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第4章 父親と黒色
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「…もしもし。」
夏音は、茜に聞こえないように、小さな声で電話に出た。
「夏音。久しぶりだな。元気してたか?」
夏音は、彰の声に違和感を覚えた。
「う、うん。…どうしたの?もう3年ぶりくらいだよね、こうして話すの。」
「いや、ニュースで夏音の学校の事件が取り上げられているのを見て、お前の事が気になってな。…でも大丈夫そうだな。父さん安心したよ。…急に電話来ても困るよな?」
「………。」
夏音は沈黙した。
「…そうだよな、悪かった。お前が無事なら良いんだ。じゃあ…。」
「…待って!」
冷たい夏音の反応に、夏音の気持ちを察した彰は電話を切ろうとしたが、夏音がそれを止めた。
「…夏音?」
「父さん、何かあったの?…その、声が前と違うと言うか…元気がないというか。」
「………。」
今度は彰が沈黙した。
「学校の事件は、私は大丈夫よ。ありがとう。」
彰は長い沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。
「…夏音。…明日学校の後に少し会えないか?」
「…え?」
夏音は、まず茜のことを考えた。
彰と茜が別れたのは、夏音が中学一年生の時だった。二人が別れた理由は、実は夏音は知らなかった。
中学一年生の夏休み中のある夜、姉の愛弓と夏音は、両親に呼ばれ、ダイニングテーブルに四人が座ると、彰からサラリと離婚することが告げられた。茜は申し訳なさそうに下を向き、涙を流していた。
告げられた二人は、驚きで何も言えなかった。何故なら、両親が不仲とは、これっぽっちも思ってなく、そんな素振りを一瞬も感じたことがなかったからだ。素振りが無かったので、夏音はイロカゲを確める事もしなかった。
愛弓は、彰を見つめたまま放心状態で、夏音は、息が詰まるような思いで、涙を流していた。
娘二人から一言も返事がない中、彰は聞いた。
「理由を聞きたいか?」
夏音と愛弓は目を見合わせたが、二人の考えは一つだった。
「…聞きたくない。」
どんな理由で両親が別れようとも、二人にとっては大好きで最高な両親であり、そのイメージを壊すような話は聞きたくなかったのだ。
「…そうか。すまないな。」
彰は二人に頭を下げた。その後、どちらと一緒に暮らしたいかを考えといて欲しいと、淡々と彰は説明した。
愛弓は、余りに早々と事を進ませる彰に腹が立ち、机をバンッと叩き、部屋を飛び出し、二階の自室に駆けていった。
夏音は、何故自分の家庭がこんなことに、人生最悪な一日だと、悲観する事で精一杯だった。
「…悪いが明日答えをくれ。」
涙を流しすぎて、過呼吸気味な夏音に対し、彰はそう言って部屋を出て行き、そのまま玄関からも出て行ったと思わせる扉の開閉の音が聞こえた。
その間、茜は下を向いたまま、何も話さなかった。
夏音は、茜に話し掛ける言葉が見つからず、ゆっくり席を立ち上がり、二階の愛弓の部屋を覗いた。
愛弓は、ベッドで布団にくるまり、声を殺して泣いていた。
「…お、お姉ちゃん…。」
夏音の声で、布団からゆっくり顔を出した愛弓は、夏音の姿を見ると、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を見られなくないのか、ベッド脇に置いてあったティッシュを五、六枚掴み、顔を隠しながら答えた。
「…何でこうなったのよ。」
愛弓の言葉は、夏音の思いでもあり、先に言われてしまったと夏音は思った。夏音の答えがないまま、愛弓はティッシュで顔を綺麗に拭きながら続けた。
「父さん…出ていったみたいね。…はぁぁぁ。…夏音はどうするの?」
「…どっちに付いていくかって話?」
愛弓はコクンと頷いた。
この答えは、何故か夏音の頭の中では直ぐに固まっていた。
「…私は…母さんかな。」
「…そう。私は、まだもう少し考えるね。」
夏音は、愛弓もてっきり母さんと答えると思っていたため、驚いたと同時に不安が過った。
「ね、ねぇ。…お姉ちゃんともバラバラ…になっちゃうかもしれないの?」
「わかんない!!」
夏音の涙声での問いに、愛弓は声を張って答え、また布団に頭ごとくるまった。愛弓も、当たり前だが、頭の中は混乱の文字しかなかった。
ただ、両親二人に優劣なんて付けられず、妹が母親を選ぶなら、自分は姉として父親を選ぶのが良いのか…。後は、二人が何とか離婚せずに済む方法は何かないのか…。
今すぐに答えは出なかった。
「…夏音、ごめん。今は一人にして。」
愛弓は、布団から顔を出すことなく、夏音に言った。夏音は、声を出して泣きながら、愛弓の部屋を出ていった。
しょうがなく自分の部屋に来た夏音は、部屋の電気は付けずに、勉強机に座り、顔を伏せながら泣いた。
一頻り涙を流すと、まだ何も解決してないにも関わらず、何故か少しスッキリした気がして、伏せていた顔を上げた。
真っ暗な部屋の中、徐に机に備え付けてあるライトを付けると、正面に飾ってあった家族四人で写した写真が目に飛び込んできた。
数ヶ月前、夏音の中学校入学の日に撮った、茜も彰も、夏音の入学を喜び、満面の笑みで微笑んでいる写真。
