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最終節 最期
(4)
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ー 科学研究所 ー
14時24分
杉崎と池畑は、到着するなり瀬古らの研究室に直行し、ノックもせずにドアを開けた。
「び、びっくりした。ノックくらいしてくださいよ。…て、杉崎課長さん!?」
瀬古はてっきり池畑か秋吉一人だと思い込んでおり、予想外の来客に少し動揺した。
「どうされたんですか?課長さんが直接ここにいらっしゃるなんて。佐倉先生の呪いの機械の実証実験以来じゃないですか?」
「確かにそうかもしれないですね。瀬古先生、それはそうと佐倉先生が居なくなってから、随分とご活躍されてるようで、私も安心しましたよ。」
府川と志村は、各々自席から覗き込むように、二人の会話を聞いていた。
「活躍なんてとんでもないことです。佐倉先生の後釜っていう、大きなプレッシャーに潰されないよう、自分にできることを最大限にやってるだけですよ。」
瀬古は謙遜しながらも、少し照れた表情で答えた。瀬古は、二人を打ち合わせスペースの椅子に案内し、府川にお茶を出すように依頼した。
「それで、今日はどのようなご用件で。」
瀬古の質問に、池畑は鞄からさっき車内で杉崎から見せられた脳の資料を取り出し、机に三枚並べた。
「この三人の脳には呪いの症状が出ています。瀬古先生には、この人たちがどの方向から…。」
「この研究室でしたよ。」
杉崎が池畑の話を遮り、腕を組みながら言った。
「え?」
池畑は驚いて杉崎の顔を伺ったが、杉崎はそのまま話を続けた。
「ですから、この三人の脳を見ると、呪いを掛けた方角にはこの研究室があるということです。もっと言うと、そのへんです。」
杉崎が何も無いスペースを指差しながら言った。池畑は、当時のこの研究室内を記憶から呼び起こしていた。
「何も無い……いや、当時はあったんだ!この場所に。」
池畑は直ぐに思い出した。杉崎が指差した場所は、佐倉が再現した呪いの機械が置いてあった場所だったのだ。
「…杉崎課長さん。何が言いたいのですか?」
瀬古は、杉崎を睨むような目で言った。
「……簡単ですよ。この研究室の誰かが佐倉先生の呪いの機械を利用したんです。」
周りで作業をしながら聞き耳を立てていた、府川と志澤は驚いて作業を止め、池畑たちの所に駆け寄ってきた。志澤が身を乗り出し、杉崎に聞いた。
「課長さん。俺はあの日この場所にはいなかったんだ。容疑者からは除外だろ?」
志澤は確かにあの日出張で研究室にはいなかった。杉崎は、志澤の問いに頷いた。
「てことは…、瀬古先生か府川先生…ですか。」
志澤は、二人を睨むように見回した。
「池畑くん、さっき車で渡した物を。」
池畑は、車を降りる直前に、杉崎から封筒を預かっていた。池畑は、言われた通り封筒を鞄から取り出し、瀬古に渡した。
「何ですか、これ。」
瀬古は、渡された封筒から中身を取り出した。それは、さっきの三人とは別の脳のMRIの3D画像だった。
「また脳の画像ですか。…これはどなたの?」
瀬古の質問に、杉崎は右手でその人物を示した。その方向に振り向くと、右手を挙げた府川がいた。
「先程、お時間を拝借して、秋吉刑事と解剖医学センターに行っていただき、センターの協力の元、撮影してきました。」
池畑は、瀬古から画像の資料を取り上げ、呪いの症状が出る箇所に目を凝らした。そこには、さっきの三人と同じような脳の表面が白っぽくなっている症状が見受けた。
「府川先生は、呪いの被害者です。…となると、消去法で…。」
杉崎はそう言うと、瀬古の顔を一点に睨みをきかせた。杉崎の視線に合わせ、その場にいた三人の視線も一気に瀬古に向けられた。
「わ……わたし?…冗談でしょ。消去法って。私の脳にも呪いの症状があるかもしれませんよ。だいたい何で私が。」
瀬古は、苛立ちを隠せない表情で反論した。
「瀬古先生………。」
