Rem-リム- 呪いと再生

雨木良

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最終節 最期

(3)

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ー 神奈川県警 署内 ー

13時51分

池畑は、衝撃を受けている溝口に対し、今日はもう直帰して良い旨を電話し、暫く考えてから意を決して、正人に電話することにした。

「…知らない方が幸せな真実…ってこれだったのかもな。」

池畑はそう呟きながら、正人の番号に電話を掛けた。しかし、呼び出し音がいくら鳴っても正人が電話に出ることは無かった。

「…ふぅ。」

池畑は、正直出なくて安心した。

出ても何から話せば良いのか頭の中で整理ができていなかった。

「池畑、分かったぞ!!」

会議室で打ち合わせをしていた、杉崎、秋吉、石井が執務室へと戻ってきた。秋吉の声に反応し、池畑は入口に振り向いた。

「池畑くん、溝口くんの方は進展あったのか?」

杉崎が質問した。 

「…えぇ、個人的には最悪な結末です。」

「え?」

佐倉が失踪した時と同じ表情を浮かべた池畑を見て、杉崎は只事じゃないと感じた。池畑は、深く一呼吸すると、ゆっくり続けた。

「…呪いの紙を購入した一人は村上さんの妻、千里さんでした。彼女は旦那と南雲由実の浮気に逆上し、南雲由実を呪いで殺害。恐らくですが、後悔の念に借られ自殺…もしくは………。」

「村上正人が殺した…か。」

杉崎の隣で聞いていた秋吉が、言い詰まった池畑の言葉を代言した。

「課長、俺と石井で村上の家を偵察して来ます。さっきの件の報告は課長からお願いします。」

「あぁ、わかった。気をつけてな。」

秋吉は石井を連れて、執務室を出ていった。

「池畑くん、まぁ座ろう。」

杉崎は池畑を自席に座らせ、自分は横の溝口の椅子に座った。

「池畑くん、村上さんが奥さんを殺したのか、奥さんが自殺したのかは、まだわからないが…君に佐倉先生の時のようにはなってほしくはない。」

池畑は、頭を抱えながら大きく頷いた。

「えぇ、わかっています。…自分は溝口と一緒に真実をただ追い求めていました。どんな真実でも、受け入れる覚悟です。でも、この真実は…正直知りたくはなかった。…ちょっとすみません。」

池畑は席を立ち、執務室を出てトイレへと向かった。

トイレに着くと、洗面台の蛇口を拈り、水を両手で掬うと顔を乱暴に洗い、両頬を叩いて、正面の鏡を見ながら自分自身に言い聞かせた。

「…お前はまだやれる。お前は真実が知りたいだろ。」

鏡の中の池畑は、少しニヤリと笑った。

池畑は執務室に戻ると、杉崎の席まで行き一礼した。

「すみませんでした、もう大丈夫です。」

「無理はするなよ。…ただ、もうひとつ君に話さなければならないことがある。今、秋吉くんたちと調べてきたことについてだ。」

「…佐倉の事件ですね。」

池畑は、既に頭がパンク状態だったので、これ以上新しい事を聞きたくはなかったが、佐倉の件となると話は別であり、池畑はもう一度両頬を叩いて、杉崎の席の前に置かれた椅子に腰掛けた。

「…大丈夫か?」

杉崎は心配そうに聞いたが、池畑は大きく頷いた。

「…わかった。…当時、契約していた警備会社に問い合わせたところ、佐倉先生が居なくなった当日に勤務していた五人の警備員は…全員死亡していたよ。時期はバラバラだが、全員心臓麻痺でね。」

いきなりの衝撃的な事実に、池畑はゾッとした。

「それって………。」

「あぁ、秋吉くんから聞いてるだろ、呪いを掛けられた者の末路については。…行くぞ。」

杉崎は席を立ち上がりながら言った。

「行くって…どちらに?」

「科学研究所だよ。」

ー 車中 ー

14時10分

科学研究所に向かって走り出し、最初の赤信号で止まった所で、助手席の杉崎が三枚の画像をプリントした資料を池畑の膝の上に置いた。

「解剖医学センターに残っていたよ。」

池畑は資料を手に取り凝視した。

「MRIの3D画像ですか。」

「あぁ、五人の警備員のうち、三人が解剖医学センターで司法解剖をしていてね、竈山センター長から頂戴した画像だ。当時から、遺体をMRIで撮影し、手作業の解剖と映像からの見地を合わせて結論を出す教えだったようだよ。…で、肝心の脳だが…。」

杉崎の言葉に、池畑は三枚の画像の該当箇所を指でなぞるようにして確認した。

「…確かに、症状が三人とも見られますね。」

信号が青に変わり、資料を杉崎に戻すと、池畑は再びハンドルを握った。

「あとな、呪いに掛けられた、と意識の元で当時の監視カメラ映像を見直すと、突然五人の動きがおかしく感じる場面があるんだ。詳しくは後で見せるが、全員が突然規律的な行動になるというか、不自然な感じでな。」

「…それはどういうことですか。」

「つまりだ、その瞬間を警備員たちが呪いに掛けられたタイミングだとすると…。」

「あ、そうか!どの方向から呪いを掛けられたか分かるわけですね。それを見てもらいに科学研究所に行くわけですね。」

「……あぁ。そう言うことだ。」

杉崎は、窓の外を眺めながら答えた。

この時、池畑は、頭の中である仮定を考えていたが、信じたくはない内容だったので口にはしなかった。
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