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第3章 友人とネズミ色
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【小田原駅】
同時刻。
夏音と奏は、早歩きで駅の改札を目指す神楽を追いかける形で歩いていた。
「ねぇ、神楽。どうしたの?さっきスマホ見てから変だよ。」
後ろから奏が質問しても、神楽は振り返ることなく歩くのを止めなかった。
だが、神楽は、自分が乗る鉄道の改札の前まで行くと、立ち止まりゆっくり振り返った。
「…奏、ありがとう。もう大丈夫だから。」
「神楽…あなた泣いて…。」
「大丈夫!…本当に。奏の優しさが嬉しかっただけよ。ちゃんと帰れるから、ここで。奏たちは別の電車でしょ。」
涙声の神楽を奏は心配したが、神楽は声を張って奏を遠ざけた。
「神楽さん…あなた本当に大丈夫?」
夏音が奏より一歩前に出ながら神楽に聞いた。神楽のイロカゲが、黒い近い青色と紫色を交互に点滅するように変化を続けていた。複雑な感情を抱いていると夏音は理解した。夏音は更に続けた。
「…もう死のうとか考えないですよね?」
夏音の問い掛けに神楽は、涙を拭きながら笑顔で答えた。
「当ったり前じゃない!ありがとう、三嶽さんも。」
そう答えた神楽のイロカゲはネズミ色だった。
「神楽さん、あなた…」
「夏音ちゃん、もう行こう。」
夏音は、このままじゃいけないと思い、とりあえず神楽を一人にしないように、場を繋ぐ質問を考えながら話し出したが、途中で奏が夏音の腕を掴み、この場を去ろうとした。
「奏?…ちょ、ちょっと待って!神楽さんが!」
夏音が抵抗したが、奏は掴んだ手の力を緩めることなく、神楽からどんどんと離れていった。夏音は、腕を引かれながらも神楽の方を見つめていたが、神楽は棒立ちのまま、何も言葉を発しなかった。
「か、神楽さん!!」
夏音は既に遠くに見える神楽に向かって大声で呼び掛けたが、神楽は何も言わずに改札の中へと入って行った。嫌な予感がした夏音は、腕時計で時間を確認し、コンコース内の電光掲示板を見た。
「…5分後。奏!神楽さん死んじゃうよ!」
夏音は、無理矢理、自分を掴んでいた奏の手を振りほどいた。
「…夏音ちゃん…。」
夏音に振り返った奏は泣いていた。
「奏?どうしたの?どうして、神楽さんを置いて…。」
「…もう、私にはあの子が分かんなくて…。」
奏はその場で崩れ落ちるように座り込み、声を出しながら泣いた。
「…奏。」
夏音は、奏のツラい心情を理解した。奏のイロカゲは、混乱を表す黒に近いグレーをしていたからだ。ビルの屋上では、問題が解決しそうな所までいったのに、よく分からない理由でまた振り出しのような事態になり、更には、涙を流しながら、自分は大丈夫だからと明らかな嘘をつく友人に、一体何をしてあげたら良いのか、出来る限りの事を尽くしたつもりが全く響いていない現実に、奏は限界だったのだろうと、夏音は悟った。
コンコースの真ん中で、声を出して泣いている女子高生がいたら、嫌でも目立つ状況の中で、何人かの年配の女性やら、会社帰り風の男性らが夏音に声を掛けてきた。
夏音は、ハッと神楽に対しての嫌な予感を思い出し、声を掛けてくれた人たちに頭を下げた。
「す、すみません!直ぐに戻りますので、この子お願いします!」
年配の女性が頷くのを見て、夏音は神楽の入って行った改札に全速力で向かった。走りながら、チラリと改札近くの時計を見た。
「あと2分!?」
夏音は、神楽の乗る鉄道の定期券は持っていないが、切符を買ってる余裕もないので、無我夢中で改札を飛び越えた。当然アラーム音がなり、気付いた駅員が改札に飛び出して来た。
「こら!君、止まりなさい!!」