府川は悲しげな表情で瀬古の顔を見つめた。
「やめてよ!!何で私がそんな顔されなきゃならないの!杉崎さん、証拠はあるんですか!?じゃああの監視カメラはどうやって電源を落としたと?」
瀬古は段々とヒートアップしていた。動揺しているのが一目瞭然だった。
「うわぁぁ!」
ガシャッ、バタンッ!悲鳴を挙げながら所長の工藤が研究室に凄い勢いで入ってきた。ドアを閉めるとその場に座り込み、荒れた呼吸を整え出した。
「し、所長。どうされたんですか?」
尋常じゃない工藤の様子に、志澤が恐る恐る質問した。
「ハァ、ハァ、み、見ちまった。…ゆ、幽霊。」
「…幽霊!?」
皆が呆気に取られたリアクションの中、池畑だけは、もしかしたらと嫌な予感がした。
「佐倉先生!…佐倉先生が、さっきそこに…。」
工藤がまだ荒い呼吸で、廊下を指差しながら言った。その矢先に、工藤がもたれ掛かっていたドアがゆっくりと開いた。工藤は恐る恐るゆっくりと後ろを振り返ると、恐ろしい物を見たのか、もの凄い形相で雄叫びを挙げながら杉崎たちの後ろに逃げ込んだ。
そのまま、ゆっくり扉が開き、佐倉が研究室に入ってきた。
「…佐倉先生。」
「…嘘!?」
誰もが信じられないという表情の中、二人だけは違う表情を浮かべていた。
池畑は、どうしてここに来たんだという困惑の表情、そして瀬古は、工藤と同じ恐怖に支配された表情だった。
「佐倉先生なのか?」
志澤がゆっくりと佐倉に近づきながら質問した。佐倉は、無に近い表情をしていたが、志澤の質問にニコッと笑ってみせた。
「えぇ、佐倉由香里よ。」
佐倉は、志澤の肩にポンッと触れると、そのまま一直線に瀬古に向かって歩き出し、怯えた表情の瀬古の目の前で足を止め、深くお辞儀をした。
「瀬古先生。私の後にこの研究室を守ってくれてるようで、ありがとう。」
佐倉は頭をあげると、またニコッと笑ってみせた。
「き、きゃぁぁあああ。」
怯えた瀬古には笑顔が逆効果だった。
パニックになった瀬古は、自分の机を乱暴に動かし、床板を一枚、二枚と剥がし始めた。
「…な、何を?」
池畑たちには、暴走する瀬古を止める術はなく、ただただ傍観していた。
床板を剥がすと、土が現れ、瀬古は素手で土を乱暴に掘っていった。数分で瀬古の手が止まり、再び恐怖に満ちた表情で佐倉の顔を見上げた。
「あなた…やっぱりここにいるじゃない。」
池畑は、瀬古をどけ、掘っていった土の中を覗くと人骨の一部が見えた。杉崎は、静かに瀬古の背後に回り、手錠を掛けた。
「池畑くん、工藤所長もだ。」
池畑は、手錠を手に工藤の背後に回った。
「な、何で私もなんだ!?」
「さっきのあなたは、間違いなく佐倉先生が死んでいることを知っている人間の反応だった。直接殺してないにしろ、佐倉先生がここに埋まっていることは知っていたのでは?」
工藤は特に反論はせずに、池畑の手錠を受け入れた。池畑と杉崎は二人を立ち上がらさせた。
「池畑くん。そこにいる“生きている”佐倉先生の件は後ほど報告するように。」
杉崎はそう言うと、先に瀬古を連れて研究室を出ていった。
「ふぅ……嫌な役。…幽霊か。」
佐倉は疲れきった表情で椅子に腰掛けた。池畑が工藤を取り押さえたまま、佐倉に近付いた。
「由香里、お前どうして?」
「……秋吉刑事から連絡があったのよ。生き返ったんなら、自分で片を付けてこいって。…あの人、私が生き返ったこと知っていたのね。驚いたわ。」
「…秋吉か。由香里、お前これからどうするつもりなんだ?」
佐倉は、そう言われると立ち上り、研究室内を見回した。
「やっぱり、ここが自分の居場所…って気がするのよね。」
佐倉の目線の先には府川と志澤がいた。二人とも状況が読み取れず困惑した表情でいた。
「あなたは行って。あの二人には私から説明してみるわ。」
佐倉には困惑や緊張したような表情は一切見受けられなかった。池畑は、流石は佐倉だ、やはり生き返ったこの人は間違いなく知っている佐倉なんだと改めて感じた。
「あぁ、任せるよ。また後で迎えに来る。」
池畑はそう言うと、工藤を連れて車に向かった。
