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第4章 父親と黒色
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夏音は、いつの間にか眠っていた。
新聞配達のバイクの音で目が覚めた時は、もう窓の外はうっすら明るくなっていた。夏音が、むくっと上体を起こすと、バサッと何かが床に落ちた。夏音は、直ぐに床に視線を向けた。
「…母さん。」
床に落ちていたのは、母がいつも使っているタオルケットだった。夏音は、座ったまま手を伸ばしてタオルケットを拾い上げた。
ふと、自分のベッドに目を向けると、いつも自分が使ってあるタオルケットは、そのまま無造作に置かれていた。
夏音は、目が覚めたついでに、トイレに行こうと部屋を出て、廊下の奥にあるトイレを目指し、愛弓の部屋の前を通り掛かった。
夏音は、閉まっている愛弓の部屋のドアに耳を当てて、中の様子を伺った。勿論、普通なら寝ている時間であるため、物音ひとつしなかった。
夏音がトイレを済ましドアを開けると、目の前に茜の姿があった。
「ひゃっ!!!」
夏音は驚いて声を出し、尻餅を付いてしまった。
「…母さん。びっくりしたなぁ、もう。」
「あゆが…愛弓がいないの…。夏音ちゃん、知ってる?」
茜は、泣きながらそう言うと、夏音の手を引いて立ち上がらせて、愛弓の部屋へとゆっくり引っ張っていった。
茜がドアを開けると、ベランダへ通ずる窓が全開で、優しい風がカーテンを内側に揺らしていた。夏音は、月明かりで照らされた部屋の真ん中、ちゃぶ台型のテーブルに置いてある紙を見つけ、手に取った。
紙を裏返すと、『父さんの所にいます。心配しないで。夏音、母さんをよろしくね。』と書かれていた。
「…お姉ちゃんの字だ。」
夏音は、筆跡を見て呟いた。茜は、その手紙を見て、その場で力が抜けたように足から崩れ落ちた。
『母さんをよろしくね。』ということは、愛弓は父親に付いていくことを決めたという理解で良いのかと夏音は悩み、結局仲の良かった姉妹もバラバラになってしまうという現実に、まだ中学生の夏音の心は耐えきれそうに無かった。
頭が混乱しているせいか、悲しいが涙は出なかったが、夏音もその場で力が抜けたように座り込み、茜の肩にもたれ掛かった。
「…母さん。あの…。」
「夏音。こんなことになって、ごめんなさい。ごめんなさい。謝って済む話じゃないのは分かってるわ。…でも、ごめんなさい。本当に…。」
茜は、ひたすら土下座をしながら夏音に謝った。
「か、母さん。止めてよ、土下座なんか!」
こんな母親の姿を見たくなかった夏音は、必死に茜を止めた。
「大丈夫。私はいつだって母さんと一緒にいるから。…きっと、お姉ちゃんは、私のために父さんを選んだのよ。」
夏音の言葉に、茜は頭をゆっくり上げた。夏音の言葉の意味が理解できなかった茜は、夏音の顔を真ん丸の目で見つめた。
「…私もお姉ちゃんも、本当は母さんか父さん、どちらか一人なんて選べないよ。だって、二人とも大好きで大切な家族だもん。…でも、昨日の夜、私は母さんを選ぶかもってお姉ちゃんに言ったの。…だから、父さんを一人にさせないために、お姉ちゃんは父さんを選んだんだと思う。父さんやお姉ちゃんと一生会えない訳じゃないでしょ?…だから、私は大丈夫よ。母さん。」
涙を浮かべながら、無理に微笑んで話す夏音に、茜は胸がいっぱいになり、強く夏音を抱き寄せた。
「…理由、聞かないの…?」
夏音の耳元で囁くように茜が言った。
「ううん、聞かないよ。…母さん、大好きよ。」
茜は、より一層強く夏音を抱き締めて、静かに涙を流した。
その後、夏音が愛弓に会えたのは一ヶ月も先だった。
【現在】
明日、少し会うことはできないかという彰の問いに、暫く沈黙してしまっていた夏音。
「…無理…だよな。すまん、今のは忘れ…。」
「会う!!…会えるよ。明日、学校休みだから。いつでも大丈夫。」
彰が諦めて、電話を終わらせようとした事に気付いた夏音は、言葉を被せるように答えた。
「いいのか?ありがとう。父さん嬉しいよ。」
やはり、彰の声は以前の声とは違う気がして、夏音はその事が心配でしょうがなかった。
「10時くらいに駅にいるから。それでいい?」
「あぁ、分かった。何年ぶりだろうな。夏音、父さん見てわかるかな?」
「…母さんには、内緒で行くから。」
彰の問いには答えず、夏音は暗い声で言った。夏音は、自分が彰に会うことを茜は良くは思わないだろうと思ったからだ。実際、自分の知る限り、両親は離婚後、一度も会ってない。未だに二人が離婚した理由は分からないが、夏音は彰に何か問題があったのではないかと推測していた。
「…あぁ。悪いな、気を遣わせて。じゃあ、明日な。おやすみなさい。」
「おやすみ。」
会話が終わっても、彰からは中々電話を切ろうとしなかったので、夏音から電話を切った。
「ふぅ。」
