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第7節 解錠
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ー 村上宅前 ー
13時15分
荒木は、正人と生駒の話をたまたま聞いてしまい、その内容を確かめるべく、昼食を済ませて正人の住むマンションの前まで来ていた。
緊急時職員名簿に記載されてる住所によると、目の前のマンション7階の702号室とあり、集合ポストの並び順などから、部屋の場所を推測し、人目につかない場所で双眼鏡を除きこんだ。
荒木は直接千里と会ったことはないが、葬式の際の遺影で何となく顔が分かっていた。正人たちの会話が本当だとしたら一大スクープになると、気合いを入れて観察していた。
しかし、10分程経とうとも、カーテンは開いているが、人影らしきものが動く気配は全く感じられなかった。
「…不在か。全く人がいる気配がしない。…村上のやつ、頭おかしくなっちまったんじゃな…。」
荒木が文句を垂れながら帰ろうと駅方面に振り返ると、正面から葬式で見た遺影と同じ顔の女性が早歩きで、軽く顔を隠しながら歩いて来るのが見えた。
「マジかよ…。こりゃ本当に事件だ、特大のな。」
荒木は、木の陰に隠れ、千里に見つからないようにシャッターを切った。しかし、顔を隠しながら歩いているため、ハッキリした表情が撮れず、荒木は角度を変えるため場所を移動しようと立ち上がった際に、落ちていた空き缶を蹴飛ばしてしまい、缶が転がる音が辺りを包んだ。
その音に当然千里も反応し、振り向くと木陰でカメラを肩からぶら下げ、自分と目がバッチリと合った怪しい男の姿があり、危険を感じて猛ダッシュでマンションの中へと入っていった。
「…やっちまったか…。」
荒木は冷や汗をびっしょりかいていた。
ー 北条出版 ー
同時刻。
ブー、ブー、ブー。机に置いていたスマホが、着信を知らせるバイブレーションを発した。
「千里か。」
正人は、執務室を出て、誰も来ない非常階段で電話を取った。
「もしもし。」
「あなた、ごめんなさい。誰かに写真を撮られたみたいなの!どうしたらよい?あぁ、やっぱりあなたの忠告通り家で静かにしてれば良かった!」
千里は、相当パニックになっているようだった。
「千里、落ちつけ。その写真を撮ってた奴は知り合いか?近所で見掛けたことあるか?」
千里は、少し考えてから答えた。
「…うぅん、初めて見た顔よ。」
「…とにかく、一回直ぐに帰るから、そのまま部屋の中に居て、カーテンはちゃんと閉めとけよ。」
正人はそう言うと電話を切り、外回りしてくると理由を付けて、自宅へと向かった。
ー 南雲宅 ー
13時30分
溝口は、今朝池畑に託された鍵を握りながら、南雲由実の自宅のインターフォンを押した。
事前に池畑が、電話で伝えていた為、直ぐに玄関のドアが開き、母親の君枝が丁寧に頭を下げた。
「こんにちは。突然すみませんでした。用件は池畑から伝わっていますかね。」
「えぇ、あの机の鍵が見つかったと。さぁ、どうぞ。」
溝口は、君枝に誘導され、由実の部屋に向かった。階段を上りながら君枝が話を始めた。
「昨日、警察の方から電話がありまして、由実の死は獄中の桐生朱美が犯人だと告げられました。」
「…え!?あ、あぁ連絡来ていたんですね…。」
(まだ真実はわかってないはず。…警察は何が何でも桐生朱美のみで呪いを消し去りたいんだな。)
溝口は、事件の担当である自分と池畑には、一切そんな報告が来ていないことは、君枝には言えなかった。
二人は由実の部屋に入り、机へと向かった。
「でも、あの娘と桐生朱美の接点を聞いても詳しくは分からないって言うんですよ。しかも、桐生朱美は近々死刑になるって話ですし…。」
納得いかないような口調で言う君枝に、溝口は、例の机の引き出しを指差しながら言った。
「この中に真実があるかもしれませんよ。」
溝口は、机の鍵穴に持ってきた鍵を差込み解錠すると、ゆっくりと引出しを開けた。
中から出てきたのは、大量のファッションイラストだった。
「やっぱり、前にお話ししたのは、これです、これ。」
君枝は、引出しから、イラストを一枚取り出し溝口に見せた。以前、訪れた時に、君枝が話していたイラストだった。君枝は、その他のイラストを描いた紙を一枚ずつ取り出しては、横のベッドに並べていった。
五十枚以上のイラストを取り出し終えると、引出しの中は空っぽに生っていた。二人は、イラストを一枚ずつじっくり眺めた。
「…あの娘の夢叶えてあげたかった。」
君枝は涙を拭いながら言った。
「あの…お疲れの所ありがとうございました。」
溝口は、一礼して部屋を出ようとした際、ふいに開きっぱなしの引出しを見ると、何かが光って見えた。
溝口は、すぐに引出しに近づき、光って見えた部分を細部まで見た。すると、引出しの底がほんの少しサイズが小さく、側面と隙間があるように見えた。
溝口が、徐に、その隙間に指の爪を入れて底板に引っ掻けると、底板が少し浮いた。
「…すみません、ありましたよ。本当の真実。この引出しの底、二重底になっています。」
その言葉に、君枝も引出しの近くまで移動し、溝口がゆっくりと板を外した。
「…これって…。」
板の下からは何枚かの写真が出てきた。君枝は、首を傾げながら写真を見つめて何も答えなかった。
「…最悪な真実かもしれないな。とりあえず報告か。」