佐倉は笑顔で池畑に手を振り、その後ろでは、自分たちだけにするのか?という困惑の表情を浮かべる府川と志澤の姿があった。
14時24分
杉崎と池畑は、到着するなり瀬古らの研究室に直行し、ノックもせずにドアを開けた。
「び、びっくりした。ノックくらいしてくださいよ。…て、杉崎課長さん!?」
瀬古はてっきり池畑か秋吉一人だと思い込んでおり、予想外の来客に少し動揺した。
「どうされたんですか?課長さんが直接ここにいらっしゃるなんて。佐倉先生の呪いの機械の実証実験以来じゃないですか?」
「確かにそうかもしれないですね。瀬古先生、それはそうと佐倉先生が居なくなってから、随分とご活躍されてるようで、私も安心しましたよ。」
府川と志村は、各々自席から覗き込むように、二人の会話を聞いていた。
「活躍なんてとんでもないことです。佐倉先生の後釜っていう、大きなプレッシャーに潰されないよう、自分にできることを最大限にやってるだけですよ。」
瀬古は謙遜しながらも、少し照れた表情で答えた。瀬古は、二人を打ち合わせスペースの椅子に案内し、府川にお茶を出すように依頼した。
「それで、今日はどのようなご用件で。」
瀬古の質問に、池畑は鞄からさっき車内で杉崎から見せられた脳の資料を取り出し、机に三枚並べた。
「この三人の脳には呪いの症状が出ています。瀬古先生には、この人たちがどの方向から…。」
「この研究室でしたよ。」
杉崎が池畑の話を遮り、腕を組みながら言った。
「え?」
池畑は驚いて杉崎の顔を伺ったが、杉崎はそのまま話を続けた。
「ですから、この三人の脳を見ると、呪いを掛けた方角にはこの研究室があるということです。もっと言うと、そのへんです。」
杉崎が何も無いスペースを指差しながら言った。池畑は、当時のこの研究室内を記憶から呼び起こしていた。
「何も無い……いや、当時はあったんだ!この場所に。」
池畑は直ぐに思い出した。杉崎が指差した場所は、佐倉が再現した呪いの機械が置いてあった場所だったのだ。
「…杉崎課長さん。何が言いたいのですか?」
瀬古は、杉崎を睨むような目で言った。
「……簡単ですよ。この研究室の誰かが佐倉先生の呪いの機械を利用したんです。」
周りで作業をしながら聞き耳を立てていた、府川と志澤は驚いて作業を止め、池畑たちの所に駆け寄ってきた。志澤が身を乗り出し、杉崎に聞いた。
「課長さん。俺はあの日この場所にはいなかったんだ。容疑者からは除外だろ?」
志澤は確かにあの日出張で研究室にはいなかった。杉崎は、志澤の問いに頷いた。
「てことは…、瀬古先生か府川先生…ですか。」
志澤は、二人を睨むように見回した。
「池畑くん、さっき車で渡した物を。」
池畑は、車を降りる直前に、杉崎から封筒を預かっていた。池畑は、言われた通り封筒を鞄から取り出し、瀬古に渡した。
「何ですか、これ。」
瀬古は、渡された封筒から中身を取り出した。それは、さっきの三人とは別の脳のMRIの3D画像だった。
「また脳の画像ですか。…これはどなたの?」
瀬古の質問に、杉崎は右手でその人物を示した。その方向に振り向くと、右手を挙げた府川がいた。
「先程、お時間を拝借して、秋吉刑事と解剖医学センターに行っていただき、センターの協力の元、撮影してきました。」
池畑は、瀬古から画像の資料を取り上げ、呪いの症状が出る箇所に目を凝らした。そこには、さっきの三人と同じような脳の表面が白っぽくなっている症状が見受けた。
「府川先生は、呪いの被害者です。…となると、消去法で…。」
杉崎はそう言うと、瀬古の顔を一点に睨みをきかせた。杉崎の視線に合わせ、その場にいた三人の視線も一気に瀬古に向けられた。
「わ……わたし?…冗談でしょ。消去法って。私の脳にも呪いの症状があるかもしれませんよ。だいたい何で私が。」
瀬古は、苛立ちを隠せない表情で反論した。
「瀬古先生………。」
府川は悲しげな表情で瀬古の顔を見つめた。
「やめてよ!!何で私がそんな顔されなきゃならないの!杉崎さん、証拠はあるんですか!?じゃああの監視カメラはどうやって電源を落としたと?」
