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最終章 先生と透明
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【小田原市立病院前】
病院前のバス停に到着し、夏音はバスを下車した。夏音は、愛弓に対する複雑な気持ちで胸がいっぱいで、今すぐ来のお見舞いに行く気が起きずに、少し周りを散歩することにした。
夏音は頭の中で考えた。
イロカゲという能力は、良いものなのか、はたまた余計なものなのかを。夏音自身は、イロカゲによって様々な体験をしてきた。この数日を例に見てみると、イロカゲが無ければ、周りの人たちの負の気持ちを知ることはなかったし、片倉の妊娠に気が付くこともなかった。つまりイロカゲは邪魔な存在だ。
だが、イロカゲが無ければ、神楽は死んでいたかもしれない。あの時、神楽のイロカゲを見たから、結果的に来が神楽を助けた結末になったからだ。それから、父親が自分と過ごした時間に幸せを感じてくれたことが、文字通り目に見ることができた。彰を急に失った夏音にとって、それは最大の励みだった。つまり、イロカゲは良い行いもしているのだ。
では、そのイロカゲの能力を他人が持っていたらどうなのだろうか。
愛弓はこの能力を凄いことだと言ってくれた。さっき、森末も世間が注目するようなことを言っていた。
つまり、“本当に特別な能力”なんだと、夏音は改めて思った。
夏音にとっては、物心付いた時から自然と備わっていた能力で、今まで他人に知られることもなく、他人からこの能力について評価を貰ったことがなかった。
すると、今度は、“何故自分にだけ、この能力が備わったのか”と考えた。夏音の感覚的に、彰や茜、愛弓にはこの能力がなく、遺伝とかではないと思った。
「…何か原因があったのかな。」
夏音が、そんなひとり言を呟きながら下を向いて歩いていると、正面から歩いてきた人とぶつかってしまった。夏音は、慌てて顔を上げて謝ろうとした。
「あ、すみません!ぼーっとしちゃって…朝倉先生。」
「…三嶽か。」
ぶつかった人物は朝倉だった。どうやら朝倉もスマホの画面を見ながら歩いていたようで、お互いに謝った。
「先生、今日学校は?」
「学校って、朝礼で…あ、三嶽は今日休みだったか。」
「……?」
また学校で何かあったのかと、夏音は不安そうな表情で朝倉を見た。
「ちょっといいか?そうだな、病院の外のベンチで話すのはどうだ?」
この後、来の見舞いで病院に戻る予定だった夏音は、コクンと頷いた。二人は病院に向かって歩き出した。
「そう言えば、お父さん亡くなったんだってな。…まだ若いのに残念だな。精神的に大丈夫なのか?というか、何してんだ、こんなところで。」
「佐藤くんのお見舞に…。父親については、しばらく会ってなかったんで…まだそんなに実感が湧かないというか…。」
「あぁ、佐藤来か。今朝連絡があって、状態を聞いたが、まだ目覚めてないそうだ。この学校も大変な事態になったな。」
会話をしている内に市立病院に着き、調度空いていたベンチに二人で腰掛けた。
「さっきの話だけどな、三嶽の担任の日下部が殺人容疑で捕まって、白井教頭が昨夜自殺した。…今朝は朝礼で、校長が事情を話して、また臨時休校になったよ。…どうやら、佐藤の怪我は日下部が絡んでいるようだった。」
淡々と話す朝倉に、夏音は思考が付いていけなかった。夜中の奏からの電話では、彼女は混乱していたのか、来が怪我をして救急車で運ばれたことだけを繰り返していた。詳しい話は、また落ち着いたら聞こうと思っていたが、あれから電話も繋がらずに今に至る。
まさか、自分の担任が来をそんな目にあわせていたとは想像もつかず、更には教頭の自殺と、環奈の自殺から幾日も経たないうちに、まるで学校が呪われているのかと考えてしまうような出来事の連続に、夏音は言葉にならなかった。
下を向いたままの夏音を察し、返答を待たずに朝倉が続けた。
「…正直、教師たちも困惑してるよ。…それから、今はここだけの話にしておいて欲しいが、由比環奈の自殺に、教頭らが絡んでいたようだ。先ほど、警察から事情聴取を受けてね。その時に、逆に聞き出した情報だ。」
「え?教頭が環奈の事件に?どういうことです?」
衝撃の内容に、夏音は顔を上げた。
「教頭のお子さん、彩未ちゃんずっと休んでるだろ?…環奈の絵画ばかりが評価されることに、自信を喪失して、学校に行くこともできないほど、心を病んでるらしい。…教頭から直接聞いたわけじゃないが、似たような話を教頭としたばかりでね。」
「つまり、教頭が彩未ちゃんのために、環奈を自殺に追い込んだってことですか?」
夏音は、自分の言っている内容が間違っていて欲しいと思いながら、朝倉に聞いた。朝倉は、夏音の目をじっと見つめて、頷いた。
「…そんな。確かに彩未ちゃんも努力してましたけど、環奈に嫉妬して、まさか死に追いやるなんて…。」
夏音は、そう話しながら、隣の朝倉が声を殺して泣いていることに気が付いた。
「…本当に…悔しいよ。…環奈を…助けてやれなくて。」
「そんな、先生が責任感じることじゃないですよ。」
夏音はそう励ましつつも、以前、朝倉に環奈の異変について話をした時に、朝倉が知らないと嘘を付いていたことを思い出していた。
