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第3節 それぞれの葛藤
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「あの、由実さんの亡くなる前の様子を教えていただきたいんですが。」
溝口がメモを取る準備をしながら聞いた。池畑は、俺が質問を担当すると言ったはずだと気付きながらも、場を取り乱さない為我慢し、今回は溝口に任せることにした。
「はい。由実は、確か亡くなる3日前に実家に帰ってきたばかりでした。ただ、翌日も仕事のため日帰りでしたけど。その時は、特に変わったとこは無かったと思います。なぁ、お前は何か感じたか?」
「…いえ、いつものあの子だったと思います。いつも通りお土産を買ってきてくれて、仕事の…アパレル関係なんですけど…大変だけど楽しいって…話をしてくれて…。本当にあの後に…もう会えなくなるなんて…想像できませんでした。…刑事さん、由実は…何で殺されたんですか…。」
君枝は、言葉が詰まるように話した。池畑は両親の言葉に嘘はないと感じていた。
「お辛い話ありがとうございます。…あの、大変失礼な質問ですが、由実さんは誰かに恨まれていたとかございますか?あと、彼氏とか友達とかとトラブルがあったみたいな話をしてくれたこととか。」
「由実はそんな子じゃありません!!」
君枝は感情的に声を荒げて答えた。
「やめなさい。すみません、刑事さん。まだなかなか現実味がなくて、今でもひょっこり由実が帰ってくるんじゃないかって感覚なんです。…私も由実が帰ってくる度に色々と話をしていましたが、そういったトラブルの話は聞いたことないですし、誰かに恨まれるような子じゃないと信じています。」
「すみません、変な質問をしてしまいまして。…ただ、殺人となると、犯人は由実さんにそのような感情を抱いていたということになります。
私たちも由実さんの無念を晴らしたいんです。…先日の由実さんの通夜には私も焼香をあげさせていただき、その時に由実さんとも約束をしました。由実さんの無念を晴らすと。どんなに些細なことでも結構です。連日のニュースを見てればわかるかと思いますが、今は大したことない理由でも人を殺すような人間が増えています。
私も決して由実さんが誰かに恨まれるようなことをする方とは思っていません。普通に考えれば何ともない小さなトラブルが、今回の引き金になった可能性もあるのでお聞きしています。」
池畑は真っ直ぐに慧と君枝を見つめながら話した。この言葉は池畑の本心であり、演技ではなく100%の感情がこもった言葉であった。
「…ありがとうございます。…取り乱して申し訳ございませんでした。…呪われて殺されたってのが信じられないというか…怖いというか。ただ本当に由実は人に恨まれるような子じゃないです。それから、トラブルの話も…今は思い浮かびません。あの子との会話は明るい話題…ばかりでしたから…。」
君枝はハンカチで涙を拭いながら話した。
「ちなみに、その明るい話題ってのは?」
溝口が聞いた。
「仕事で成績が好調で、今度支店長を任されることになりそうとか、友達の誰々が結婚するとか、子どもが産まれたとか、あとは私たちの健康を気遣ってくれるような話も多かったですね。」
涙を拭っている君枝に代わり慧が答えた。溝口は、メモを取りながら新たな質問をした。
「由実さんにはお付き合いされてる方はいましたか?」
「…いや、私は直接聞いたことはないですが。ただ、あの子の場合、そういった方ができたら隠さずに私たちに話してくれると思うんですがね。それか父親には話しづらいのかもしれないな、お前には話してたか?」
「…いえ、私も聞いてはないです。…でも、私は由実に付き合ってる方がいるんじゃないかとは感じてました。…何て言うか、話してる内容で感じるんです。友達の話と言いつつ…自分のことを話しているんじゃないかって思うことが。今思えば、いつからか友達の恋愛話をする回数も増えてたように感じます。」
二人の話を頷きながら聞いていた池畑は、聞き取りは溝口に任せるつもりでいたが我慢出来ずに、自ら質問をした。
「そうですか。お母様はどうですか?お父様は由実さんは恋人ができたら、両親に話すタイプの子だと言っていましたが。」
「…えぇ、確かに、由実は今までは恋人ができたら私たちに教えてくれていました。逆に別れたときも。…私の知る限り、由実が最後の恋人と別れたのは実家を出ていく前だったので、5年以上はそう言った話は聞いていません。
…もう大人ですから、私たちから聞くようなこともしませんでしたし、私たちに心配をさせないために、ある程度お付き合いを深めてから報告するつもりだったのかもしれませんしね。」
「そうですか、ありがとうございます。では、何か気になることがありましたら、どんなに些細なことでも結構ですので、私に連絡をください。あの、最後に由実さんのお部屋を拝見させて頂いても宜しいですか?」
君枝は頷くと立ちあがり、2階の由実の部屋へ池畑たちを案内した。
「…あの子が…亡くなったときのままです…。」
