ミィとプヨ

雨木良

文字の大きさ
6 / 15

日常6 悪魔がやってきた

「ミィ!!ミィィィィ!!」

飼い主が仕事で留守中の昼間、リビングにプヨの叫び声が響いた。

相変わらずコタツの中で極楽な気分だったミィは、慌てて飛び起き、今までで一番のジャンプ力でプヨの隣に移動した。

「ど、どうしたの!?」

プヨは、ビクビクしながら、ヒレでベランダに通じる窓を差した。ミィはそのヒレが差す方にゆっくり視線を向けた。

すると、真っ黒な塊にギラリと光るビー玉が付いた何かが、二匹に殺気を送っていた。

「ギィアァァァ!!」

さっきのプヨの叫びの何倍ものミィの声が、家中に響き渡った。

「プ~ヨプヨプヨプヨォォ!!」

「名前連呼しないでよ!あ、あいつ何なんだ!?」

二匹は、ビビりながらもその黒い物体を凝視していた。すると、その視線が気に食わなかったのか、黒い物体はバサッと大きな翼を広げた。

「ヒィィッ!あ、悪魔だよ、ミィ!!」

翼を見たプヨが震えながら言った。

「あくま?」

ミィは悪魔という言葉を知らずに、首を傾げた。

「とにかく怖くて悪いヤツだよ!きっとボクらを暗い怖いとこに連れ去ろうとしてるんだ!」

「…プヨ、“悪いヤツ”って考え好きだよね?この前はあのコタツさえも化け物みたいな扱いしてたしさ。」

プヨは、今となってはコタツは単なる暖房器具だということを理解しているが、ミィの言葉に過去の自分を恥じ、ただでさえ赤い身体を更に赤くあせた。

「そ、それはもう関係ないだろ!い、今は目の前のあれに集中しようよ!ほら、コタツと違ってあいつは間違いなく生き物だろ!?」

二匹が更に視線を送ると、黒い物体はバサバサと羽を羽ばたかせ窓ガラスに飛び掛かってきた。

ガツンッ!ガツンッ! 

「ヒィィィ、ミィ…な、何とかしないと。」

「でもガラスがあるから大丈夫でしょ?」

ミィはビビりながらも窓ガラスを肉球で差しながら言った。

「ば、馬鹿ぁ!」

「ひっ!な、何だよプヨ。」

「悪魔をなめちゃダメだよ。きっと、このあと火を吹くよ。その熱で窓ガラスを溶かし、更にはこの部屋にも火を付けて、高笑いしながら去っていくつもりだよ!」

白目を向きながら説明するプヨに、ミィも段々と恐怖心が募ってきた。改めてミィが黒い物体を見つめると、その物体からギロリと光る鋭い眼光がミィをじっと捕らえるように殺気を送っていた。

「ヒィィィ!や、やっぱりプヨの言う通りだぁ!」

そして、次の瞬間、黒い物体は鋭く尖る口をパカッと大きく開いた。

「ミ、ミィ!!くるぞくるぞぉ!」

「火吹くの!?やばいやばい…そだ、水だ!水を用意…あ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ドン!ガチャーン! 

慌てふためいたミィは足を踏み外し、本棚から転げ落ちた。その時、ミィの足が本棚の上に置いてあった手鏡に引っ掛かり、手鏡もミィと一緒に本棚から落下した。

ピカァーン。 

すると、落ちた手鏡が元々床に置いてあったクッションにぶつかり、窓の外の日の光を反射させ、黒い物体に強い光を与えた。

まともに光を喰らった黒い物体は羽をバタつかせ、逃げるように窓ガラスから離れていった。

一部始終を見ていたプヨは、安堵の表情を浮かべた。

「やった! ミィ凄い!悪魔を倒した勇者みたい…あ、でも女の子だから、女の子の勇者だ!…あれ?ミィ?ミィ?」

突然落下したミィは、驚きと悪魔に対する恐怖で、うまく受け身が取れず、床で失神していた。

「あれ、ミィ…?…え、まさか悪魔に何かされたのか!?…あっ!まさか…魂を奪われた…?ヒィィィィィィ。」



二匹の住むマンションの上空では、呑気なカラスがカーカーと鳴いて優雅に飛び回っていた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

さようなら、あなたとはもうお別れです

四季
恋愛
十八の誕生日、親から告げられたアセインという青年と婚約した。 幸せになれると思っていた。 そう夢みていたのだ。 しかし、婚約から三ヶ月ほどが経った頃、異変が起こり始める。