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最終節 最期
(2)
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ー 村上宅 ー
13時44分
「…繰り返します。呪い裁判で死刑判決を受けていた桐生朱美死刑囚の刑の執行が先程行われました。桐生死刑囚は、今月15日に判決を受けたばかりであり、判決からわずか14日で死刑が執行されたのは、異例中の異例です。同時に警察は、10月14日に起きた南雲由実さんの列車事故は、桐生朱美死刑囚の呪いによるものだと正式発表しました。更に警察は、本日の桐生朱美死刑囚の死刑執行により、呪いの驚異からは解放された、呪いは根絶されたともコメントをしています。また、…。」
ニュースキャスターは、少し興奮気味で、桐生朱美の死刑執行を伝え続けていた。
「…嘘…だろ…。」
正人は、桐生朱美の死刑執行よりも、南雲由実の報道に驚いた。
正人は、千里からリモコンを取り上げ、テレビの電源を消した。リモコンを取られてもビクともしない千里に、正人は動揺していた。
「ち、千里?い、今の、ニュースはな…。」
「…あなた、嘘付いてたの?」
千里は、くるりと正人に身体ごと振り向いた。
「由実、死んでたんだ。…でもね、私思い出したのよ。」
千里は、棚の上に飾ってあった花瓶を手に取り、迷うことなく正人の頭に振り落とした。正人は、まともに喰らい、血を流しながらソファに倒れ込んだ。
「ち、千里、何を…。」
ー 神奈川県警 署内 ー
13時38分
「溝口、落ち着いたか?ゆっくりと話せ。南雲由実の机の引出しには何があったんだ?」
池畑はゴクンと唾を飲み込んだ。
「…写真です。…南雲由実と………村上正人が二人で写っている写真が十数枚出てきました。」
「……村上さん?…そう言うことか。わかった、ご苦労。…直ぐに掛け直す。」
池畑は、電話を切り、スマホでメールを開き、犬童から送られてきた画像を確認した。
「…ちくしょう、やっぱり千里さんか。」
女性らしき画像は、直ぐに村上千里だと分かった。画像の日付は10月13日、南雲由実が電車に轢かれる前日のものだった。
池畑は、衝撃とショックで、力尽きたように席にもたれ掛かった。
ー 村上宅 ー
13時47分
「千里?どうしたんだ。…ぐぅううう。」
正人は、前頭部から流れ出てくる血を左手で抑えながら、右手をソファについて立ち上がろうとも全身に力が入らずに動けなかった。千里は、正人のすぐ側までやってきて、仰向けの状態で動けない正人を上から見下ろすように睨み付け、ゆっくりと話し出した。
「…私思い出したのよ。由実は私が呪ったの。…だって、私からあなたを奪おうとしたから。でもね、まさか本当に効果があるなんて…それで私は自分で命を絶ったのよね。」
「千里、何の話だ。誤解してるよ。」
正人は、ボヤけて見える千里を必死で説得しようとした。
「誤解?私は由実が死ぬ一週間前に彼女の家で見てしまったのよ。由実が部屋からいない間に、たまたま置いてあった鍵を、たまたま見つけた鍵穴に差し込んでみたら、鍵が開いてしまった。私は引出しをそっと開けたの。そうしたら、由実とあなたのツーショット写真がたくさん…。」
千里は、くるりとベランダに身体ごと振り向き、ゆっくりとベランダに向かって歩き出した。
「ま、待て。…ぐぅうぁあ、ち、千里。誤解だ……おれは…何も。」
動きたくても、身体が言うことを聞かず、激しい頭痛が襲いかかった。
「……………。」
千里は、正人の言葉に反応することなく、ベランダに通じるガラス窓を開けて、素足のままベランダに出た。
「ま、待て、千里。ち、ちさ……ぐぅううう。」
頭の痛みで声が思うように出ずに、大量の出血で頭がぼーっとしてきた。そうしてる間にも千里は、ベランダの柵によじ登ろうと奮闘していた。
「千里、早まるな…くっ。まだ、は、話を……ぐぅううう。」
正人は、頭を抑え痛みを耐えようとするが、身体は意思に反して力が入らず、視界に色彩が無くなってきていた。正人は、頭の中でハッとした。つい最近見た夢を直ぐに思い出したのだ。
「…これ…だった…のか。」
千里は、ベランダの柵の上に立ち、正人の方をゆっくりと振り返った。正人には、その姿はぼやけて見えたが、千里が涙を流していたのはわかった。正人は、力を振り絞り届くはずはないが、右手をゆっくりと伸ばし、千里に手を差し出した。
「ち……千…里。」
千里は、ゆっくりと口を開き、正人に何かを話し掛けたが、正人は既に何も聞こえない状態だった。だが、ぼやけて見えた千里の口は、「ご・め・ん・ね」と言っているようだった。
次の瞬間、正人の視界から千里の姿は消えた。
何もないベランダは見えているため、正人自身の視力が無くなったわけではない。
正人は、何が起きたのか、夢と同じ結末になってしまったのか、まだ信じたくはなかった。
「千里ぉぉぉぉぉ!!」
実際には声は出ていないが、叫びたかった。
千里を救いたかった。だが、そんなことを悔いる暇もなく、次の瞬間、正人の心臓は激痛に襲われた。
「ぐぁっ、く、かぁ…。」