「すみません、色々拝見させていただきます。」
池畑はそう言うと、溝口と二手に分かれて由実の部屋に手掛かりがないか捜索を始めた。
溝口がメモを取る準備をしながら聞いた。池畑は、俺が質問を担当すると言ったはずだと気付きながらも、場を取り乱さない為我慢し、今回は溝口に任せることにした。
「はい。由実は、確か亡くなる3日前に実家に帰ってきたばかりでした。ただ、翌日も仕事のため日帰りでしたけど。その時は、特に変わったとこは無かったと思います。なぁ、お前は何か感じたか?」
「…いえ、いつものあの子だったと思います。いつも通りお土産を買ってきてくれて、仕事の…アパレル関係なんですけど…大変だけど楽しいって…話をしてくれて…。本当にあの後に…もう会えなくなるなんて…想像できませんでした。…刑事さん、由実は…何で殺されたんですか…。」
君枝は、言葉が詰まるように話した。池畑は両親の言葉に嘘はないと感じていた。
「お辛い話ありがとうございます。…あの、大変失礼な質問ですが、由実さんは誰かに恨まれていたとかございますか?あと、彼氏とか友達とかとトラブルがあったみたいな話をしてくれたこととか。」
「由実はそんな子じゃありません!!」
君枝は感情的に声を荒げて答えた。
「やめなさい。すみません、刑事さん。まだなかなか現実味がなくて、今でもひょっこり由実が帰ってくるんじゃないかって感覚なんです。…私も由実が帰ってくる度に色々と話をしていましたが、そういったトラブルの話は聞いたことないですし、誰かに恨まれるような子じゃないと信じています。」
「すみません、変な質問をしてしまいまして。…ただ、殺人となると、犯人は由実さんにそのような感情を抱いていたということになります。
私たちも由実さんの無念を晴らしたいんです。…先日の由実さんの通夜には私も焼香をあげさせていただき、その時に由実さんとも約束をしました。由実さんの無念を晴らすと。どんなに些細なことでも結構です。連日のニュースを見てればわかるかと思いますが、今は大したことない理由でも人を殺すような人間が増えています。
私も決して由実さんが誰かに恨まれるようなことをする方とは思っていません。普通に考えれば何ともない小さなトラブルが、今回の引き金になった可能性もあるのでお聞きしています。」
池畑は真っ直ぐに慧と君枝を見つめながら話した。この言葉は池畑の本心であり、演技ではなく100%の感情がこもった言葉であった。
「…ありがとうございます。…取り乱して申し訳ございませんでした。…呪われて殺されたってのが信じられないというか…怖いというか。ただ本当に由実は人に恨まれるような子じゃないです。それから、トラブルの話も…今は思い浮かびません。あの子との会話は明るい話題…ばかりでしたから…。」
君枝はハンカチで涙を拭いながら話した。
「ちなみに、その明るい話題ってのは?」
溝口が聞いた。
「仕事で成績が好調で、今度支店長を任されることになりそうとか、友達の誰々が結婚するとか、子どもが産まれたとか、あとは私たちの健康を気遣ってくれるような話も多かったですね。」
涙を拭っている君枝に代わり慧が答えた。溝口は、メモを取りながら新たな質問をした。
「由実さんにはお付き合いされてる方はいましたか?」
「…いや、私は直接聞いたことはないですが。ただ、あの子の場合、そういった方ができたら隠さずに私たちに話してくれると思うんですがね。それか父親には話しづらいのかもしれないな、お前には話してたか?」
「…いえ、私も聞いてはないです。…でも、私は由実に付き合ってる方がいるんじゃないかとは感じてました。…何て言うか、話してる内容で感じるんです。友達の話と言いつつ…自分のことを話しているんじゃないかって思うことが。今思えば、いつからか友達の恋愛話をする回数も増えてたように感じます。」
二人の話を頷きながら聞いていた池畑は、聞き取りは溝口に任せるつもりでいたが我慢出来ずに、自ら質問をした。
「そうですか。お母様はどうですか?お父様は由実さんは恋人ができたら、両親に話すタイプの子だと言っていましたが。」
「…えぇ、確かに、由実は今までは恋人ができたら私たちに教えてくれていました。逆に別れたときも。…私の知る限り、由実が最後の恋人と別れたのは実家を出ていく前だったので、5年以上はそう言った話は聞いていません。
…もう大人ですから、私たちから聞くようなこともしませんでしたし、私たちに心配をさせないために、ある程度お付き合いを深めてから報告するつもりだったのかもしれませんしね。」
「そうですか、ありがとうございます。では、何か気になることがありましたら、どんなに些細なことでも結構ですので、私に連絡をください。あの、最後に由実さんのお部屋を拝見させて頂いても宜しいですか?」
君枝は頷くと立ちあがり、2階の由実の部屋へ池畑たちを案内した。
「…あの子が…亡くなったときのままです…。」
「すみません、色々拝見させていただきます。」
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