夏音は、久しぶりの彰との電話で、緊張していたのか、力が抜けたような気がした。
夏音は、スマホをベッドに放るように置くと、急に茜のことが気になって、リビングを目指して一階へと下りていった。
新聞配達のバイクの音で目が覚めた時は、もう窓の外はうっすら明るくなっていた。夏音が、むくっと上体を起こすと、バサッと何かが床に落ちた。夏音は、直ぐに床に視線を向けた。
「…母さん。」
床に落ちていたのは、母がいつも使っているタオルケットだった。夏音は、座ったまま手を伸ばしてタオルケットを拾い上げた。
ふと、自分のベッドに目を向けると、いつも自分が使ってあるタオルケットは、そのまま無造作に置かれていた。
夏音は、目が覚めたついでに、トイレに行こうと部屋を出て、廊下の奥にあるトイレを目指し、愛弓の部屋の前を通り掛かった。
夏音は、閉まっている愛弓の部屋のドアに耳を当てて、中の様子を伺った。勿論、普通なら寝ている時間であるため、物音ひとつしなかった。
夏音がトイレを済ましドアを開けると、目の前に茜の姿があった。
「ひゃっ!!!」
夏音は驚いて声を出し、尻餅を付いてしまった。
「…母さん。びっくりしたなぁ、もう。」
「あゆが…愛弓がいないの…。夏音ちゃん、知ってる?」
茜は、泣きながらそう言うと、夏音の手を引いて立ち上がらせて、愛弓の部屋へとゆっくり引っ張っていった。
茜がドアを開けると、ベランダへ通ずる窓が全開で、優しい風がカーテンを内側に揺らしていた。夏音は、月明かりで照らされた部屋の真ん中、ちゃぶ台型のテーブルに置いてある紙を見つけ、手に取った。
紙を裏返すと、『父さんの所にいます。心配しないで。夏音、母さんをよろしくね。』と書かれていた。
「…お姉ちゃんの字だ。」
夏音は、筆跡を見て呟いた。茜は、その手紙を見て、その場で力が抜けたように足から崩れ落ちた。
『母さんをよろしくね。』ということは、愛弓は父親に付いていくことを決めたという理解で良いのかと夏音は悩み、結局仲の良かった姉妹もバラバラになってしまうという現実に、まだ中学生の夏音の心は耐えきれそうに無かった。
頭が混乱しているせいか、悲しいが涙は出なかったが、夏音もその場で力が抜けたように座り込み、茜の肩にもたれ掛かった。
「…母さん。あの…。」
「夏音。こんなことになって、ごめんなさい。ごめんなさい。謝って済む話じゃないのは分かってるわ。…でも、ごめんなさい。本当に…。」
茜は、ひたすら土下座をしながら夏音に謝った。
「か、母さん。止めてよ、土下座なんか!」
こんな母親の姿を見たくなかった夏音は、必死に茜を止めた。
「大丈夫。私はいつだって母さんと一緒にいるから。…きっと、お姉ちゃんは、私のために父さんを選んだのよ。」
夏音の言葉に、茜は頭をゆっくり上げた。夏音の言葉の意味が理解できなかった茜は、夏音の顔を真ん丸の目で見つめた。
「…私もお姉ちゃんも、本当は母さんか父さん、どちらか一人なんて選べないよ。だって、二人とも大好きで大切な家族だもん。…でも、昨日の夜、私は母さんを選ぶかもってお姉ちゃんに言ったの。…だから、父さんを一人にさせないために、お姉ちゃんは父さんを選んだんだと思う。父さんやお姉ちゃんと一生会えない訳じゃないでしょ?…だから、私は大丈夫よ。母さん。」
涙を浮かべながら、無理に微笑んで話す夏音に、茜は胸がいっぱいになり、強く夏音を抱き寄せた。
「…理由、聞かないの…?」
夏音の耳元で囁くように茜が言った。
「ううん、聞かないよ。…母さん、大好きよ。」
茜は、より一層強く夏音を抱き締めて、静かに涙を流した。
その後、夏音が愛弓に会えたのは一ヶ月も先だった。
【現在】
明日、少し会うことはできないかという彰の問いに、暫く沈黙してしまっていた夏音。
「…無理…だよな。すまん、今のは忘れ…。」
「会う!!…会えるよ。明日、学校休みだから。いつでも大丈夫。」
彰が諦めて、電話を終わらせようとした事に気付いた夏音は、言葉を被せるように答えた。
「いいのか?ありがとう。父さん嬉しいよ。」
やはり、彰の声は以前の声とは違う気がして、夏音はその事が心配でしょうがなかった。
「10時くらいに駅にいるから。それでいい?」
「あぁ、分かった。何年ぶりだろうな。夏音、父さん見てわかるかな?」
「…母さんには、内緒で行くから。」
彰の問いには答えず、夏音は暗い声で言った。夏音は、自分が彰に会うことを茜は良くは思わないだろうと思ったからだ。実際、自分の知る限り、両親は離婚後、一度も会ってない。未だに二人が離婚した理由は分からないが、夏音は彰に何か問題があったのではないかと推測していた。
「…あぁ。悪いな、気を遣わせて。じゃあ、明日な。おやすみなさい。」
「おやすみ。」
会話が終わっても、彰からは中々電話を切ろうとしなかったので、夏音から電話を切った。
「ふぅ。」
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