溝口はスマホを取り出し、池畑へ電話を掛けた。
13時15分
荒木は、正人と生駒の話をたまたま聞いてしまい、その内容を確かめるべく、昼食を済ませて正人の住むマンションの前まで来ていた。
緊急時職員名簿に記載されてる住所によると、目の前のマンション7階の702号室とあり、集合ポストの並び順などから、部屋の場所を推測し、人目につかない場所で双眼鏡を除きこんだ。
荒木は直接千里と会ったことはないが、葬式の際の遺影で何となく顔が分かっていた。正人たちの会話が本当だとしたら一大スクープになると、気合いを入れて観察していた。
しかし、10分程経とうとも、カーテンは開いているが、人影らしきものが動く気配は全く感じられなかった。
「…不在か。全く人がいる気配がしない。…村上のやつ、頭おかしくなっちまったんじゃな…。」
荒木が文句を垂れながら帰ろうと駅方面に振り返ると、正面から葬式で見た遺影と同じ顔の女性が早歩きで、軽く顔を隠しながら歩いて来るのが見えた。
「マジかよ…。こりゃ本当に事件だ、特大のな。」
荒木は、木の陰に隠れ、千里に見つからないようにシャッターを切った。しかし、顔を隠しながら歩いているため、ハッキリした表情が撮れず、荒木は角度を変えるため場所を移動しようと立ち上がった際に、落ちていた空き缶を蹴飛ばしてしまい、缶が転がる音が辺りを包んだ。
その音に当然千里も反応し、振り向くと木陰でカメラを肩からぶら下げ、自分と目がバッチリと合った怪しい男の姿があり、危険を感じて猛ダッシュでマンションの中へと入っていった。
「…やっちまったか…。」
荒木は冷や汗をびっしょりかいていた。
ー 北条出版 ー
同時刻。
ブー、ブー、ブー。机に置いていたスマホが、着信を知らせるバイブレーションを発した。
「千里か。」
正人は、執務室を出て、誰も来ない非常階段で電話を取った。
「もしもし。」
「あなた、ごめんなさい。誰かに写真を撮られたみたいなの!どうしたらよい?あぁ、やっぱりあなたの忠告通り家で静かにしてれば良かった!」
千里は、相当パニックになっているようだった。
「千里、落ちつけ。その写真を撮ってた奴は知り合いか?近所で見掛けたことあるか?」
千里は、少し考えてから答えた。
「…うぅん、初めて見た顔よ。」
「…とにかく、一回直ぐに帰るから、そのまま部屋の中に居て、カーテンはちゃんと閉めとけよ。」
正人はそう言うと電話を切り、外回りしてくると理由を付けて、自宅へと向かった。
ー 南雲宅 ー
13時30分
溝口は、今朝池畑に託された鍵を握りながら、南雲由実の自宅のインターフォンを押した。
事前に池畑が、電話で伝えていた為、直ぐに玄関のドアが開き、母親の君枝が丁寧に頭を下げた。
「こんにちは。突然すみませんでした。用件は池畑から伝わっていますかね。」
「えぇ、あの机の鍵が見つかったと。さぁ、どうぞ。」
溝口は、君枝に誘導され、由実の部屋に向かった。階段を上りながら君枝が話を始めた。
「昨日、警察の方から電話がありまして、由実の死は獄中の桐生朱美が犯人だと告げられました。」
「…え!?あ、あぁ連絡来ていたんですね…。」
(まだ真実はわかってないはず。…警察は何が何でも桐生朱美のみで呪いを消し去りたいんだな。)
溝口は、事件の担当である自分と池畑には、一切そんな報告が来ていないことは、君枝には言えなかった。
二人は由実の部屋に入り、机へと向かった。
「でも、あの娘と桐生朱美の接点を聞いても詳しくは分からないって言うんですよ。しかも、桐生朱美は近々死刑になるって話ですし…。」
納得いかないような口調で言う君枝に、溝口は、例の机の引き出しを指差しながら言った。
「この中に真実があるかもしれませんよ。」
溝口は、机の鍵穴に持ってきた鍵を差込み解錠すると、ゆっくりと引出しを開けた。
中から出てきたのは、大量のファッションイラストだった。
「やっぱり、前にお話ししたのは、これです、これ。」
君枝は、引出しから、イラストを一枚取り出し溝口に見せた。以前、訪れた時に、君枝が話していたイラストだった。君枝は、その他のイラストを描いた紙を一枚ずつ取り出しては、横のベッドに並べていった。
五十枚以上のイラストを取り出し終えると、引出しの中は空っぽに生っていた。二人は、イラストを一枚ずつじっくり眺めた。
「…あの娘の夢叶えてあげたかった。」
君枝は涙を拭いながら言った。
「あの…お疲れの所ありがとうございました。」
溝口は、一礼して部屋を出ようとした際、ふいに開きっぱなしの引出しを見ると、何かが光って見えた。
溝口は、すぐに引出しに近づき、光って見えた部分を細部まで見た。すると、引出しの底がほんの少しサイズが小さく、側面と隙間があるように見えた。
溝口が、徐に、その隙間に指の爪を入れて底板に引っ掻けると、底板が少し浮いた。
「…すみません、ありましたよ。本当の真実。この引出しの底、二重底になっています。」
その言葉に、君枝も引出しの近くまで移動し、溝口がゆっくりと板を外した。
「…これって…。」
板の下からは何枚かの写真が出てきた。君枝は、首を傾げながら写真を見つめて何も答えなかった。
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溝口はスマホを取り出し、池畑へ電話を掛けた。
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