勇者と七つの涙

雨木良

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『闇の世界』脱出編 ーオンブル国ー

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「ふん、あっけないもんだな。」

シュドはそう言うと、フルールに重なるように倒れたロイを蹴って転がし、仰向けにさせた。

ロイは右肩から左脇に向かって斜めに斬られ、傷口からは大量の血が流れていた。

「…ん?」

シュドはロイの顔をじっと見つめた。

「こいつ、さっきクラージュの名前を言っていたが、成る程確かに顔立ちは似ておる。…しかし、侵入した人間があのクラージュの息子だと知ったら、ノルもさぞや驚くだろう。…さて。」

シュドは息の無いロイの手から、意識のないゼロを奪いとった。

「ふん、意外に軽いんだな。」

シュドはおもむろにゼロを構えて振り下ろした。

「こんな剣が世界を牛耳る力を持っておるのか。とにかくデヴィルド王様にお持ちせねば。」

シュドはその場で自分の剣を天に掲げると、呪文を唱えて姿を消した。 




その後、突然何者かが倒れているフルールの側に姿を現した。

「…フルール…まだだ。」




デヴィルド王室の前、シュドが姿を現した。

「王、失礼いたします。」

シュドが扉を開け、中に入ると片膝を付いて頭を下げた。

「ただいま戻りました。」

「ご苦労。それで、例の妖剣は?」

シュドは腰に差していたゼロを抜き、デヴィルド王に差し出した。デヴィルド王は受け取ると、剣をまじまじと眺めた。

「…まさか、ゼロか。何故人間ごときがこのような妖剣を持っていたのか。」

「はい、持っていた人間は、あのクラージュの息子でございました。」

その言葉を聞いて、デヴィルド王はノルに視線を送った。当然ノルにも聞こえていたが、ノルは冷静を取り繕っていた。

「ふん。ノル、お前のかたきはシュドが取ったらしい。…して、そのクラージュの息子の首は無いのか?」

シュドは動揺した様子を見せた。

「ふん。まぁいい。」

デヴィルド王の言葉に、シュドは頭を下げ、定位置に戻り歩みを進めた。

「シュド、待て!」

デヴィルド王に呼び止められ、シュドは立ち止まり、恐る恐るデヴィルド王に振り返った。

「このゼロからは、微かだがティアーズストーンのエネルを感じる。だが、何処にも無いのだ。…お主が取ったわけではあるまいな…。」

「ティアーズストーン…め、滅相もございません。申し訳ございません、まさかあの少年がゼロに加えティアーズストーンを持ってるとは思いもしませんでした。」

シュドは片膝を付いて頭を下げながら答えた。

「…まぁよい。ただ、ゼロにティアーズストーンが無いということは…?」

デヴィルド王が睨み付けながら問い掛けた。シュドはその視線に殺気を感じ、固まってしまい、何も答えられなかった。

「…馬鹿か。つまりそのクラージュの息子が持ってるってことじゃないのか!?」

すると、ノルが剣を天に掲げ、シュドの前に瞬間移動し、そのまま剣をシュドの喉に突き付けた。

「我々チュトラリーの名を貶すな。今すぐ戻って、クラージュの息子の首とティアーズストーンを手に入れてこい!」



「…ロイ。…ロイ。」

聞き覚えのある声に呼ばれ、ロイは重い瞼をゆっくりと開いた。

「…ん?…フルー…ル…?」

フルールは、目覚めたロイを見て微笑んで抱き付いた。

「良かった!ロイ!」

「フルール!?」

ロイは驚いて飛び起きた。

「フルール、良かった!…一体どうして?」

ロイの質問にフルールは下を向いて首を横に振った。

「私も分からないの。…目が覚めたら傷一つ無くて…。…ロイは?」

「ボクのはこれさ。」

ロイは首もとからパープルティアーを取り出した。

「これを身に付けてる限り、死んでしまっても666秒後に生き返ることができるんだ。でも、その力は剣に嵌めていたら使えない。…だから意識のないゼロから咄嗟に外したんだけど…。…あれ?ゼロ?」

「…さっきの敵に奪われたってこと?」

「…あいつはゼロを狙ってた。…取り戻さなくちゃ。」

ロイは先行きに不安を感じていたが、フルールの前では冷静を取り繕っていた。
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