駅員の呼び掛けを無視して夏音は、電車が来る下りのホームへとエスカレーターを駆け下りた。
(…きっと、電車が入ってくる方の先端だ…。)
この駅は、急行も特急も停車する駅。電車が一番スピードが出てる状態の位置は、電車が入ってくる方のホームの先端。
夏音は、エスカレーターを下りる最中に、そう考え、神楽はホームの先端にいると踏んだのだ。
夏音は、エスカレーターを下りてからも止まることなく走り続けた。
「き、君!止まりなさい!誰か、その女子高生を止めて!」
夏音の後方から駅員が追いかけて来ていた。
「ピンポンパン…間もなく5番線に電車が到着します。」
電車の到着を告げるアナウンスがホームに響いた。
(はぁ…はぁ…ヤバい息が…。)
運動部でもない夏音は、体力の限界が来ていた。だが、ホームの先端までは、まだ30メートルほどあり、まだ人がいるかどうかも見れない位置だった。
夏音は、息を切らしながらも走るのを止めなかったが、明らかにスピードは失速していた。追いかけて来る駅員の声もどんどん大きくなってる事に気付いていたが、振り向く余裕はなかった。
更に10メートル程走ると障害物がなくなり、ホームの先端まで見れる位置まで来た。
「…神楽さん?…神楽さぁん!!!」
夏音の目にはホームの先端で、線路スレスレの位置に立っている神楽の姿が目に入った。夏音は、大声で叫んだが、神楽には声が届いていなかった。
「神楽さぁん!!!」
もう一度叫んだその時、神楽の向かう側、カーブしている線路から煌々とライトを照らした電車の姿が見えた。電車のライトで逆光となり、神楽の姿はシルエットのように映った。
(…ヤバい!)
夏音がそう思った時、駅員が追い付き夏音の肩を掴んだ。
「こいつ!!」
「キャッ!!」
掴まれた際に、足を絡め夏音と駅員は、倒れてしまった。
「痛ててて。…ハッ。」
転んだ夏音が顔をあげると、数メートル先に電車のライトが大きく見え、正に神楽が線路に飛び込もうする瞬間だった。
「神楽さぁぁぁぁん!!」
同時刻。
夏音と奏は、早歩きで駅の改札を目指す神楽を追いかける形で歩いていた。
「ねぇ、神楽。どうしたの?さっきスマホ見てから変だよ。」
後ろから奏が質問しても、神楽は振り返ることなく歩くのを止めなかった。
だが、神楽は、自分が乗る鉄道の改札の前まで行くと、立ち止まりゆっくり振り返った。
「…奏、ありがとう。もう大丈夫だから。」
「神楽…あなた泣いて…。」
「大丈夫!…本当に。奏の優しさが嬉しかっただけよ。ちゃんと帰れるから、ここで。奏たちは別の電車でしょ。」
涙声の神楽を奏は心配したが、神楽は声を張って奏を遠ざけた。
「神楽さん…あなた本当に大丈夫?」
夏音が奏より一歩前に出ながら神楽に聞いた。神楽のイロカゲが、黒い近い青色と紫色を交互に点滅するように変化を続けていた。複雑な感情を抱いていると夏音は理解した。夏音は更に続けた。
「…もう死のうとか考えないですよね?」
夏音の問い掛けに神楽は、涙を拭きながら笑顔で答えた。
「当ったり前じゃない!ありがとう、三嶽さんも。」
そう答えた神楽のイロカゲはネズミ色だった。
「神楽さん、あなた…」
「夏音ちゃん、もう行こう。」
夏音は、このままじゃいけないと思い、とりあえず神楽を一人にしないように、場を繋ぐ質問を考えながら話し出したが、途中で奏が夏音の腕を掴み、この場を去ろうとした。
「奏?…ちょ、ちょっと待って!神楽さんが!」
夏音が抵抗したが、奏は掴んだ手の力を緩めることなく、神楽からどんどんと離れていった。夏音は、腕を引かれながらも神楽の方を見つめていたが、神楽は棒立ちのまま、何も言葉を発しなかった。
「か、神楽さん!!」
夏音は既に遠くに見える神楽に向かって大声で呼び掛けたが、神楽は何も言わずに改札の中へと入って行った。嫌な予感がした夏音は、腕時計で時間を確認し、コンコース内の電光掲示板を見た。