正人の視界は、ゆっくりと闇に包まれていった。
13時44分
「…繰り返します。呪い裁判で死刑判決を受けていた桐生朱美死刑囚の刑の執行が先程行われました。桐生死刑囚は、今月15日に判決を受けたばかりであり、判決からわずか14日で死刑が執行されたのは、異例中の異例です。同時に警察は、10月14日に起きた南雲由実さんの列車事故は、桐生朱美死刑囚の呪いによるものだと正式発表しました。更に警察は、本日の桐生朱美死刑囚の死刑執行により、呪いの驚異からは解放された、呪いは根絶されたともコメントをしています。また、…。」
ニュースキャスターは、少し興奮気味で、桐生朱美の死刑執行を伝え続けていた。
「…嘘…だろ…。」
正人は、桐生朱美の死刑執行よりも、南雲由実の報道に驚いた。
正人は、千里からリモコンを取り上げ、テレビの電源を消した。リモコンを取られてもビクともしない千里に、正人は動揺していた。
「ち、千里?い、今の、ニュースはな…。」
「…あなた、嘘付いてたの?」
千里は、くるりと正人に身体ごと振り向いた。
「由実、死んでたんだ。…でもね、私思い出したのよ。」
千里は、棚の上に飾ってあった花瓶を手に取り、迷うことなく正人の頭に振り落とした。正人は、まともに喰らい、血を流しながらソファに倒れ込んだ。
「ち、千里、何を…。」
ー 神奈川県警 署内 ー
13時38分
「溝口、落ち着いたか?ゆっくりと話せ。南雲由実の机の引出しには何があったんだ?」
池畑はゴクンと唾を飲み込んだ。
「…写真です。…南雲由実と………村上正人が二人で写っている写真が十数枚出てきました。」
「……村上さん?…そう言うことか。わかった、ご苦労。…直ぐに掛け直す。」
池畑は、電話を切り、スマホでメールを開き、犬童から送られてきた画像を確認した。
「…ちくしょう、やっぱり千里さんか。」
女性らしき画像は、直ぐに村上千里だと分かった。画像の日付は10月13日、南雲由実が電車に轢かれる前日のものだった。
池畑は、衝撃とショックで、力尽きたように席にもたれ掛かった。
ー 村上宅 ー
13時47分
「千里?どうしたんだ。…ぐぅううう。」
正人は、前頭部から流れ出てくる血を左手で抑えながら、右手をソファについて立ち上がろうとも全身に力が入らずに動けなかった。千里は、正人のすぐ側までやってきて、仰向けの状態で動けない正人を上から見下ろすように睨み付け、ゆっくりと話し出した。
「…私思い出したのよ。由実は私が呪ったの。…だって、私からあなたを奪おうとしたから。でもね、まさか本当に効果があるなんて…それで私は自分で命を絶ったのよね。」
「千里、何の話だ。誤解してるよ。」
正人は、ボヤけて見える千里を必死で説得しようとした。
「誤解?私は由実が死ぬ一週間前に彼女の家で見てしまったのよ。由実が部屋からいない間に、たまたま置いてあった鍵を、たまたま見つけた鍵穴に差し込んでみたら、鍵が開いてしまった。私は引出しをそっと開けたの。そうしたら、由実とあなたのツーショット写真がたくさん…。」
千里は、くるりとベランダに身体ごと振り向き、ゆっくりとベランダに向かって歩き出した。
「ま、待て。…ぐぅうぁあ、ち、千里。誤解だ……おれは…何も。」
動きたくても、身体が言うことを聞かず、激しい頭痛が襲いかかった。
「……………。」
千里は、正人の言葉に反応することなく、ベランダに通じるガラス窓を開けて、素足のままベランダに出た。
「ま、待て、千里。ち、ちさ……ぐぅううう。」
頭の痛みで声が思うように出ずに、大量の出血で頭がぼーっとしてきた。そうしてる間にも千里は、ベランダの柵によじ登ろうと奮闘していた。
「千里、早まるな…くっ。まだ、は、話を……ぐぅううう。」
正人は、頭を抑え痛みを耐えようとするが、身体は意思に反して力が入らず、視界に色彩が無くなってきていた。正人は、頭の中でハッとした。つい最近見た夢を直ぐに思い出したのだ。
「…これ…だった…のか。」
千里は、ベランダの柵の上に立ち、正人の方をゆっくりと振り返った。正人には、その姿はぼやけて見えたが、千里が涙を流していたのはわかった。正人は、力を振り絞り届くはずはないが、右手をゆっくりと伸ばし、千里に手を差し出した。
「ち……千…里。」
千里は、ゆっくりと口を開き、正人に何かを話し掛けたが、正人は既に何も聞こえない状態だった。だが、ぼやけて見えた千里の口は、「ご・め・ん・ね」と言っているようだった。
次の瞬間、正人の視界から千里の姿は消えた。
何もないベランダは見えているため、正人自身の視力が無くなったわけではない。
正人は、何が起きたのか、夢と同じ結末になってしまったのか、まだ信じたくはなかった。
「千里ぉぉぉぉぉ!!」
実際には声は出ていないが、叫びたかった。
千里を救いたかった。だが、そんなことを悔いる暇もなく、次の瞬間、正人の心臓は激痛に襲われた。
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正人の視界は、ゆっくりと闇に包まれていった。
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