「…戻れないの…かな。」
夏音は、写真の中の両親二人に、ぼそりと聞いた。
夏音は、茜に聞こえないように、小さな声で電話に出た。
「夏音。久しぶりだな。元気してたか?」
夏音は、彰の声に違和感を覚えた。
「う、うん。…どうしたの?もう3年ぶりくらいだよね、こうして話すの。」
「いや、ニュースで夏音の学校の事件が取り上げられているのを見て、お前の事が気になってな。…でも大丈夫そうだな。父さん安心したよ。…急に電話来ても困るよな?」
「………。」
夏音は沈黙した。
「…そうだよな、悪かった。お前が無事なら良いんだ。じゃあ…。」
「…待って!」
冷たい夏音の反応に、夏音の気持ちを察した彰は電話を切ろうとしたが、夏音がそれを止めた。
「…夏音?」
「父さん、何かあったの?…その、声が前と違うと言うか…元気がないというか。」
「………。」
今度は彰が沈黙した。
「学校の事件は、私は大丈夫よ。ありがとう。」
彰は長い沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。
「…夏音。…明日学校の後に少し会えないか?」
「…え?」
夏音は、まず茜のことを考えた。
彰と茜が別れたのは、夏音が中学一年生の時だった。二人が別れた理由は、実は夏音は知らなかった。
中学一年生の夏休み中のある夜、姉の愛弓と夏音は、両親に呼ばれ、ダイニングテーブルに四人が座ると、彰からサラリと離婚することが告げられた。茜は申し訳なさそうに下を向き、涙を流していた。
告げられた二人は、驚きで何も言えなかった。何故なら、両親が不仲とは、これっぽっちも思ってなく、そんな素振りを一瞬も感じたことがなかったからだ。素振りが無かったので、夏音はイロカゲを確める事もしなかった。
愛弓は、彰を見つめたまま放心状態で、夏音は、息が詰まるような思いで、涙を流していた。
娘二人から一言も返事がない中、彰は聞いた。
「理由を聞きたいか?」
夏音と愛弓は目を見合わせたが、二人の考えは一つだった。
「…聞きたくない。」
どんな理由で両親が別れようとも、二人にとっては大好きで最高な両親であり、そのイメージを壊すような話は聞きたくなかったのだ。
「…そうか。すまないな。」
彰は二人に頭を下げた。その後、どちらと一緒に暮らしたいかを考えといて欲しいと、淡々と彰は説明した。
愛弓は、余りに早々と事を進ませる彰に腹が立ち、机をバンッと叩き、部屋を飛び出し、二階の自室に駆けていった。
夏音は、何故自分の家庭がこんなことに、人生最悪な一日だと、悲観する事で精一杯だった。
「…悪いが明日答えをくれ。」
涙を流しすぎて、過呼吸気味な夏音に対し、彰はそう言って部屋を出て行き、そのまま玄関からも出て行ったと思わせる扉の開閉の音が聞こえた。
その間、茜は下を向いたまま、何も話さなかった。
夏音は、茜に話し掛ける言葉が見つからず、ゆっくり席を立ち上がり、二階の愛弓の部屋を覗いた。
愛弓は、ベッドで布団にくるまり、声を殺して泣いていた。
「…お、お姉ちゃん…。」
夏音の声で、布団からゆっくり顔を出した愛弓は、夏音の姿を見ると、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を見られなくないのか、ベッド脇に置いてあったティッシュを五、六枚掴み、顔を隠しながら答えた。
「…何でこうなったのよ。」
愛弓の言葉は、夏音の思いでもあり、先に言われてしまったと夏音は思った。夏音の答えがないまま、愛弓はティッシュで顔を綺麗に拭きながら続けた。
「父さん…出ていったみたいね。…はぁぁぁ。…夏音はどうするの?」
「…どっちに付いていくかって話?」
愛弓はコクンと頷いた。
この答えは、何故か夏音の頭の中では直ぐに固まっていた。
「…私は…母さんかな。」
「…そう。私は、まだもう少し考えるね。」
夏音は、愛弓もてっきり母さんと答えると思っていたため、驚いたと同時に不安が過った。
「ね、ねぇ。…お姉ちゃんともバラバラ…になっちゃうかもしれないの?」
「わかんない!!」
夏音の涙声での問いに、愛弓は声を張って答え、また布団に頭ごとくるまった。愛弓も、当たり前だが、頭の中は混乱の文字しかなかった。
ただ、両親二人に優劣なんて付けられず、妹が母親を選ぶなら、自分は姉として父親を選ぶのが良いのか…。後は、二人が何とか離婚せずに済む方法は何かないのか…。
今すぐに答えは出なかった。
「…夏音、ごめん。今は一人にして。」
愛弓は、布団から顔を出すことなく、夏音に言った。夏音は、声を出して泣きながら、愛弓の部屋を出ていった。
しょうがなく自分の部屋に来た夏音は、部屋の電気は付けずに、勉強机に座り、顔を伏せながら泣いた。
一頻り涙を流すと、まだ何も解決してないにも関わらず、何故か少しスッキリした気がして、伏せていた顔を上げた。
真っ暗な部屋の中、徐に机に備え付けてあるライトを付けると、正面に飾ってあった家族四人で写した写真が目に飛び込んできた。
数ヶ月前、夏音の中学校入学の日に撮った、茜も彰も、夏音の入学を喜び、満面の笑みで微笑んでいる写真。
「…戻れないの…かな。」
夏音は、写真の中の両親二人に、ぼそりと聞いた。
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