勇者と七つの涙

雨木良

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『勇者の剣』奪還編

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「ミュール!」

フルールは杖を軽く前に出し唱えた。

キーン!

フルールの顔面に浴びせた拳は、顔の手前で何かに弾かれた。

「…何だ?何しやがった!?」

苛ついているデストリュに対し、フルールは杖を構えたまま、無言を貫いた。

「ガキがぁ!調子に乗るなよ!うおりゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

キン!キン!キン!キン!キン!

デストリュは怒りに任せて、左右の拳を何度も何度も浴びせたが、悉く何かに弾かれた。

「ふざけやがってぇぇ!!」

デストリュは、10メートル程後退し、体勢を前傾にすると、勢い良く走り出した。勢いが付くと、そのまま頭から倒れるような姿勢で宙を飛び、デストリュそのものがミサイルとなって、フルールに襲い掛かった。

ガキーンッ!!

「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「…くっ。」

フルールは、パワーを維持するのに必死だった。

ピキッ!ピキッピキッ。

何かにヒビが入る音がした。

「ハーハッハッハッ!これで終りだぁぁぁ!!」

デストリュは、地に足を付き、両腕を振り上げると、至近距離で両腕をミサイルのごとく発射させた。

カキーン!!

「…ダメか。」

ピキッピキッピキッ、パリーン!!

ドスッ、ズザザザザザザザザッドカン! 

防御は破られ、両腕はそのままフルールに襲い掛かり、フルールは地を滑るように飛ばされ壁に激突した。

「…痛っ。」

「何だ、生きてんのか!せっかく痛くないように即死にしてやろうと思ったのによぉ!」

デストリュは、両腕を戻さずに右足を振り上げ、勢いよく蹴り上げると、股から下が切り離され、腕と同じようにミサイルのごとくフルールに向かって飛んでいった。

「…やばっ!…あ、あれ?」

フルールは、また防御の体勢を取ろうとしたが、杖が見つからず、慌てふためいた。

「呼び込め…トネールダガー!」
「覚醒せよ…ブルイヤール!」

ロイとグルトは瓦礫に身体を埋めたまま、剣と短刀を前に掲げて唱えた。

ロイの剣からは毒霧が発生し、グルトの短刀からは雷が放たれた。

先にグルトの雷がデストリュの右足に直撃し、右足は進路を変え、フルールの右側の壁に激突した。

続けて、ロイの毒霧がデストリュを包み込んだが、デストリュが剣を一振りし、霧を消滅させた。

「…おめぇら、生きてやがったのか!おめぇらの石の力は俺には効かねぇって、何回言え…。」
ピキピキピキ。

剣から何かがヒビ割れる音がし、デストリュは視線を落とした。

「…な、何だ?」

それは、柄に嵌め込まれたブラックティアーがヒビ割れる音だった。

ピキピキピキピキピキ…パリーン! 

次の瞬間、ブラックティアーは砕け散り、欠片が地面へと落下した。

「…どういうことだ。」

慌てふためくデストリュを見て、ロイは今しかないと考え、痛みを堪えて瓦礫を退けて立ち上がり、剣を前方に放った。

「覚醒せよ…ロンテュモン!」

剣はそのままデストリュの真上に飛行し、煌めく光の粉を降らせ、デストリュの動きのスピードを極限まで落とした。

「ロイ!ブラックティアーの力はもうないわ。…ガルグイユ族の弱点は水分よ!水系の技はない?」

離れた場所で瓦礫に下半身を埋めていたフルールが叫んだ。

(水系の技…僕には出来ないな。どうしよう…。)

ロイが考え込んでいると、反対側の壁沿いで瓦礫に埋まっているグルトが短刀を掲げた。

「ったく、これで今日は終いだ。…呼び込め…ベンティスカダガー!」

グルトは、身体が瓦礫に埋まりながらも何とか首だけをデストリュに向け、短刀から吹雪を起こし、デストリュを再び足元から氷付けにした。

その瞬間、岩盤の鎧は氷とともに砕け散り、デストリュは人間の姿へと戻り、その場で倒れた。
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