勇者と七つの涙

雨木良

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『勇者の剣』奪還編

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「…やったのか…。」

グルトは、全身の力が抜けたように地面に座り込んだ。ロイとフルールも緊張が解け、安堵の表情を浮かべた。

テヒニクも「ふぅ。」と安堵のため息をつきながらも、右肩を貫通した刃が背後の壁に深く突き刺さっていたため、抜くとも起き上がることも出来なかった。

「全く、自分の攻撃が自分に返ってくるとは…。」

テヒニクはぶつぶつ言いながら、剣を持った左手を器用に後ろに回すと、力を込めて剣を振り上げた。すりと、見事に自分と壁の間で刺さった刃を真っ二つに破壊した。テヒニクは剣を杖のように使用し、右肩に刃が刺さったまま、ゆっくりと立ち上がり
、セルヴォーの元に歩き出した。

その様子を見ていたグルトが座ったままロイに質問した。

「そういや、ロイ。お前の盗まれた剣はあったのか?」

ロイは思い出したかのように、部屋中を見回し、セルヴォーの両脇に落ちている剣に注目した。セルヴォーがさっきまで戦いに使用していた剣だ。ロイはゆっくり近づき、気絶しているセルヴォーの脇に転がっている剣をおもむろに手に取った。

すると、剣が眩い光を放つと、徐々に形を変え、盗まれたロイの剣に変化した。

「…どうして変化してたんだろ?」

ロイは剣を見つめながら呟いた。

「持ち主に適した形があるからや。」

「ん?」

どこからか発せられた声に、ロイはグルトたちを見回した。グルトたちにも、その声が聞こえており、皆一斉に首を横に振った。

「おい、ロイ!こっちや、こっち!」

ロイは自分の右手当たりから声がしたように感じて、手元に視線を下ろした。

「ロイ!裏返してみ!」

どうやら、剣の柄から声がしているようで、ロイは言われるがまま、恐る恐る剣を裏返した。

「…え!?」
「嘘ぉ!?」

ロイの周りに密集したグルトたちも驚いた表情を浮かべた。

「やっと、取り戻してくれたなぁ。このままセルヴォーの剣として一生を過ごすかと思ったわい。」

柄の装飾に合わせて鋭い目つきの眼(まなこ)が浮かび上がり、横線の装飾に合わせて口のように開き、声を発していた。

「…ロイ、お前の剣って話せるのか?」

驚愕しているグルトの質問に、ロイは振り返って苦笑いを浮かべた。

「…初めてだよ。僕も何が何だか…。」

「…聞いたことあるわ。」

フルールが何かを思い出したように話し始めた。

「持ち主によって、その人に一番適した形に変化する剣…生き物のように成長していく剣…話すことができる剣…ただ、どれもラマジ王国に伝わる妖剣だって文献で見たことがあるわ。…別々の剣だと思ってたけど、一本の剣のことだったのね。…ロイ、この剣はどこで?」

「…父さんから譲り受けたんだ。でも、今までこんなこと無かったのに…。」

ロイが剣の柄を見つめながら言うと、柄は不機嫌そうな表情をした。

「なんやなんや、ようやく呪縛が解けて話せたと思ったのになぁ。お望みじゃなかったっつーことかいな!」

「いや、そんなことなくて、ちょっとびっくりしちゃって…。」

「…呪縛?…ラマジ王国…。」

ロイが弁解してる中、文献好きのグルトが、何か思い当たる伏がある素振りをし、フルールとテヒニクが視線を向けた。

「…お前、もしかして1000年前にラマジ王国を滅亡させたと言われている破壊の剣…『ゼロ』なのか?」

グルトは、柄を睨み付けながら聞いた。

「…なんや、わいも中々有名な存在なんやなぁ。…そうや、わいがゼロや。」

ゼロはニヤリと笑った。
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