Rem-リム- 呪いと再生

雨木良

文字の大きさ
46 / 114
第3節 それぞれの葛藤

(2)

しおりを挟む
「あの、由実さんの亡くなる前の様子を教えていただきたいんですが。」

溝口がメモを取る準備をしながら聞いた。池畑は、俺が質問を担当すると言ったはずだと気付きながらも、場を取り乱さない為我慢し、今回は溝口に任せることにした。

「はい。由実は、確か亡くなる3日前に実家に帰ってきたばかりでした。ただ、翌日も仕事のため日帰りでしたけど。その時は、特に変わったとこは無かったと思います。なぁ、お前は何か感じたか?」

「…いえ、いつものあの子だったと思います。いつも通りお土産を買ってきてくれて、仕事の…アパレル関係なんですけど…大変だけど楽しいって…話をしてくれて…。本当にあの後に…もう会えなくなるなんて…想像できませんでした。…刑事さん、由実は…何で殺されたんですか…。」

君枝は、言葉が詰まるように話した。池畑は両親の言葉に嘘はないと感じていた。

「お辛い話ありがとうございます。…あの、大変失礼な質問ですが、由実さんは誰かに恨まれていたとかございますか?あと、彼氏とか友達とかとトラブルがあったみたいな話をしてくれたこととか。」

「由実はそんな子じゃありません!!」

君枝は感情的に声を荒げて答えた。 

「やめなさい。すみません、刑事さん。まだなかなか現実味がなくて、今でもひょっこり由実が帰ってくるんじゃないかって感覚なんです。…私も由実が帰ってくる度に色々と話をしていましたが、そういったトラブルの話は聞いたことないですし、誰かに恨まれるような子じゃないと信じています。」

「すみません、変な質問をしてしまいまして。…ただ、殺人となると、犯人は由実さんにそのような感情を抱いていたということになります。

私たちも由実さんの無念を晴らしたいんです。…先日の由実さんの通夜には私も焼香をあげさせていただき、その時に由実さんとも約束をしました。由実さんの無念を晴らすと。どんなに些細なことでも結構です。連日のニュースを見てればわかるかと思いますが、今は大したことない理由でも人を殺すような人間が増えています。

私も決して由実さんが誰かに恨まれるようなことをする方とは思っていません。普通に考えれば何ともない小さなトラブルが、今回の引き金になった可能性もあるのでお聞きしています。」

池畑は真っ直ぐに慧と君枝を見つめながら話した。この言葉は池畑の本心であり、演技ではなく100%の感情がこもった言葉であった。

「…ありがとうございます。…取り乱して申し訳ございませんでした。…呪われて殺されたってのが信じられないというか…怖いというか。ただ本当に由実は人に恨まれるような子じゃないです。それから、トラブルの話も…今は思い浮かびません。あの子との会話は明るい話題…ばかりでしたから…。」

君枝はハンカチで涙を拭いながら話した。

「ちなみに、その明るい話題ってのは?」

溝口が聞いた。

「仕事で成績が好調で、今度支店長を任されることになりそうとか、友達の誰々が結婚するとか、子どもが産まれたとか、あとは私たちの健康を気遣ってくれるような話も多かったですね。」

涙を拭っている君枝に代わり慧が答えた。溝口は、メモを取りながら新たな質問をした。

「由実さんにはお付き合いされてる方はいましたか?」

「…いや、私は直接聞いたことはないですが。ただ、あの子の場合、そういった方ができたら隠さずに私たちに話してくれると思うんですがね。それか父親には話しづらいのかもしれないな、お前には話してたか?」

「…いえ、私も聞いてはないです。…でも、私は由実に付き合ってる方がいるんじゃないかとは感じてました。…何て言うか、話してる内容で感じるんです。友達の話と言いつつ…自分のことを話しているんじゃないかって思うことが。今思えば、いつからか友達の恋愛話をする回数も増えてたように感じます。」

二人の話を頷きながら聞いていた池畑は、聞き取りは溝口に任せるつもりでいたが我慢出来ずに、自ら質問をした。

「そうですか。お母様はどうですか?お父様は由実さんは恋人ができたら、両親に話すタイプの子だと言っていましたが。」

「…えぇ、確かに、由実は今までは恋人ができたら私たちに教えてくれていました。逆に別れたときも。…私の知る限り、由実が最後の恋人と別れたのは実家を出ていく前だったので、5年以上はそう言った話は聞いていません。

…もう大人ですから、私たちから聞くようなこともしませんでしたし、私たちに心配をさせないために、ある程度お付き合いを深めてから報告するつもりだったのかもしれませんしね。」

「そうですか、ありがとうございます。では、何か気になることがありましたら、どんなに些細なことでも結構ですので、私に連絡をください。あの、最後に由実さんのお部屋を拝見させて頂いても宜しいですか?」

君枝は頷くと立ちあがり、2階の由実の部屋へ池畑たちを案内した。

「…あの子が…亡くなったときのままです…。」

「すみません、色々拝見させていただきます。」

池畑はそう言うと、溝口と二手に分かれて由実の部屋に手掛かりがないか捜索を始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―

MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」 「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」 失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。 46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。

処理中です...