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第2節 命の条件
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仕事柄、一般的な物より高価な印刷機を持っている正人だが、そこはやはり家庭用であるため、200ページ以上に及ぶ資料の印刷には30分分近くを用した。
正人は、漸く印刷が終わった資料を手に取ると、ソファに座り、印刷中に淹れたコーヒーを飲みながら、ページ番号に沿って読み始めた。
まず、冒頭にはリムの開発目的が書かれていた。
要約すると、事故や天災による死者を蘇らせるためだとか、病による死者を健康体で蘇らせるためだとか、いくつか使用目的が書かれていたが、正人は最後の理由が本音なのではと考えた。
それは、“来る戦争に備えるため“である。
この目的には、この文章以上の説明がなかったため、正人は想像を膨らました。
現在の日本は隣国との関係は過去最低と評される状況であり、専門家はいつ戦争になってもおかしくない状況であるとよくテレビや雑誌でコメントしていた。最も首相は、そのようなことは絶対に有り得ないと連日のようにマスコミに答えてはいるが、アメリカとの友好関係も薄れてしまっている現在、戦争に対する危機感は、多くの国民が抱いていた。
きっとこのリムは戦死した者を蘇らせ、また兵隊として利用するといった、人権に反する行為をも実現できるものなんじゃないかと、正人は感じた。
目的の後、目次を挟むと、この機械の中枢つまり死者を蘇らせるメカニズムが多くのページを費やして書かれていた。難しい横文字も多く、書かれている2割も理解できそうになかったが、眞鍋が言っていたとおり、蘇らせたい対象の遺伝子が必要と書かれていた。
つまり、正人がこっそり骨壺から取り出した骨や、皮膚、髪の毛、爪、もちろん肉や内臓、とにかくその対象の一部分さえあれば、蘇らせることが可能のようだ。
また、対象という言葉には、人間のみでなく、犬や猫、鳥や魚、虫といった全ての生き物が含まれているようだ。ということは、遺伝子さえ残っていれば、絶滅してしまった動物の復活も有り得るということなのでは、と正人は考えた。
次の章からは、死者を蘇らせることができる条件が書かれていた。
まず、死者であること。つまり自分の分身を作ろうというのは不可能らしい。
次に、死刑による死者でないこと。これは、死ぬべき人間だということで、法の下に命を奪ったため、法に逆らう行為はしてはならないということらしい。
次に、蘇らせた対象を引き取る者が明確であり、その者の意志であること。つまり、やたらめったら拾った髪の毛などを使って遊び半分で蘇らせることを禁じているようだ。
次に、対象が人間の場合、その者の人権を最大限に尊重すること。これは、例えばストレス発散の道具に用いたくて死者を蘇らせるような行動を禁じているようだ。
というと、戦死した者を再び戦争に向かわせるために蘇らせることは、人権の尊重にはならないのではと正人は考えた。だが、次の一文でそれも可能だとわかった。予め、蘇りを希望する旨をリムに登録した者が対象の場合は、本人の意思を最大限尊重すること、とう文章だ。
多分、戦争に駆り出される場合は、こういった内容を強制的に登録させられるのであろう。条件は、これら以外にもいくつかの記載があった。
次の章では、蘇らせた対象は、いつの状態で蘇るのかといった内容が書かれていた。つまり、末期がんで亡くなった人間を、再び末期がんの状態で蘇らせても全く意味のないことであり、他にも老衰といった寿命で亡くなった者もこれに当てはまるだろう。
この答えは、使用した遺伝子と同時期ということらしい。つまり、30歳の人間を蘇らせる際に、その者の20歳の時の髪の毛を用いた場合、対象は 20歳の状態で蘇るということだ。
更に驚く内容が、脳への様々な記憶は、全て髪の毛1本、爪一欠片の遺伝子に記憶されており、基本その時の様々な記憶を保有した状態で蘇るということだ。ただし、対象の本人にとって重要な記憶ほど鮮明に残っており、その逆は記憶の奥底で眠った状態で蘇るということのようだ。対象により左右される事柄であり、蘇らせた側との認識の差異が生じることがあると書かれていた。
次の章には、リムを利用する際の注意事項が山程記載されていた。
正人がまず注目したのが、゛罰則゛とうたわれている段で、誤った使用をした者には命をもって償ってもらう、という記載だった。
誤った使用とは前述の条件やルールの違反のことを指すのだろう。正人が驚いたのが、命をもって償うという、その方法だ。
リムのメカニズムの説明にも係るが、死者を蘇らせるには、蘇らせた者を引き取る責任者が必要であり、その責任者の情報をリムに登録する必要があった。それは、氏名や住所などの基本情報だけでなく、その者の遺伝子情報も必要であるということ。
そして、その命で償う方法というのが、強制的に脳の機能を停止させ、それは心臓や肺の機能の停止につながり、死に至るという内容だった。その強制的に脳の機能を停止させるメカニズムは、難しい言葉や内容であったが、要約すると呪いのメカニズムを踏襲するものとの記載があった。
また、人間のみでなく動物を含む尊い生命を決して弄ぶことのないように仕組まれた機能であるという一文が目立つ書体で書かれていた。
正人は呪いのメカニズムというのはわからないが、先日死刑囚となった桐生朱美の呪い事件の方法とリンクしているのだろうと感じた。
そして、死刑によって死んでいく人間の技術を、逆に人間を生き返らせる技術に活用するとは、それこそ人間味がないのではないかとも思った。
条件にあった死刑による死者を蘇らせることはできないという条件は、きっと桐生朱美個人を生き返らせることはできないに読み替えてよいのだろう。
