勇者と七つの涙

雨木良

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『勇者の剣』奪還編

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デストリュは、まるで眠って起きたかのような感覚で目を開けると、テヒニクとセルヴォーと三人で、ヨシミツが王室から出てきたところを捕らえた場面に切り替わっていた。更に、切断された筈の右腕もしっかりと付いていることを確認した。

デストリュだけでなく、テヒニクとセルヴォーも同じ感覚であり、二人は怪我が治っていることに動揺していた。

「…どういうことだ、ヨシミツ。」

「…未来を…あなたたちにお見せしただけ…今、あなた達が考えていることを実行に移せばどうなるかを。」

ヨシミツは剣の切っ先に囲まれながら、無表情で話した。

一方、アルドの屋敷では、アルドがロイの父親たちと繰り広げた冒険の話に花を咲かせていた。

「そこで、クラージュの一撃で、谷に潜んでいたメナスをぶっ倒したんだ。…本当に強かった。真の勇者だったよ、ロイのお父さんは。」

アルドは話を終えると、少し涙ぐみ、誤魔化すためにホットミルクを口にした。

「ロイの家は勇者の家系だったのか。」

グルトの言葉に、ロイは頷いた。

「僕は、父さんみたいな勇者になりたい。父さんはどんな逆境にも挫けることなく、必ず任務を終えて帰ってきてくれてた。だから、僕も。でも…勇者の剣が無いと…。」

ロイは、手を強く握り締め、悔しそうな表情をした。

「なぁ、ロイ。その剣、お前を捕らたセルヴォーが持ってんじゃないのか?」

グルトの言葉に、ロイは顔を上げて、潤んだ瞳でグルトを見つめた。

「取り返しに行くか?俺も一緒に行ってやるよ。」

「お前ら、ティグル王のいるサントル城に直接乗り込むのか?」

アルドは驚きを隠せなかった。ロイとグルトは、目を合わせて、ゆっくり頷いた。

それを見たアルドは、優しく微笑み掛けた。

「…勇者を止めるわけにはいかないか。でも、みすみす剣も持たない勇者を敵陣に送り込ませるわけにはいかない。ちょっと付いてきなさい。」

アルドは、二人を引き連れ地下室へと向かった。重厚な扉の鍵を開けると、アルドが真っ暗な部屋に先に入り、中央にぶら下げていたランプの蝋燭に火を灯した。

「入りなさい。」

アルドの指示で、二人はゆっくりと部屋の中へと足を踏み入れた。しばらく開けていなかったのか、生ぬるい風を感じた。明かりは中央のランプのみのため、辺りを見渡しても、棚に何が置いてあるかまでは見えなかった。

アルドは、ランプを金具から外し、手持ちに変えると、棚にランプを近付けて、がさごそと何かを探し始めた。

「…あ、これだこれだ。」

アルドは、埃まみれの木箱を棚から床に下ろし、蓋の埃を手で払った。ロイは、蓋に書かれていた文字に注目した。

「クラージュ。父さんの名前だ。」

ロイの言葉に、アルドは嬉しそうに話を始めた。

「これは、さっき話したクラージュたちとの冒険の際に、手に入れた宝や、使用した武器などを保管している箱だ。…開けてみなさい。」

ロイは、ゆっくりと蓋をずらすように開けた。グルトもロイの背後から除き見ていた。

「…凄い。これは…。」

ロイが剣を取り出した。

「それは、クラージュが使用した剣だよ。任務遂行の報酬に、ティグル王から新しい剣を貰うまで使っていたやつだ。手入れもしてないから何処まで役に立つかはわからないが、君にそれを渡したくてね。」

ロイは、憧れの父と一緒に旅ができる気がして嬉しくてしょうがなかった。

「あ、あと、これも持ってくとよい。これは私が作った物でね、戦いには大いに役に立った。」

アルドはそう言うと、ストールのような布を二枚、グルトに渡した。グルトは受け取った布が何なのかも気になったが、それよりも気になっていることがあり、アルドに質問した。

「なぁ、アルドさん。アルドさんも勇者だったのか?」

アルドは、まさかという表情を浮かべて、首を横に振った。

「ハハハ、違う違う。私はね、こう見えても国一番の腕を持つ『魔導師』だったんだよ。」
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