夏音は、意を決して朝倉に質問した。
病院前のバス停に到着し、夏音はバスを下車した。夏音は、愛弓に対する複雑な気持ちで胸がいっぱいで、今すぐ来のお見舞いに行く気が起きずに、少し周りを散歩することにした。
夏音は頭の中で考えた。
イロカゲという能力は、良いものなのか、はたまた余計なものなのかを。夏音自身は、イロカゲによって様々な体験をしてきた。この数日を例に見てみると、イロカゲが無ければ、周りの人たちの負の気持ちを知ることはなかったし、片倉の妊娠に気が付くこともなかった。つまりイロカゲは邪魔な存在だ。
だが、イロカゲが無ければ、神楽は死んでいたかもしれない。あの時、神楽のイロカゲを見たから、結果的に来が神楽を助けた結末になったからだ。それから、父親が自分と過ごした時間に幸せを感じてくれたことが、文字通り目に見ることができた。彰を急に失った夏音にとって、それは最大の励みだった。つまり、イロカゲは良い行いもしているのだ。
では、そのイロカゲの能力を他人が持っていたらどうなのだろうか。
愛弓はこの能力を凄いことだと言ってくれた。さっき、森末も世間が注目するようなことを言っていた。
つまり、“本当に特別な能力”なんだと、夏音は改めて思った。
夏音にとっては、物心付いた時から自然と備わっていた能力で、今まで他人に知られることもなく、他人からこの能力について評価を貰ったことがなかった。
すると、今度は、“何故自分にだけ、この能力が備わったのか”と考えた。夏音の感覚的に、彰や茜、愛弓にはこの能力がなく、遺伝とかではないと思った。
「…何か原因があったのかな。」
夏音が、そんなひとり言を呟きながら下を向いて歩いていると、正面から歩いてきた人とぶつかってしまった。夏音は、慌てて顔を上げて謝ろうとした。
「あ、すみません!ぼーっとしちゃって…朝倉先生。」
「…三嶽か。」
ぶつかった人物は朝倉だった。どうやら朝倉もスマホの画面を見ながら歩いていたようで、お互いに謝った。
「先生、今日学校は?」
「学校って、朝礼で…あ、三嶽は今日休みだったか。」
「……?」
また学校で何かあったのかと、夏音は不安そうな表情で朝倉を見た。
「ちょっといいか?そうだな、病院の外のベンチで話すのはどうだ?」
この後、来の見舞いで病院に戻る予定だった夏音は、コクンと頷いた。二人は病院に向かって歩き出した。
「そう言えば、お父さん亡くなったんだってな。…まだ若いのに残念だな。精神的に大丈夫なのか?というか、何してんだ、こんなところで。」
「佐藤くんのお見舞に…。父親については、しばらく会ってなかったんで…まだそんなに実感が湧かないというか…。」
「あぁ、佐藤来か。今朝連絡があって、状態を聞いたが、まだ目覚めてないそうだ。この学校も大変な事態になったな。」
会話をしている内に市立病院に着き、調度空いていたベンチに二人で腰掛けた。
「さっきの話だけどな、三嶽の担任の日下部が殺人容疑で捕まって、白井教頭が昨夜自殺した。…今朝は朝礼で、校長が事情を話して、また臨時休校になったよ。…どうやら、佐藤の怪我は日下部が絡んでいるようだった。」
淡々と話す朝倉に、夏音は思考が付いていけなかった。夜中の奏からの電話では、彼女は混乱していたのか、来が怪我をして救急車で運ばれたことだけを繰り返していた。詳しい話は、また落ち着いたら聞こうと思っていたが、あれから電話も繋がらずに今に至る。
まさか、自分の担任が来をそんな目にあわせていたとは想像もつかず、更には教頭の自殺と、環奈の自殺から幾日も経たないうちに、まるで学校が呪われているのかと考えてしまうような出来事の連続に、夏音は言葉にならなかった。
下を向いたままの夏音を察し、返答を待たずに朝倉が続けた。
「…正直、教師たちも困惑してるよ。…それから、今はここだけの話にしておいて欲しいが、由比環奈の自殺に、教頭らが絡んでいたようだ。先ほど、警察から事情聴取を受けてね。その時に、逆に聞き出した情報だ。」
「え?教頭が環奈の事件に?どういうことです?」
衝撃の内容に、夏音は顔を上げた。
「教頭のお子さん、彩未ちゃんずっと休んでるだろ?…環奈の絵画ばかりが評価されることに、自信を喪失して、学校に行くこともできないほど、心を病んでるらしい。…教頭から直接聞いたわけじゃないが、似たような話を教頭としたばかりでね。」
「つまり、教頭が彩未ちゃんのために、環奈を自殺に追い込んだってことですか?」
夏音は、自分の言っている内容が間違っていて欲しいと思いながら、朝倉に聞いた。朝倉は、夏音の目をじっと見つめて、頷いた。
「…そんな。確かに彩未ちゃんも努力してましたけど、環奈に嫉妬して、まさか死に追いやるなんて…。」
夏音は、そう話しながら、隣の朝倉が声を殺して泣いていることに気が付いた。
「…本当に…悔しいよ。…環奈を…助けてやれなくて。」
「そんな、先生が責任感じることじゃないですよ。」
夏音はそう励ましつつも、以前、朝倉に環奈の異変について話をした時に、朝倉が知らないと嘘を付いていたことを思い出していた。
夏音は、意を決して朝倉に質問した。
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