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第3節 それぞれの葛藤
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池畑と溝口は、由実の部屋の捜索を終えて、一階へと下りて、慧と君枝のいる居間を覗いた。
「お時間いただき、ありがとうございました。一通り部屋の中を見させていただきました。」
「何か見つかりましたか?」
君枝が聞いた。
「えぇ、お写真やら手紙やらがいくつかありまして交遊関係等が多少は。…あと、一つお伺いしたいのですが、由実さんの机に鍵の掛かった引き出しがあるのですが、鍵の在りかはわかりますか?」
「…鍵?」
慧は首をかしげ、君枝の顔を見た。バトンを渡された君枝は少し考えてから答えた。
「鍵の場所はわかりませんが、前にその引き出しの中を見たことがあります。部屋に掃除に入ったときに、たまたま引き出しが少し開いていて…中には、あの子が描いた洋服のデザイン画が沢山入っていた覚えがあります。あの子、自分の夢を語るような子じゃなかったんで、私たちには隠したかったのかなって、その時は思いました。」
「デザイン画…そうですか、ありがとうございます。もし、鍵が見つかりましたらご連絡いただけますでしょうか?一応確認をしたいと思いまして。」
池畑はそう言うと自分の携帯番号を書いた名刺を慧に渡した。
「わかりました。まだあの子の遺品だとか全く手付かずなので、何かありましたら連絡いたします。」
池畑たちは一礼して、家をあとにした。
その後、以前池畑と正人が偶然会った駅前のファミレスで、今度の捜査の流れを確認することにした。
二人はドリンクバーを注文して、窓際の席に対面に座った。コーラを飲みながら溝口が呟くように聞いた。
「本当にデザイン画だけなんすかね、例の引き出し。」
「まぁ開ければバレちゃうことだから嘘は言ってないと思うし、母親だって引き出しの中身全部を見た訳じゃなさそうだったしな。無理矢理こじ開けるのだけはしたくないからなぁ、ご両親からの連絡を待つしかねぇ。」
「じゃあその間は交遊関係から探りますか。」
「そうだな。やっぱり気になるのは、母親がなんとなく勘づいていた男の存在だな。分りやすいだろ?別れ話を切り出されたからとかさ。」
池畑はコーヒーを一口飲み、思ったより苦かったため、砂糖を一本入れた。
「でも、あの部屋からは全く彼氏っぽい男関係のものは出てきませんでしたね。あんだけ写真あるんだから、1枚くらい彼氏との写真があってもよいのに。母親の勘が間違いですかね?」
池畑はコーヒーを一口飲んだ。調度良い甘さに頷きながらカップを置いた。
「いや、母親の勘ってのは侮れないぞ。母親の勘が正しくて付き合ってる男性がいるが、部屋には一切写真は置かない…うーん、俺としてはあの引き出しが怪しいと思うんだがな。」
「でも、今までは付き合ってる男性がいたら両親に報告してたんですよね。」
溝口は、チラチラと窓の方を見ながら話した。池畑は溝口の行動が気になったが特に触れずに話を続けた。
「そこなんだよ。報告できない男性ってことか。同性愛の可能性もあるしな。とりあえず、交遊関係を捜査して、聞き取りもしてみよう。」
「了解です。あ、池畑さん!!」
必要に窓の方をチラ見していた溝口が大きな声を出した。
「な、なんだ!?」
池畑も溝口に釣られて窓の方を見た。
「…このマロンパフェ食ってもいいっすか?」
溝口は窓の外ではなく、窓際に立て掛けられたデザートメニューを見ていたようだ。池畑は、無言で立ちあがり、溝口の頭を一発叩いた。
「…食え。」
「お時間いただき、ありがとうございました。一通り部屋の中を見させていただきました。」
「何か見つかりましたか?」
君枝が聞いた。
「えぇ、お写真やら手紙やらがいくつかありまして交遊関係等が多少は。…あと、一つお伺いしたいのですが、由実さんの机に鍵の掛かった引き出しがあるのですが、鍵の在りかはわかりますか?」
「…鍵?」
慧は首をかしげ、君枝の顔を見た。バトンを渡された君枝は少し考えてから答えた。
「鍵の場所はわかりませんが、前にその引き出しの中を見たことがあります。部屋に掃除に入ったときに、たまたま引き出しが少し開いていて…中には、あの子が描いた洋服のデザイン画が沢山入っていた覚えがあります。あの子、自分の夢を語るような子じゃなかったんで、私たちには隠したかったのかなって、その時は思いました。」
「デザイン画…そうですか、ありがとうございます。もし、鍵が見つかりましたらご連絡いただけますでしょうか?一応確認をしたいと思いまして。」
池畑はそう言うと自分の携帯番号を書いた名刺を慧に渡した。
「わかりました。まだあの子の遺品だとか全く手付かずなので、何かありましたら連絡いたします。」
池畑たちは一礼して、家をあとにした。
その後、以前池畑と正人が偶然会った駅前のファミレスで、今度の捜査の流れを確認することにした。
二人はドリンクバーを注文して、窓際の席に対面に座った。コーラを飲みながら溝口が呟くように聞いた。
「本当にデザイン画だけなんすかね、例の引き出し。」
「まぁ開ければバレちゃうことだから嘘は言ってないと思うし、母親だって引き出しの中身全部を見た訳じゃなさそうだったしな。無理矢理こじ開けるのだけはしたくないからなぁ、ご両親からの連絡を待つしかねぇ。」
「じゃあその間は交遊関係から探りますか。」
「そうだな。やっぱり気になるのは、母親がなんとなく勘づいていた男の存在だな。分りやすいだろ?別れ話を切り出されたからとかさ。」
池畑はコーヒーを一口飲み、思ったより苦かったため、砂糖を一本入れた。
「でも、あの部屋からは全く彼氏っぽい男関係のものは出てきませんでしたね。あんだけ写真あるんだから、1枚くらい彼氏との写真があってもよいのに。母親の勘が間違いですかね?」
池畑はコーヒーを一口飲んだ。調度良い甘さに頷きながらカップを置いた。
「いや、母親の勘ってのは侮れないぞ。母親の勘が正しくて付き合ってる男性がいるが、部屋には一切写真は置かない…うーん、俺としてはあの引き出しが怪しいと思うんだがな。」
「でも、今までは付き合ってる男性がいたら両親に報告してたんですよね。」
溝口は、チラチラと窓の方を見ながら話した。池畑は溝口の行動が気になったが特に触れずに話を続けた。
「そこなんだよ。報告できない男性ってことか。同性愛の可能性もあるしな。とりあえず、交遊関係を捜査して、聞き取りもしてみよう。」
「了解です。あ、池畑さん!!」
必要に窓の方をチラ見していた溝口が大きな声を出した。
「な、なんだ!?」
池畑も溝口に釣られて窓の方を見た。
「…このマロンパフェ食ってもいいっすか?」
溝口は窓の外ではなく、窓際に立て掛けられたデザートメニューを見ていたようだ。池畑は、無言で立ちあがり、溝口の頭を一発叩いた。
「…食え。」
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