしたね。とにかく、処置室の待合に向かいましょう。」
片野医師は、二人をゆっくりと待合のベンチまで案内した。
「こちらでお待ちくださいね。」
片野医師は二人にそう言うと、処置室の中に入ろうとした。
「先生!」
一博が声を掛けると、片野医師は扉に手を掛けたところで立ち止まり、一博に振り返った。
「親父、今日俺とお袋に遺書やら預金通帳なんかを渡してきたんです。それが最後の会話です。…もし親父がこのまま…なんてことがあったら、出来すぎるくらいのタイミングですよね。…神様ってのは意地悪な奴だと思っちゃいますよ。」
「…勝蔵さんの様子、見てきます。」
片野医師は、一博に返す言葉が見当たらず、そう言って処置室の中へと入っていった。
中では、日比野医師や嬉野医師、看護師らが声を出し合い、必死に救命活動を行っていた。
「日比野先生、ダメです!」
「AEDの用意を!嬉野先生、心臓マッサージお願いします。」
日比野医師の指示を受け、嬉野医師は、勝蔵に股がるように上になり、心臓マッサージを始めた。
その様子を片野医師は、じっと見つめていた。こうした、消えかかった命との格闘している場面を直接見るのは久しぶりな感じがした。
自然と頬に涙が伝った。
日比野医師は、ふと後ろを振り返り、片野医師の姿を見付けると、大きな声で話し掛けた。
「片野先生、すみません。外でお待ちのご家族にお声掛けしていただけますか?」
それは、勝蔵の命がもうじき消えてしまうことを意味していることを理解し、片野医師は頷いた。涙を拭い、処置室の扉をそっと開けた。
「嬉野先生、一回どいて!AEDを!」
扉が開いているため、慌ただしい声や足音が民子と一博にも聞こえた。
「ご家族の方、中にどうぞ。」
片野医師は、二人の顔をじっと見つめながら声を掛けた。
一博は、中の慌ただしい雰囲気と、片野医師の表情を見て、勝蔵が危険な状態であることを悟り、民子の背中を優しく撫でた。
「…お父さん、意識戻ったのかい?」
まだ、状況を呑み込めてない民子は、一博に質問をした。一博は、民子の目をじっと見つめ、首をゆっくり横に振った。
「行くぞ、お袋。…親父に話したいこともまだあるだろ?」
一博は、民子を支えながら、片野医師に続いてゆっくり処置室へと入っていった。
民子は、目の前で心臓マッサージを受けている勝蔵の姿を見て、目を丸くした。
「…そういうことか…。」
民子は、力なく呟いた。
「お二人、もっと勝蔵さんの側に!」
日比野医師が、勝蔵の口に呼吸器を当てながら呼んだ。
ゆっくりと勝蔵に近づく二人。
「勝蔵さんに声を掛けてあげてください。」
日比野医師の言葉に、一博は一歩前に出て、勝蔵の耳元で声を掛けた。
「親父!一博だ!遺書渡してすぐに死んじまうなんて許さねぇぞ!戻ってこい!」
一博が声を掛けている最中も、嬉野医師の心臓マッサージは続いていた。
「親父!親父はまだやり残したことが山程あるんじゃないのか!?お袋のためにも、もう一度頑張ってくれ!」
一博も段々と涙が混じる声になり、心臓マッサージを続ける嬉野医師も汗を滝のように流し、呼吸を荒くしていた。
すると、それまで微動だにしなかった民子が一歩二歩と前に出た。その気配に、一博は振り向いた。
「お袋…?」
民子は勝蔵の耳元ではなく、心臓マッサージをしている嬉野医師に近づき、勝蔵の胸の上に重ねている嬉野医師の手に自分の手を重ねた。
処置室の空気が一変し、皆の視線が民子に集中した。
「もういいです。」
民子の一言に嬉野医師は固まった。
「お袋?」
一博がそっと民子に近づいた。
「もう、充分です。このまま逝かせてやってください。…ありがとうございました。」
民子はそう言うと、振り向き処置室の扉に向かって歩き出した。
「お袋!?」
「一博、後はあなたに任せるわ。私は外で待ってます。」
民子はそのまま処置室を出ていった。
「お袋…。」
あっさりとした態度の民子に、呆然と固まったままの一博を見て、片野医師は民子を追って処置室を出ていった。
ピーーーッ。
心拍数0を示す機械音が、処置室に鳴り響いた。
「日比野先生!」
「あっ片野先生。すみません、一応ご連絡しといた方が良いかと思いまして。…救急隊からの連絡時点では、大分危険な状態のようで…。」
救急車の扉が開き日比野医師は会話を止めて駆け寄った。ストレッチャーが数人で引き出され、日比野医師も勝蔵に声を掛けながら、そのまま処置室へ向かっていった。
すると、救急車から、民子が一博に支えられながらゆっくりと降りてきた。片野医師は、すぐに民子たちの元に駆け寄った。
