勇者と七つの涙

雨木良

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『勇者の剣』奪還編

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ー 現在 ー

コンコン。

ロイがグルトに事の経緯を話していると、部屋の扉がノックされ、この屋敷の主がホットミルクを3つ持って入ってきた。家主は、とても立派な髭を蓄えたガタイの良い中年の男性で、優しい微笑みを浮かべていた。

「お話し中すまんね。グルトくん、体調はどうかな?」

ロイは、この屋敷のことをすっかりグルトに話すことを忘れていたことに気が付き、慌ててグルトに家主の紹介をした。

「グルトさん。こちら家主のアルドさんです。亡くなった僕の父の親友で、あの場所から比較的近かったんで、頼ってしまいました。」

「…ロイ、いつだって頼ってくれていいんだよ。お父さんからは、ロイたちのことを頼むと遺言を貰っている。それにしても、グルトくんが目覚めて良かった。はい、どうぞ。」

アルドはベッドの脇テーブルにお盆を置くと、二人にホットミルクを差し出した。アルドは、自分の分のカップを手に取ると、ロイとベッドを挟んで反対側の丸椅子に腰かけた。

「デストリュたちにやられたんだって?彼らもティグル王とともに、人が変わってしまった。」

アルドの言葉に、ロイは悲しげな顔をして下を向いた。

「…本当に。僕が勇者としての命を貰い、旅立つ前は皆、あんな人たちじゃなかったです。僕が旅に出てから現れた、現在のナンバースリーに位置するヨシミツが来てから、皆変わってしまったようです。」

「…ヨシミツ?名前からして異国の人間か?」

グルトが顔を強張らせた。

その頃、ティグル王の居城『サントル城』では、四剣士が王室に緊急召集されていた。広い王室の一角、大理石製の大きなテーブルに、王を上座に腰掛けた。

セルヴォーとテヒニクは、瀕死の重傷を負いながらも、ティグルによる回復魔法で傷が癒え、一命を取り留めていた。また、デストリュも任務を失敗していたため、王からの緊急召集に、何をされるのかと、三人は内心怯えていた。

重い空気の中、唯一気持ちが軽いナンバースリーのヨシミツが口を開いた。

ヨシミツは、白髪の老人で、数ヶ月前に突然、ティグル自身が連れてきた剣士である。王は、ヨシミツの詳細を語ることなく、三剣士だった王直属の親衛隊を四剣士に改めた。

「…ティグル王殿。本日の召集の目的とはいかがか?」

ティグルは、デストリュたち三人を睨み付けながら答えた。

「…全く、お前らには失望した。ガキ一人から石の一つも持って帰ってこれないのか?」

「いや、ガキは二人いて、それで…。」
「黙れ!!」

デストリュが言い訳を並べようとしているのを、ティグルが一喝した。セラヴォーは、ティグルの突然荒げた声に、ビクリと身体を震わせた。ヨシミツは、その様子を見て、ニヤリと笑みを浮かべた。

ティグルは、デストリュを睨み付けながら話を続けた。

「ガキが一人だろうと十人だろうと、ガキはガキだ!あのロイという少年は、我が国を裏切った罪人だぞ。デストリュ、お前は四剣士のナンバーワンだろ。…このままだと剥奪だな。お前らもだ!」

ティグルは、セルヴォーとテヒニクを指差しながら声を荒げた。

「…もう一度チャンスをください。次こそは。」

デストリュの言葉に、ティグルはパンパンと手を二回叩いた。すると、部屋の入口の扉の前で微動だにせずに立っていた執事のユングが、ティグルの真横へと足早に近寄った。

ユングは跪(ひざまず)き、絹の布に包まれた“ある物”をティグルに差し出した。ティグルは、片手で布ごと手にすると、デストリュに向かって差し出した。 

「これを使え。何としてもパープルティアーが必要だ、この王国のためにな。」
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