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第2節 畑 賢太郎
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畑の返答に、更に目をキラキラさせた足立は、満面の笑みで畑の手を握りながら言った。
「じゃあランチ一緒に!ね!!」
「は、はい。」
足立はルンルン気分で会議室をあとにした。畑は正直オカルトには興味がなかった。どちらかというと荒木と同じで非現実的なものは信じない性格だった。
足立にそんな面があることを今日初めて知り、少し衝撃を受けていたが、ショートヘアが良く似合う容姿はとても可愛らしく自分より3つも年上とは思えない女性と二人でランチに行けるならいっか、と思い、畑も会議室を出た。
12時03分
3分前に昼休憩のチャイムがなっていたが、畑は切りが良い部分まで作業をし、今ワードを上書き保存した。それを見た足立がテンション高めに話し掛けてきた。
「よし!じゃあ畑くん行こっか!私のオススメの店でいい?」
「は、はい。よろしくお願いします。」
いつもと違う二人の様子を稗田たちは、ニヤニヤしながら見ていた。
そんな周りの目線には気が付かない畑は、きっとカフェ的な店だと勝手に想像し、ハンバーガーとかサンドイッチ系だなと勝手に決めていた。
5分後、足立がオススメする店に着いた。
「…え?ここっすか?」
畑の予想は見事に外れた。その店は、夜は呑屋となるであろう、正直お洒落とは程遠い古びた小料理屋だった。
微妙な表情になっていたのだろう、畑を見た足立が申し訳なさそうに言った。
「あれ、和食ダメだった?」
「え、いや、全然そんなことないっす。いや、俺が勝手にきっとお洒落なカフェ的な店かなぁと想像してただけで。煮物とかもめっちゃ好きです。」
「なら良かった。入ろう。」
足立がガラガラとガラスの引き戸を開けるとお客が全くいない店内が見えた。カウンター席と小上がりの畳敷きの机が二卓ある小さめな店だった。
「いらっしゃい。お、かぐらちゃん、今日もありがと。」
どうやら本当に常連らしい。さっきは失礼なリアクションしちゃったかなぁと反省する畑だった。
「こんにちは。小上がりいいですか?」
「どうぞ。あれ、珍しいね男連れなんて。彼氏かい?」
ニヤニヤしながら聞く店主に足立が即答する。
「ただの職場の同僚ですぅ。」
畑にはその時の足立がとても可愛らしく見えた。
「はじめまして、同じ職場の後輩の畑です。足立さんが超オススメの店があるって連れてきてもらいました。」
「かぐらちゃん、宣伝してくれて嬉しいよ。兄ちゃん、店はこんな感じで見た目汚いけどよ、味には自信あっから!安心してゆっくり食べてってくれ。勿論オマケもするからよ。」
「オジさんありがとう。じゃあお任せ定食二つで!」
「はいよぉ。」
二人は席に座り、足立がセルフサービスで置いてあるポットからお茶を注いで畑に渡した。
「付き合ってくれてありがとう。」
「いえ、こちらこそ。こうやって二人でのランチは初めてですね。なんかドキドキしちゃいます。」
「なんかさ、会議でオカルト魂に火がついちゃって、誰かに話したくてしょうがなくてさ。」
ドキドキのくだりは無視ですかと思ってる畑に、足立が続ける。
「私さ、呪いって本当にあると思うの。」
いきなりかと畑は少しドキッとした。
「なんでそう思うんです?呪いだけじゃなくて霊とか宇宙人とかアカシックなんちゃらとか、どういうきっかけで信じるようになったんですか?俺は興味は少しはありますが、正直そういう類いの存在は信じていません。」
「きっかけかぁ。まぁ呪いってのは体験ないけど、心霊写真が偶然撮れちゃったことが始まりかなぁ、高校生の時にね。」
最初は全く興味なかった話題だったが、足立の話を聞くうちに、すっかり興味が湧いていることに、まだ畑自身は自覚していなかった。
「マジっすか!?心霊写真撮れちゃったのはヤバイっすね。なんか悪いこと起きたりしました?」
「そうなのよ、その三日後に一緒に写ってた友達が事故に合って、生死の境をさ迷ったのよ。まぁ無事に意識取り戻して今は普通に生活送れてるけど、あの時は本当に怖かったわ。」
「お祓いとかしてもらったんすか?」
「もう友達の事故の連絡が来た瞬間に近くの神社に連絡して、すぐにしてもらった。写真も奉納したし。」
「凄い経験ですね、それはオカルト信じざるを得ないかも。」
とても嘘をついてるとは思えない足立の話に、畑も霊の存在を信じざるを得ない心境になった。
「まぁそういうきっかけよ。で、話戻すけど…」
「話し中すまんね、お任せ定食二つおまちどうさま。」
店主がお盆を両手に料理を運んできた。
「今日は良い鯵が手に入ったからアジフライ定食だ!どうぞ。」
「うわぁ美味しそう。」
足立のテンションが更に上がった。
「いただきます。」
畑は、醤油を少しかけてアジフライをひと齧りした。揚げたてのアジフライは激ウマだった。
「いやぁウマイッす!店を見た目で判断してた自分に反省です。」
「ハハハ、私も最初は恐る恐るって感じで入ったよ。でもほら、よくテレビで店は汚いけど、味は最高っていう店特集とかよくやってるじゃん!見た目で判断しちゃいけないんだって考えを改めてさ。だいたい店がボロくなるまで潰れずに残ってるんだから、味は美味しくて常連さんがいっぱいいるんだって結論に至ったよ。」
