勇者と七つの涙

雨木良

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『闇の世界』脱出編 ーオンブル国ー

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シュドが姿を消すと、持ち場に戻ろうとするノルに、デヴィルド王が言った。

「ノル、余り私情を挟むでないぞ。今はティアーズストーンさえ私の手元に来ればよい。」

「…はい、失礼いたしました。」

「まぁよい。しかし、クラージュの息子がこの国に来たのは必然か偶然か…。まぁ既に死んでしまっておる、考えても時間の無駄か…、フハハハハハ。」



シュドは慌ててロイたちを殺した現場に戻った。

「…どういうことだ…。」

そこには、あるはずのロイたちの死体は無く、血だまりだけが残っていた。

シュドは焦りを感じ、消えたロイたちを捜すため、辺りを見回した。すると、目の前に一人の人間の姿が飛び込んできた。

それは、グルトと離れてしまい、偶然この場所に辿り着いたテヒニクだった。

「敵か!?」

テヒニクが剣をシュドに向けながら問い掛けた。

「…また人間か。お前か、あのガキどもの死体を隠したのは。」

「死体?ガキ…、あんたロイたちに何をした!?…シャンジュモン!」

テヒニクは剣身を伸ばし、シュドに斬りかかった。

カキンッ!シュドは咄嗟に剣で受け流した。

「…急に殺しにかかるとは、油断なりませんな。」

「黙れ!」

「全く、日に三人もの人間を殺すことになろうとは。」

シュドは剣の切っ先をテヒニクに向けた。

「…コシュマール。」

すると、切っ先から風が吹き始め、その風は小さな竜巻のように回転し始めた。

「…何だ?」

テヒニクは攻撃に備えて守りの体勢を取った。

すると、竜巻の中心部から突然剣身の形をした風が現れ、テヒニクに向かって襲い掛かってきた。

カキンッ!テヒニクは剣で弾き飛ばした。

「…今のは…。」

剣身が伸びるように現れる攻撃を見て、テヒニクは嫌な予感がした。

「フフフ、今お前が考えてる通りだよ。」

シュドはそう言って、指をパチンッと鳴らした。すると、竜巻が止み、その場所に風によって造られた何かが現れた。

透明なのだが、風の軌道は黙視でき、その軌道でその何かが人の形をしていることに気が付いた。

「自分にとって最大の敵は自分自身である。」

シュドが再び指をパチンッと鳴らすと、人形の風は、再び剣身を伸ばしてテヒニクに斬りかかった。

「くっ、これは私のシャンジュモン…。…どうして、私と同じ剣を…。」

テヒニクは相手の攻撃を躱し、飛び跳ねた。

「シャンジュモン!」

相手の見下ろしながら剣身を伸ばし、相手の眉間に突き刺した。

その瞬間、人の形を造っていた風は散り散りになり、スッと姿を消した。

「ふん。中々やるじゃないか。」

シュドが再び指を鳴らすと、また風が集まり出し、再び風人間を造り上げた。

「今度は姿もお前に似せてやったよ。」

テヒニクの目の前には、背丈も同じ自分自身がいた。

「馬鹿にしやがって。あんたに私の何が分かるんだ!…ダブル!!」

テヒニクは、剣の分身を造り、二刀流で風人間に斬りかかった。

すると、風人間も剣を倍に増やし、二刀流に構えた。

「ちっ、腹立つね!」

「フフフ、どちらのお前が強いかな?」

テヒニクは、風人間に飛び掛かるように斬りかかったが、風人間はさらりと躱した。すると、風人間は、振り向きながら両方の剣の切っ先をテヒニクに向けながら駆け寄り、無言でシャンジュモンを使い、両方の剣身を伸ばした。

カキンッ!「…くっ!」

「フフフ、片方は避けられなかったようだな。」

テヒニクの左肩に剣身が突き刺さり、風人間は無言のまま引き抜いた。

「ぐわぁぁぁあっ!」

テヒニクは余りの痛さに脂汗をかき、震えが止まらなかった。

「痛むだろ?そいつの剣身には、先ほどゼロを黙らせた猛毒が含まれている。…時期に痛みが止む、その時がお前の最期だ。」

テヒニクは段々と呼吸が荒くなり、その場に倒れ込んだ。

シュドは指を鳴らし風人間を消すと、ニヤリと笑い、テヒニクに背を向け歩きだした。
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