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第2節 命の条件
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注意事項の記述は更に続く。
まず、蘇らせた対象は、不慮の事故や天災、予測し得ない病気、寿命以外で死に至らしめてはならない。
これは簡単に言うと、蘇らせた人間を故意に殺してはいけないということのようだ。また、責任をもって管理する条件が附せられており、蘇らせた対象が、引き取った人間以外の手によって殺された場合は、監督不行により、引き取った人間に罰が与えられるという記載もあった。
これを読むとやはり戦争には不向きのような気がしたが、この章の最後に答えがあった。
゛なお、不測の事態に陥り、自国が窮地に立たされた際に限り、自国ために死者を蘇らせる行為については、この章に記載の罰則の対象外とする。゛
つまり、戦争のために戦死した者を蘇らせ、再び戦地に赴かせて戦死しても、監督不行には当てはまらないということだ。
きっと、リムには状況により様々な設定ができるのだろうと正人は予想した。
他には、一つの対象につき、蘇らせることができるのは一回のみという記載や、蘇らせることが失敗するケースもあり、失敗した場合も一回とカウントされてしまう等の内容が書かれていた。
あまりの衝撃的な内容が多く、一気に目を通してしまい、ふと時計を見ると読み始めてから2時間が経過しており、読む前に淹れたコーヒーはすっかり冷めきっていた。
コーヒーカップを片付けるついでに、スマホに目を向けると、畑からメッセージアプリが届いていることに気が付いた。正人は、その画面を見て、メッセージの中身を読む前に、通夜式会場での畑からの頼まれごとを思い出し、すぐに池畑に電話を掛けた。
「はい、池畑です。」
「あ、こんな時間にすみません、村上です。昨日は通夜にもお越しいただきありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ昨日はお疲れのところお時間いただきありがとうございました。告別式も全て無事に終わったんですか?」
「はい、お陰様で。実は私の同僚が池畑さんにお会いしたいと言ってまして、お時間つくっていただけないかと。」
「え?私にですか?一体何の件でしょうか。」
「実はその同僚が記事作成のために取材をしていた人が母親に殺される事件がありまして。」
「母親に…え!まさか、群馬の事件ですか!?」
「そうです!さすが刑事ですね。それで、同僚が事件のことで話したいことがあるようでして。」
「管轄外なので捜査状況が詳しくはわかってないのですが、お話を聞く分には勿論大丈夫です。それに、いただいた情報は私から前橋警察署に連絡しときますよ。ただ、明日はたて込んでまして、明後日の午前中なら大丈夫なんで、同僚の方にお伝えください。」
「お忙しい中ありがとうございます。同僚に伝えます。畑という男性なんで、よろしくお願いします。」
「畑さんですね、わかりました。あ、いただいた電話であれですが、明日、南雲由実さんのご両親に話を伺いに行ってきますので。合わせて由実さんの部屋とかを見させていただいて、事件の犯人に繋がるものがないか捜査をしてきます。」
「そうですか。由実の母親は、千里の通夜にも顔を出してくれていました。村上がよろしく言っていたとお伝えください。また捜査が進展したら教えていただきたいです。」
「あ、通夜にいらしてたんですか。わかりました、伝えます。では、畑さんによろしくお伝えください。また。」
正人は池畑との電話が終わると、すぐに畑にメッセージアプリを送った。
この数日の怒濤の出来事が葬儀が終わったことで、一旦区切りを迎えた。正人は、流石に疲れきっていた。
だが、明日には死者を蘇らせるといった、また色々と一筋縄ではいかなそうな世界に飛び込むことになりそうだ。正人は、明日に備えてすぐに風呂に入って寝ようと思った。
正人は、湯船に浸かりながら、水面から上がる湯気をぼーっと眺めていた。実は正人は湯船に浸かることは好きではなかった。
それは、湯船でゆっくり浸かれば浸かるほど、不安や悩みが鮮明に頭に蘇るからだ。
千里が死んでからは、風呂に入りぼーっとしていると、空っぽになった頭の中で、千里の亡き骸を発見した時の記憶が鮮明に蘇ってくるようになった。それから、風呂の曇りガラスの扉の向う側にぼやっと人影みたいなものを感じていた。
そして、今もそれがやってきた。多分、実際は恐怖心から生まれた幻影なのだろうが、正人は、呪いやら死者を蘇らせるやら、非現実的なワードに囲まれた生活で、幽霊やお化けといった存在も有り得なくはないという思考に変化しており、ただただ恐怖に感じていた。
しかしそれは、千里の幽霊に恐怖心を抱いているわけではなく、一人っきりになってしまったという孤独感が恐怖に変化していたのだ。
正人は、カラスの行水のごとく、さっと入浴を済ませた。
スウェットを着て、頭をバスタオルで拭きながらリビングのテーブルの上のスマホを無意識に手に取った。すると、畑からメッセージが届いており、池畑へのアポ取りのお礼と、可能であれば正人に一緒に来てもらいたい旨の内容だった。正人は、“了解”の旨のメッセージを送り、寝室へと向かった。
正人は、ベッドに横になり天井を見ながら考え事をしていた。眞鍋の言う死者を蘇らせるリムという機械が本当に存在するなら、世の中を震撼させる大ニュースであり、雑誌記者として、このニュースを取り上げるべきかどうか。
ただ、きっと眞鍋は許さないだろう、リムはきっと来る戦争に備えて開発されたもの。そして、公表されていないということは、国が極秘で開発を進めているということだ。
