Rem-リム- 呪いと再生

雨木良

文字の大きさ
48 / 114
第3節 それぞれの葛藤

(4)

しおりを挟む
池畑と溝口は、由実の部屋の捜索を終えて、一階へと下りて、慧と君枝のいる居間を覗いた。

「お時間いただき、ありがとうございました。一通り部屋の中を見させていただきました。」

「何か見つかりましたか?」

君枝が聞いた。

「えぇ、お写真やら手紙やらがいくつかありまして交遊関係等が多少は。…あと、一つお伺いしたいのですが、由実さんの机に鍵の掛かった引き出しがあるのですが、鍵の在りかはわかりますか?」

「…鍵?」

慧は首をかしげ、君枝の顔を見た。バトンを渡された君枝は少し考えてから答えた。

「鍵の場所はわかりませんが、前にその引き出しの中を見たことがあります。部屋に掃除に入ったときに、たまたま引き出しが少し開いていて…中には、あの子が描いた洋服のデザイン画が沢山入っていた覚えがあります。あの子、自分の夢を語るような子じゃなかったんで、私たちには隠したかったのかなって、その時は思いました。」

「デザイン画…そうですか、ありがとうございます。もし、鍵が見つかりましたらご連絡いただけますでしょうか?一応確認をしたいと思いまして。」

池畑はそう言うと自分の携帯番号を書いた名刺を慧に渡した。

「わかりました。まだあの子の遺品だとか全く手付かずなので、何かありましたら連絡いたします。」

池畑たちは一礼して、家をあとにした。

その後、以前池畑と正人が偶然会った駅前のファミレスで、今度の捜査の流れを確認することにした。

二人はドリンクバーを注文して、窓際の席に対面に座った。コーラを飲みながら溝口が呟くように聞いた。

「本当にデザイン画だけなんすかね、例の引き出し。」

「まぁ開ければバレちゃうことだから嘘は言ってないと思うし、母親だって引き出しの中身全部を見た訳じゃなさそうだったしな。無理矢理こじ開けるのだけはしたくないからなぁ、ご両親からの連絡を待つしかねぇ。」

「じゃあその間は交遊関係から探りますか。」

「そうだな。やっぱり気になるのは、母親がなんとなく勘づいていた男の存在だな。分りやすいだろ?別れ話を切り出されたからとかさ。」

池畑はコーヒーを一口飲み、思ったより苦かったため、砂糖を一本入れた。

「でも、あの部屋からは全く彼氏っぽい男関係のものは出てきませんでしたね。あんだけ写真あるんだから、1枚くらい彼氏との写真があってもよいのに。母親の勘が間違いですかね?」

池畑はコーヒーを一口飲んだ。調度良い甘さに頷きながらカップを置いた。

「いや、母親の勘ってのは侮れないぞ。母親の勘が正しくて付き合ってる男性がいるが、部屋には一切写真は置かない…うーん、俺としてはあの引き出しが怪しいと思うんだがな。」

「でも、今までは付き合ってる男性がいたら両親に報告してたんですよね。」

溝口は、チラチラと窓の方を見ながら話した。池畑は溝口の行動が気になったが特に触れずに話を続けた。

「そこなんだよ。報告できない男性ってことか。同性愛の可能性もあるしな。とりあえず、交遊関係を捜査して、聞き取りもしてみよう。」

「了解です。あ、池畑さん!!」

必要に窓の方をチラ見していた溝口が大きな声を出した。

「な、なんだ!?」

池畑も溝口に釣られて窓の方を見た。

「…このマロンパフェ食ってもいいっすか?」

溝口は窓の外ではなく、窓際に立て掛けられたデザートメニューを見ていたようだ。池畑は、無言で立ちあがり、溝口の頭を一発叩いた。

「…食え。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の守護霊さん

Masa&G
キャラ文芸
大学生活を送る彩音には、誰にも言えない秘密がある。 彼女のそばには、他人には姿の見えない“守護霊さん”がずっと寄り添っていた。 これは——二人で過ごした最後の一年を描く、かけがえのない物語。

火輪の花嫁 ~男装姫は孤高の王の夢をみる~

秦朱音|はたあかね
キャラ文芸
王を中心に五家が支配する、綺羅ノ国。 五家に覡(かんなぎ)として仕える十六夜家の娘、久遠(くおん)は、幼い頃から男として育てられてきた。 都では陽を司る日紫喜家の王が崩御し、素行の悪さで有名な新王・燦(さん)が即位する。燦の后選びに戦々恐々とする五家だったが、燦は十六夜家の才である「夢見」を聞いて后を選ぶと言い始めた。そして、その夢見を行う覡に、燦は男装した久遠を指名する。 見習いの僕がこの国の后を選ぶなんて、荷が重すぎる――! 久遠の苦悩を知ってか知らずか、燦は強引に久遠を寝室に呼んで夢見を命じる。しかし、初めて出会ったはずの久遠と燦の夢には、とある共通点があって――? 謎に包まれた過去を持ち身分を隠す男装姫と、孤独な王の恋と因縁を描く、和風王宮ファンタジー。 ※カクヨムにも先行で投稿しています

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―

MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」 「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」 失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。 46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。

処理中です...