colors -イロカゲ -

雨木良

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第1章 少女と紫色

(1)

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「ごめん。今日行けなくなっちゃった。」

三嶽夏音(みたけかのん)は、地元の高校に通う高校二年生の17歳。

朝礼前。教室の後ろでは、夏音が、自分と同じ美術部のメンバーに謝っていた。今日の放課後、隣町で企画展をしている美術館に皆で一緒に行く約束を断っていた。

「何かあったの?」

美術部で唯一同じクラスの小林奏(こばやしかな)が、心配そうに夏音に聞いた。 

「…大したことじゃないんだけど…その…バイトのシフトを急遽チェンジされちゃって!!」

夏音の表情をじっと見つめながら、隣のクラスの由比環奈(ゆいかんな)が詰め寄るように聞いた。

「…夏音、本当か?なぁんか怪しい…。」

「そ、そ、そんなこと…ないって。」

完全に目を泳がせて、怪しさ満点で答える夏音の姿に、環奈は更に詰め寄った。 

「…男…か?そうだろ夏音!今まで私たちとの約束を破る事なんて無かったのに!!ちぇっ!」

教室の大半に聞こえそうな声量で話す環奈に、夏音と奏は慌てて落ち着かせようとする。

「環奈ちゃん、そんなに怒らなくても…夏音ちゃんは嘘なんて付かないよ。」

天使のように澄んだ声で、環奈を諭す奏。その横で、夏音はキーキー言っている環奈をじっと見ていた。

「……悲しいの?」

夏音がボソッと呟いた。夏音としては無意識で発した言葉だった。

「…へ?」

環奈はスッと大人しくなって、夏音をじっと見て続けた。

「今、何て?」

環奈の言葉に、夏音はハッと我に返った。

「え!?あ、あ、いや、あれ?今私何て言った?」

惚ける演技も大根中の大根の夏音を見て、環奈は呆れて無言で教室を出て、自分の教室へと戻って行った。

環奈が出ていくと、夏音は奏に向かって両手を合わせて頭を下げた。

「奏ちゃん、迷惑かけてごめんね。その…バイトってのは…咄嗟に出ちゃった嘘なんだけど、違う用事があって…。」

「…デート?」

奏は首を傾げながら、透き通った声で聞いた。

「ち、違うよ!私に男の気なんてあるわけないじゃない。今度ちゃんと話すから。」

奏は、また頭を下げた夏音の頭を撫でた。

「いいよ、無理しなくてさ。夏音ちゃんのことが心配なだけだから。話したくなったら話してね。」

奏は、健全な男子ならイチコロであろう笑顔でそう言うと、足早に自席に向かった。夏音も笑顔で答えてみたが、どうも引きつった笑顔になっていた。

「…奏。あんたは凄いな…。」

夏音はボソッとそう呟くと自席に座った。すると、同時に担任の日下部(くさかべ)が教室に入ってきて、朝礼が始まった。

朝礼では、まず日下部が何なら身の上話をし始めているが、考え事をしている夏音の耳には素通りだった。

夏音は、机からそっとB4サイズのノートを取り出し、音を立てないように、ペラペラとページを捲った。暫く捲ると手を止めた。

「これだ。…やっぱりなぁ。悪いことしちゃったなぁ…。」

夏音が見ているノートは、「マル秘 カラー解読」というタイトルが申し訳程度に鉛筆でうっすらと書かれており、中身はページの左半分に様々な色の水彩絵具が3センチ角の四角形に塗られており、その右側に説明が書かれている。

例えば、今夏音が見ているページには、青系の色が五種類塗られており、各色の右側に「自分に対する悲しみ」、「大事な物を無くした悲しみ」、「大事な人を失った悲しみ」など、色に対する説明が書かれている。

これは夏音が物心ついた時から集めた情報を中学生になってから纏めたノートであり、内容は今でも更新し続けている。

それは、夏音の特殊な能力に関することであり、夏音はその能力によって良い思いもしているが、ツラい思いをしていることが多いと感じており、正に今もそうだった。

夏音は自分の特殊な能力が嫌いだった。
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