眞鍋は恐らく自分の職業は知らないはずであり、明日聞かれた時の反応で判断しよう。
そんなことを考えていたら、正人は知らぬ間に眠りについていた。
まず、蘇らせた対象は、不慮の事故や天災、予測し得ない病気、寿命以外で死に至らしめてはならない。
これは簡単に言うと、蘇らせた人間を故意に殺してはいけないということのようだ。また、責任をもって管理する条件が附せられており、蘇らせた対象が、引き取った人間以外の手によって殺された場合は、監督不行により、引き取った人間に罰が与えられるという記載もあった。
これを読むとやはり戦争には不向きのような気がしたが、この章の最後に答えがあった。
゛なお、不測の事態に陥り、自国が窮地に立たされた際に限り、自国ために死者を蘇らせる行為については、この章に記載の罰則の対象外とする。゛
つまり、戦争のために戦死した者を蘇らせ、再び戦地に赴かせて戦死しても、監督不行には当てはまらないということだ。
きっと、リムには状況により様々な設定ができるのだろうと正人は予想した。
他には、一つの対象につき、蘇らせることができるのは一回のみという記載や、蘇らせることが失敗するケースもあり、失敗した場合も一回とカウントされてしまう等の内容が書かれていた。
あまりの衝撃的な内容が多く、一気に目を通してしまい、ふと時計を見ると読み始めてから2時間が経過しており、読む前に淹れたコーヒーはすっかり冷めきっていた。
コーヒーカップを片付けるついでに、スマホに目を向けると、畑からメッセージアプリが届いていることに気が付いた。正人は、その画面を見て、メッセージの中身を読む前に、通夜式会場での畑からの頼まれごとを思い出し、すぐに池畑に電話を掛けた。
「はい、池畑です。」
「あ、こんな時間にすみません、村上です。昨日は通夜にもお越しいただきありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ昨日はお疲れのところお時間いただきありがとうございました。告別式も全て無事に終わったんですか?」
「はい、お陰様で。実は私の同僚が池畑さんにお会いしたいと言ってまして、お時間つくっていただけないかと。」
「え?私にですか?一体何の件でしょうか。」
「実はその同僚が記事作成のために取材をしていた人が母親に殺される事件がありまして。」
「母親に…え!まさか、群馬の事件ですか!?」
「そうです!さすが刑事ですね。それで、同僚が事件のことで話したいことがあるようでして。」
「管轄外なので捜査状況が詳しくはわかってないのですが、お話を聞く分には勿論大丈夫です。それに、いただいた情報は私から前橋警察署に連絡しときますよ。ただ、明日はたて込んでまして、明後日の午前中なら大丈夫なんで、同僚の方にお伝えください。」
「お忙しい中ありがとうございます。同僚に伝えます。畑という男性なんで、よろしくお願いします。」
「畑さんですね、わかりました。あ、いただいた電話であれですが、明日、南雲由実さんのご両親に話を伺いに行ってきますので。合わせて由実さんの部屋とかを見させていただいて、事件の犯人に繋がるものがないか捜査をしてきます。」
「そうですか。由実の母親は、千里の通夜にも顔を出してくれていました。村上がよろしく言っていたとお伝えください。また捜査が進展したら教えていただきたいです。」
「あ、通夜にいらしてたんですか。わかりました、伝えます。では、畑さんによろしくお伝えください。また。」
正人は池畑との電話が終わると、すぐに畑にメッセージアプリを送った。
この数日の怒濤の出来事が葬儀が終わったことで、一旦区切りを迎えた。正人は、流石に疲れきっていた。
だが、明日には死者を蘇らせるといった、また色々と一筋縄ではいかなそうな世界に飛び込むことになりそうだ。正人は、明日に備えてすぐに風呂に入って寝ようと思った。
正人は、湯船に浸かりながら、水面から上がる湯気をぼーっと眺めていた。実は正人は湯船に浸かることは好きではなかった。
それは、湯船でゆっくり浸かれば浸かるほど、不安や悩みが鮮明に頭に蘇るからだ。
千里が死んでからは、風呂に入りぼーっとしていると、空っぽになった頭の中で、千里の亡き骸を発見した時の記憶が鮮明に蘇ってくるようになった。それから、風呂の曇りガラスの扉の向う側にぼやっと人影みたいなものを感じていた。
そして、今もそれがやってきた。多分、実際は恐怖心から生まれた幻影なのだろうが、正人は、呪いやら死者を蘇らせるやら、非現実的なワードに囲まれた生活で、幽霊やお化けといった存在も有り得なくはないという思考に変化しており、ただただ恐怖に感じていた。
しかしそれは、千里の幽霊に恐怖心を抱いているわけではなく、一人っきりになってしまったという孤独感が恐怖に変化していたのだ。
正人は、カラスの行水のごとく、さっと入浴を済ませた。
スウェットを着て、頭をバスタオルで拭きながらリビングのテーブルの上のスマホを無意識に手に取った。すると、畑からメッセージが届いており、池畑へのアポ取りのお礼と、可能であれば正人に一緒に来てもらいたい旨の内容だった。正人は、“了解”の旨のメッセージを送り、寝室へと向かった。
正人は、ベッドに横になり天井を見ながら考え事をしていた。眞鍋の言う死者を蘇らせるリムという機械が本当に存在するなら、世の中を震撼させる大ニュースであり、雑誌記者として、このニュースを取り上げるべきかどうか。
ただ、きっと眞鍋は許さないだろう、リムはきっと来る戦争に備えて開発されたもの。そして、公表されていないということは、国が極秘で開発を進めているということだ。
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