「ですね!」
畑も自然と笑顔になっていた。
「あ、そうだ。呪いの話でしたよね。」
アジフライを頬張りながら、畑が思い出したかのように話をふった。
「じゃあランチ一緒に!ね!!」
「は、はい。」
足立はルンルン気分で会議室をあとにした。畑は正直オカルトには興味がなかった。どちらかというと荒木と同じで非現実的なものは信じない性格だった。
足立にそんな面があることを今日初めて知り、少し衝撃を受けていたが、ショートヘアが良く似合う容姿はとても可愛らしく自分より3つも年上とは思えない女性と二人でランチに行けるならいっか、と思い、畑も会議室を出た。
12時03分
3分前に昼休憩のチャイムがなっていたが、畑は切りが良い部分まで作業をし、今ワードを上書き保存した。それを見た足立がテンション高めに話し掛けてきた。
「よし!じゃあ畑くん行こっか!私のオススメの店でいい?」
「は、はい。よろしくお願いします。」
いつもと違う二人の様子を稗田たちは、ニヤニヤしながら見ていた。
そんな周りの目線には気が付かない畑は、きっとカフェ的な店だと勝手に想像し、ハンバーガーとかサンドイッチ系だなと勝手に決めていた。
5分後、足立がオススメする店に着いた。
「…え?ここっすか?」
畑の予想は見事に外れた。その店は、夜は呑屋となるであろう、正直お洒落とは程遠い古びた小料理屋だった。
微妙な表情になっていたのだろう、畑を見た足立が申し訳なさそうに言った。
「あれ、和食ダメだった?」
「え、いや、全然そんなことないっす。いや、俺が勝手にきっとお洒落なカフェ的な店かなぁと想像してただけで。煮物とかもめっちゃ好きです。」
「なら良かった。入ろう。」
足立がガラガラとガラスの引き戸を開けるとお客が全くいない店内が見えた。カウンター席と小上がりの畳敷きの机が二卓ある小さめな店だった。
「いらっしゃい。お、かぐらちゃん、今日もありがと。」
どうやら本当に常連らしい。さっきは失礼なリアクションしちゃったかなぁと反省する畑だった。
「こんにちは。小上がりいいですか?」
「どうぞ。あれ、珍しいね男連れなんて。彼氏かい?」
ニヤニヤしながら聞く店主に足立が即答する。
「ただの職場の同僚ですぅ。」
畑にはその時の足立がとても可愛らしく見えた。
「はじめまして、同じ職場の後輩の畑です。足立さんが超オススメの店があるって連れてきてもらいました。」
「かぐらちゃん、宣伝してくれて嬉しいよ。兄ちゃん、店はこんな感じで見た目汚いけどよ、味には自信あっから!安心してゆっくり食べてってくれ。勿論オマケもするからよ。」
「オジさんありがとう。じゃあお任せ定食二つで!」
「はいよぉ。」
二人は席に座り、足立がセルフサービスで置いてあるポットからお茶を注いで畑に渡した。
「付き合ってくれてありがとう。」
「いえ、こちらこそ。こうやって二人でのランチは初めてですね。なんかドキドキしちゃいます。」
「なんかさ、会議でオカルト魂に火がついちゃって、誰かに話したくてしょうがなくてさ。」
ドキドキのくだりは無視ですかと思ってる畑に、足立が続ける。
「私さ、呪いって本当にあると思うの。」
いきなりかと畑は少しドキッとした。
「なんでそう思うんです?呪いだけじゃなくて霊とか宇宙人とかアカシックなんちゃらとか、どういうきっかけで信じるようになったんですか?俺は興味は少しはありますが、正直そういう類いの存在は信じていません。」
「きっかけかぁ。まぁ呪いってのは体験ないけど、心霊写真が偶然撮れちゃったことが始まりかなぁ、高校生の時にね。」
最初は全く興味なかった話題だったが、足立の話を聞くうちに、すっかり興味が湧いていることに、まだ畑自身は自覚していなかった。
「マジっすか!?心霊写真撮れちゃったのはヤバイっすね。なんか悪いこと起きたりしました?」
「そうなのよ、その三日後に一緒に写ってた友達が事故に合って、生死の境をさ迷ったのよ。まぁ無事に意識取り戻して今は普通に生活送れてるけど、あの時は本当に怖かったわ。」
「お祓いとかしてもらったんすか?」
「もう友達の事故の連絡が来た瞬間に近くの神社に連絡して、すぐにしてもらった。写真も奉納したし。」
「凄い経験ですね、それはオカルト信じざるを得ないかも。」
とても嘘をついてるとは思えない足立の話に、畑も霊の存在を信じざるを得ない心境になった。
「まぁそういうきっかけよ。で、話戻すけど…」
「話し中すまんね、お任せ定食二つおまちどうさま。」
店主がお盆を両手に料理を運んできた。
「今日は良い鯵が手に入ったからアジフライ定食だ!どうぞ。」
「うわぁ美味しそう。」
足立のテンションが更に上がった。
「いただきます。」
畑は、醤油を少しかけてアジフライをひと齧りした。揚げたてのアジフライは激ウマだった。
「いやぁウマイッす!店を見た目で判断してた自分に反省です。」
「ハハハ、私も最初は恐る恐るって感じで入ったよ。でもほら、よくテレビで店は汚いけど、味は最高っていう店特集とかよくやってるじゃん!見た目で判断しちゃいけないんだって考えを改めてさ。だいたい店がボロくなるまで潰れずに残ってるんだから、味は美味しくて常連さんがいっぱいいるんだって結論に至ったよ。」
「ですね!」
畑も自然と笑顔になっていた。
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