勇者と七つの涙

雨木良

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『勇者の剣』奪還編

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翌朝。

ロイとグルトは、アルドにストールのような布以外にも、幾つかの魔導具を貰い受け、全てを大きなリュックに入れ、グルトが背負うことになった。

家の外に出ると、アルドが一本の筆を上着の内ポケットから取り出した。

「………。」

アルドが小声で筆に向かって呪文を唱えると、筆は徐々に大きくなり、遂にはアルドと同じ長さの巨大な筆になった。アルドは、筆を両手に持ち、また呪文を唱えると、真っ白だった筆の穂が、青いインクが内側から染み出てきたかのように真っ青に染まった。

アルドは、その筆で両手を使い、直径1メートルほどの円を地面に描き、円の内側に不規則な模様を描き始めた。ロイたちは、何が起きるのかは予想もできずに、じっと見つめることしかできなかった。

「よし!」

アルドは、模様を完成させたのか筆を地面から離した。すると、青い魔法陣は発光し始め、次の瞬間、煙とともに通常の人の3倍はあろうかという鳥が魔法陣に現れた。その鳥は、真っ赤な身体に真っ青な顔、大きな嘴は艶やかなオレンジ色をしており、お尻にはクルクルと丸まった虹色に輝く尾を持っていた。

「ハッハー!!成功だ!久しぶりにやったからヒヤヒヤしたが、感覚は忘れてなかったな。」

アルドは嬉しそうに、その巨大な鳥に近付くと優しく頭を撫でた。鳥は、アルドを嫌がることなく、むしろ顔をアルドに擦り寄せるような仕草をした。

「…あの鳥、アルドさんに懐いてるのか?」

グルトはそう呟きながら、ゆっくりと鳥に近付いた。グルトに気が付いたアルドが鳥の身体を撫でながら言った。

「この鳥は、この世のものじゃない。私が魔法陣を通じて、異世界から呼び寄せたんだ。名前はカイン。クラージュたちとの冒険の最中に身に付けた魔法陣で呼び出し、一緒に冒険を乗り越えた仲間だ。まだ、私の事を覚えてくれていて嬉しいよ。」

「…凄い。アルドさんは本当に魔導師だったんですね。」

グルトは感心した表情でアルドを見つめた。アルドは、一瞬ポカンとした表情を浮かべたが、思わず吹き出してしまった。

「プッ、ハハハハハハ!何だ、魔導師に見えなかったか?まぁ、暫く使ってなかったからな。…グルトくん、ロイを頼んだよ。」

グルトはアルドの目を見つめながら頷いた。

「…あ、そう言えばロイは?」

グルトは、さっきから全く視界に入らないロイを探して辺りを見回すと、離れた場所で草木に隠れながら、こっそりこちらを見ているロイを見つけた。

「おい、ロイ!!なぁにやってんだ!?早く来いよ!」

グルトの呼び掛けに、ロイは首を横に振った。

「ん!?ロイ!?…あ、お前まさか…。」

グルトは、カインを指差しながら頭を抱えた。

「鳥…苦手。」

ロイは涙目でぼそりと呟いた。
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