それは、このリムが搭載している技術について、オリジナルである桐生朱美を口封じするための条件なんだろうと考え、少し桐生朱美が気の毒にも思えた。
正人は、漸く印刷が終わった資料を手に取ると、ソファに座り、印刷中に淹れたコーヒーを飲みながら、ページ番号に沿って読み始めた。
まず、冒頭にはリムの開発目的が書かれていた。
要約すると、事故や天災による死者を蘇らせるためだとか、病による死者を健康体で蘇らせるためだとか、いくつか使用目的が書かれていたが、正人は最後の理由が本音なのではと考えた。
それは、“来る戦争に備えるため“である。
この目的には、この文章以上の説明がなかったため、正人は想像を膨らました。
現在の日本は隣国との関係は過去最低と評される状況であり、専門家はいつ戦争になってもおかしくない状況であるとよくテレビや雑誌でコメントしていた。最も首相は、そのようなことは絶対に有り得ないと連日のようにマスコミに答えてはいるが、アメリカとの友好関係も薄れてしまっている現在、戦争に対する危機感は、多くの国民が抱いていた。
きっとこのリムは戦死した者を蘇らせ、また兵隊として利用するといった、人権に反する行為をも実現できるものなんじゃないかと、正人は感じた。
目的の後、目次を挟むと、この機械の中枢つまり死者を蘇らせるメカニズムが多くのページを費やして書かれていた。難しい横文字も多く、書かれている2割も理解できそうになかったが、眞鍋が言っていたとおり、蘇らせたい対象の遺伝子が必要と書かれていた。
つまり、正人がこっそり骨壺から取り出した骨や、皮膚、髪の毛、爪、もちろん肉や内臓、とにかくその対象の一部分さえあれば、蘇らせることが可能のようだ。
また、対象という言葉には、人間のみでなく、犬や猫、鳥や魚、虫といった全ての生き物が含まれているようだ。ということは、遺伝子さえ残っていれば、絶滅してしまった動物の復活も有り得るということなのでは、と正人は考えた。
次の章からは、死者を蘇らせることができる条件が書かれていた。
まず、死者であること。つまり自分の分身を作ろうというのは不可能らしい。
次に、死刑による死者でないこと。これは、死ぬべき人間だということで、法の下に命を奪ったため、法に逆らう行為はしてはならないということらしい。
次に、蘇らせた対象を引き取る者が明確であり、その者の意志であること。つまり、やたらめったら拾った髪の毛などを使って遊び半分で蘇らせることを禁じているようだ。
次に、対象が人間の場合、その者の人権を最大限に尊重すること。これは、例えばストレス発散の道具に用いたくて死者を蘇らせるような行動を禁じているようだ。
というと、戦死した者を再び戦争に向かわせるために蘇らせることは、人権の尊重にはならないのではと正人は考えた。だが、次の一文でそれも可能だとわかった。予め、蘇りを希望する旨をリムに登録した者が対象の場合は、本人の意思を最大限尊重すること、とう文章だ。
多分、戦争に駆り出される場合は、こういった内容を強制的に登録させられるのであろう。条件は、これら以外にもいくつかの記載があった。
次の章では、蘇らせた対象は、いつの状態で蘇るのかといった内容が書かれていた。つまり、末期がんで亡くなった人間を、再び末期がんの状態で蘇らせても全く意味のないことであり、他にも老衰といった寿命で亡くなった者もこれに当てはまるだろう。
この答えは、使用した遺伝子と同時期ということらしい。つまり、30歳の人間を蘇らせる際に、その者の20歳の時の髪の毛を用いた場合、対象は 20歳の状態で蘇るということだ。
更に驚く内容が、脳への様々な記憶は、全て髪の毛1本、爪一欠片の遺伝子に記憶されており、基本その時の様々な記憶を保有した状態で蘇るということだ。ただし、対象の本人にとって重要な記憶ほど鮮明に残っており、その逆は記憶の奥底で眠った状態で蘇るということのようだ。対象により左右される事柄であり、蘇らせた側との認識の差異が生じることがあると書かれていた。
次の章には、リムを利用する際の注意事項が山程記載されていた。
正人がまず注目したのが、゛罰則゛とうたわれている段で、誤った使用をした者には命をもって償ってもらう、という記載だった。
誤った使用とは前述の条件やルールの違反のことを指すのだろう。正人が驚いたのが、命をもって償うという、その方法だ。
リムのメカニズムの説明にも係るが、死者を蘇らせるには、蘇らせた者を引き取る責任者が必要であり、その責任者の情報をリムに登録する必要があった。それは、氏名や住所などの基本情報だけでなく、その者の遺伝子情報も必要であるということ。
そして、その命で償う方法というのが、強制的に脳の機能を停止させ、それは心臓や肺の機能の停止につながり、死に至るという内容だった。その強制的に脳の機能を停止させるメカニズムは、難しい言葉や内容であったが、要約すると呪いのメカニズムを踏襲するものとの記載があった。
また、人間のみでなく動物を含む尊い生命を決して弄ぶことのないように仕組まれた機能であるという一文が目立つ書体で書かれていた。
正人は呪いのメカニズムというのはわからないが、先日死刑囚となった桐生朱美の呪い事件の方法とリンクしているのだろうと感じた。
そして、死刑によって死んでいく人間の技術を、逆に人間を生き返らせる技術に活用するとは、それこそ人間味がないのではないかとも思った。
条件にあった死刑による死者を蘇らせることはできないという条件は、きっと桐生朱美個人を生き返らせることはできないに読み替えてよいのだろう。
それは、このリムが搭載している技術について、オリジナルである桐生朱美を口封じするための条件なんだろうと考え、少し桐生朱美が気の毒にも思えた。
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