瀬古は段々とヒートアップしていた。動揺しているのが一目瞭然だった。
「うわぁぁ!」
ガシャッ、バタンッ!悲鳴を挙げながら所長の工藤が研究室に凄い勢いで入ってきた。ドアを閉めるとその場に座り込み、荒れた呼吸を整え出した。
「し、所長。どうされたんですか?」
尋常じゃない工藤の様子に、志澤が恐る恐る質問した。
「ハァ、ハァ、み、見ちまった。…ゆ、幽霊。」
「…幽霊!?」
皆が呆気に取られたリアクションの中、池畑だけは、もしかしたらと嫌な予感がした。
「佐倉先生!…佐倉先生が、さっきそこに…。」
工藤がまだ荒い呼吸で、廊下を指差しながら言った。その矢先に、工藤がもたれ掛かっていたドアがゆっくりと開いた。工藤は恐る恐るゆっくりと後ろを振り返ると、恐ろしい物を見たのか、もの凄い形相で雄叫びを挙げながら杉崎たちの後ろに逃げ込んだ。
そのまま、ゆっくり扉が開き、佐倉が研究室に入ってきた。
「…佐倉先生。」
「…嘘!?」
誰もが信じられないという表情の中、二人だけは違う表情を浮かべていた。
池畑は、どうしてここに来たんだという困惑の表情、そして瀬古は、工藤と同じ恐怖に支配された表情だった。
「佐倉先生なのか?」
志澤がゆっくりと佐倉に近づきながら質問した。佐倉は、無に近い表情をしていたが、志澤の質問にニコッと笑ってみせた。
「えぇ、佐倉由香里よ。」
佐倉は、志澤の肩にポンッと触れると、そのまま一直線に瀬古に向かって歩き出し、怯えた表情の瀬古の目の前で足を止め、深くお辞儀をした。
「瀬古先生。私の後にこの研究室を守ってくれてるようで、ありがとう。」
佐倉は頭をあげると、またニコッと笑ってみせた。
「き、きゃぁぁあああ。」
怯えた瀬古には笑顔が逆効果だった。
パニックになった瀬古は、自分の机を乱暴に動かし、床板を一枚、二枚と剥がし始めた。
「…な、何を?」
池畑たちには、暴走する瀬古を止める術はなく、ただただ傍観していた。
床板を剥がすと、土が現れ、瀬古は素手で土を乱暴に掘っていった。数分で瀬古の手が止まり、再び恐怖に満ちた表情で佐倉の顔を見上げた。
「あなた…やっぱりここにいるじゃない。」
池畑は、瀬古をどけ、掘っていった土の中を覗くと人骨の一部が見えた。杉崎は、静かに瀬古の背後に回り、手錠を掛けた。
「池畑くん、工藤所長もだ。」
池畑は、手錠を手に工藤の背後に回った。
「な、何で私もなんだ!?」
「さっきのあなたは、間違いなく佐倉先生が死んでいることを知っている人間の反応だった。直接殺してないにしろ、佐倉先生がここに埋まっていることは知っていたのでは?」
工藤は特に反論はせずに、池畑の手錠を受け入れた。池畑と杉崎は二人を立ち上がらさせた。
「池畑くん。そこにいる“生きている”佐倉先生の件は後ほど報告するように。」
杉崎はそう言うと、先に瀬古を連れて研究室を出ていった。
「ふぅ……嫌な役。…幽霊か。」
佐倉は疲れきった表情で椅子に腰掛けた。池畑が工藤を取り押さえたまま、佐倉に近付いた。
「由香里、お前どうして?」
「……秋吉刑事から連絡があったのよ。生き返ったんなら、自分で片を付けてこいって。…あの人、私が生き返ったこと知っていたのね。驚いたわ。」
「…秋吉か。由香里、お前これからどうするつもりなんだ?」
佐倉は、そう言われると立ち上り、研究室内を見回した。
「やっぱり、ここが自分の居場所…って気がするのよね。」
佐倉の目線の先には府川と志澤がいた。二人とも状況が読み取れず困惑した表情でいた。
「あなたは行って。あの二人には私から説明してみるわ。」
佐倉には困惑や緊張したような表情は一切見受けられなかった。池畑は、流石は佐倉だ、やはり生き返ったこの人は間違いなく知っている佐倉なんだと改めて感じた。
「あぁ、任せるよ。また後で迎えに来る。」
池畑はそう言うと、工藤を連れて車に向かった。
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