「有縣さん。」
「…先生。本当に急なことで…。」
涙を流し、どもりながら話す民子に対し、一博が民子の肩を叩き、片野医師に話を始めた。
「親父、自分の部屋に戻るまではいつもと同じだったんです。しばらくしてから、何かが倒れる音が聞こえまして、慌てて親父の部屋を覗いたら…。」
「…そうですか、大変でしたね。とにかく、処置室の待合に向かいましょう。」
片野医師は、二人をゆっくりと待合のベンチまで案内した。
「こちらでお待ちくださいね。」
片野医師は二人にそう言うと、処置室の中に入ろうとした。
「先生!」
一博が声を掛けると、片野医師は扉に手を掛けたところで立ち止まり、一博に振り返った。
「親父、今日俺とお袋に遺書やら預金通帳なんかを渡してきたんです。それが最後の会話です。…もし親父がこのまま…なんてことがあったら、出来すぎるくらいのタイミングですよね。…神様ってのは意地悪な奴だと思っちゃいますよ。」
「…勝蔵さんの様子、見てきます。」
片野医師は、一博に返す言葉が見当たらず、そう言って処置室の中へと入っていった。
中では、日比野医師や嬉野医師、看護師らが声を出し合い、必死に救命活動を行っていた。
「日比野先生、ダメです!」
「AEDの用意を!嬉野先生、心臓マッサージお願いします。」
日比野医師の指示を受け、嬉野医師は、勝蔵に股がるように上になり、心臓マッサージを始めた。
その様子を片野医師は、じっと見つめていた。こうした、消えかかった命との格闘している場面を直接見るのは久しぶりな感じがした。
自然と頬に涙が伝った。
日比野医師は、ふと後ろを振り返り、片野医師の姿を見付けると、大きな声で話し掛けた。
「片野先生、すみません。外でお待ちのご家族にお声掛けしていただけますか?」
それは、勝蔵の命がもうじき消えてしまうことを意味していることを理解し、片野医師は頷いた。涙を拭い、処置室の扉をそっと開けた。
「嬉野先生、一回どいて!AEDを!」
扉が開いているため、慌ただしい声や足音が民子と一博にも聞こえた。
「ご家族の方、中にどうぞ。」
片野医師は、二人の顔をじっと見つめながら声を掛けた。
一博は、中の慌ただしい雰囲気と、片野医師の表情を見て、勝蔵が危険な状態であることを悟り、民子の背中を優しく撫でた。
「…お父さん、意識戻ったのかい?」
まだ、状況を呑み込めてない民子は、一博に質問をした。一博は、民子の目をじっと見つめ、首をゆっくり横に振った。
「行くぞ、お袋。…親父に話したいこともまだあるだろ?」
一博は、民子を支えながら、片野医師に続いてゆっくり処置室へと入っていった。
民子は、目の前で心臓マッサージを受けている勝蔵の姿を見て、目を丸くした。
「…そういうことか…。」
民子は、力なく呟いた。
「お二人、もっと勝蔵さんの側に!」
日比野医師が、勝蔵の口に呼吸器を当てながら呼んだ。
ゆっくりと勝蔵に近づく二人。
「勝蔵さんに声を掛けてあげてください。」
日比野医師の言葉に、一博は一歩前に出て、勝蔵の耳元で声を掛けた。
「親父!一博だ!遺書渡してすぐに死んじまうなんて許さねぇぞ!戻ってこい!」
一博が声を掛けている最中も、嬉野医師の心臓マッサージは続いていた。
「親父!親父はまだやり残したことが山程あるんじゃないのか!?お袋のためにも、もう一度頑張ってくれ!」
一博も段々と涙が混じる声になり、心臓マッサージを続ける嬉野医師も汗を滝のように流し、呼吸を荒くしていた。
すると、それまで微動だにしなかった民子が一歩二歩と前に出た。その気配に、一博は振り向いた。
「お袋…?」
民子は勝蔵の耳元ではなく、心臓マッサージをしている嬉野医師に近づき、勝蔵の胸の上に重ねている嬉野医師の手に自分の手を重ねた。
処置室の空気が一変し、皆の視線が民子に集中した。
「もういいです。」
民子の一言に嬉野医師は固まった。
「お袋?」
一博がそっと民子に近づいた。
「もう、充分です。このまま逝かせてやってください。…ありがとうございました。」
民子はそう言うと、振り向き処置室の扉に向かって歩き出した。
「お袋!?」
「一博、後はあなたに任せるわ。私は外で待ってます。」
民子はそのまま処置室を出ていった。
「お袋…。」
あっさりとした態度の民子に、呆然と固まったままの一博を見て、片野医師は民子を追って処置室を出ていった。
ピーーーッ。
心拍数0を示す機械音が、処置室に鳴り響いた。
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