「…5分後。奏!神楽さん死んじゃうよ!」
夏音は、無理矢理、自分を掴んでいた奏の手を振りほどいた。
「…夏音ちゃん…。」
夏音に振り返った奏は泣いていた。
「奏?どうしたの?どうして、神楽さんを置いて…。」
「…もう、私にはあの子が分かんなくて…。」
奏はその場で崩れ落ちるように座り込み、声を出しながら泣いた。
「…奏。」
夏音は、奏のツラい心情を理解した。奏のイロカゲは、混乱を表す黒に近いグレーをしていたからだ。ビルの屋上では、問題が解決しそうな所までいったのに、よく分からない理由でまた振り出しのような事態になり、更には、涙を流しながら、自分は大丈夫だからと明らかな嘘をつく友人に、一体何をしてあげたら良いのか、出来る限りの事を尽くしたつもりが全く響いていない現実に、奏は限界だったのだろうと、夏音は悟った。
コンコースの真ん中で、声を出して泣いている女子高生がいたら、嫌でも目立つ状況の中で、何人かの年配の女性やら、会社帰り風の男性らが夏音に声を掛けてきた。
夏音は、ハッと神楽に対しての嫌な予感を思い出し、声を掛けてくれた人たちに頭を下げた。
「す、すみません!直ぐに戻りますので、この子お願いします!」
年配の女性が頷くのを見て、夏音は神楽の入って行った改札に全速力で向かった。走りながら、チラリと改札近くの時計を見た。
「あと2分!?」
夏音は、神楽の乗る鉄道の定期券は持っていないが、切符を買ってる余裕もないので、無我夢中で改札を飛び越えた。当然アラーム音がなり、気付いた駅員が改札に飛び出して来た。
「こら!君、止まりなさい!!」
駅員の呼び掛けを無視して夏音は、電車が来る下りのホームへとエスカレーターを駆け下りた。
(…きっと、電車が入ってくる方の先端だ…。)
この駅は、急行も特急も停車する駅。電車が一番スピードが出てる状態の位置は、電車が入ってくる方のホームの先端。
夏音は、エスカレーターを下りる最中に、そう考え、神楽はホームの先端にいると踏んだのだ。
夏音は、エスカレーターを下りてからも止まることなく走り続けた。
「き、君!止まりなさい!誰か、その女子高生を止めて!」
夏音の後方から駅員が追いかけて来ていた。
「ピンポンパン…間もなく5番線に電車が到着します。」
電車の到着を告げるアナウンスがホームに響いた。
(はぁ…はぁ…ヤバい息が…。)
運動部でもない夏音は、体力の限界が来ていた。だが、ホームの先端までは、まだ30メートルほどあり、まだ人がいるかどうかも見れない位置だった。
夏音は、息を切らしながらも走るのを止めなかったが、明らかにスピードは失速していた。追いかけて来る駅員の声もどんどん大きくなってる事に気付いていたが、振り向く余裕はなかった。
更に10メートル程走ると障害物がなくなり、ホームの先端まで見れる位置まで来た。
「…神楽さん?…神楽さぁん!!!」
夏音の目にはホームの先端で、線路スレスレの位置に立っている神楽の姿が目に入った。夏音は、大声で叫んだが、神楽には声が届いていなかった。
「神楽さぁん!!!」
もう一度叫んだその時、神楽の向かう側、カーブしている線路から煌々とライトを照らした電車の姿が見えた。電車のライトで逆光となり、神楽の姿はシルエットのように映った。
(…ヤバい!)
夏音がそう思った時、駅員が追い付き夏音の肩を掴んだ。
「こいつ!!」
「キャッ!!」
掴まれた際に、足を絡め夏音と駅員は、倒れてしまった。
「痛ててて。…ハッ。」
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「神楽さぁぁぁぁん!!」
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