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第1回
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僕は今高校二年生になったばかりだ。
高校生活が始まり、あっという間に一年が経過したわけだが、いわゆる高校生活を謳歌しているかと聞かれると、首を横に振るしかない。部活にのめり込むわけでもなく、バイトに明け暮れるわけでもない。ましてや、彼女がいるわけでもない。
「じゃあ、こんな毎日が退屈でしょうがないか?」
そう聞かれても僕は首を横に振る。何故なら、毎日考え事で頭がいっぱいであり、少しでも解決に導くために、毎日を研究に費やしているからだ。
その考え事とは何か。それは、誰もが一度は何かの拍子に考えることが必ずあるだろう。
『人は死んだらどうなるのか?』
僕がこの世界的な疑問にのめり込んだのは、目の前で瀕死の友人を見てからだ。
中学二年生の夏、僕は友人と三人で近くの海に泳ぎに行った。僕は小さい頃から水泳を習っていたので、泳ぐのだけは自信があった。つい調子に乗ってしまい、遊泳エリアを示すブイを越え、沖まで泳いでしまった。
すると、負けず嫌いの友人の一人も、どうやら僕の後を付けてきたらしく、僕が沖で止まり、立ち泳ぎをすると、すぐ横にその友人がいた。
だが、友人の体力は限界だったようで、僕が自分の位置から浜辺までの距離を目視している間に、友人の姿が消えていた。
そう、海中に沈んでいたのだ。ふと、海の中に視線を写すと、友人の頭が海水に滲むように見えた。
僕は焦った。だが、僕は泳ぎは得意だが、救助などは勿論したことはなく、成す術がなく浜辺に向かって、できる限り大きな声と動作で助けを呼んだ。
すると、声を上げた途端、僕の目の前にライフセーバーがやってきて、そのまま海中に潜り、あっという間に友人を海面までは引き上げてきた。
後から聞いた話だが、どうやら僕がブイを越えたあたりで、監視員が目を付けており、注意をするために既に僕らの元に向かっていてくれたようだった。
ライフセーバーは、友人を肩に掛け、僕に浜辺まで泳げるかと聞いた。僕は頷き、友人を抱えながら泳ぐライフセーバーの後ろに付いて浜辺へと向かった。
浜辺に着くなり、ライフセーバーは友人を浜辺に仰向けに寝かせ、声を掛けた。
大丈夫か?と何度も大声で聞くが、友人はピクリともしなかった。
僕は、何が起きているのか、正直理解できていなかった。もう一人の友人は、僕の横で震えて泣いていた。
それから、何人ものライフセーバーがやってきて、意識が戻らない友人の頬を叩いたが、やはり反応がなく、人口呼吸と心臓マッサージを始めた。
教科書や教材ビデオでしか見たことのない、心臓マッサージを瀕死の友人がされている光景を見て、僕は不思議な気持ちになった。
「あぁ、きっと友人は死んでしまうんだ。」
口には出さなかったが、僕はこんな酷いことを考えていた。勿論、目を覚まして欲しいという気持ちもあった。だが、身近な人の死を目の当たりにして、僕は恐怖よりも、この人はこのまま死んだらどうなるんだろうという好奇心が芽生えてしまった。
ふと気が付くと、もう一人の友人は僕の横で泣き崩れていた。更に、見守るライフセーバーの一人が、僕に冷ややかな目線を向けていることにも気が付いた。
どうやら、僕の中では、友人の心配よりも、前述の好奇心のが勝っていたらしく、ニヤけているように見えたようだ。僕は咄嗟に表情を作り、友人に駆け寄った。目を覚ませとか、頑張れなどと、必死で声を掛けた。勿論演技だった。
今、瀕死の友人の中では、何が起きているのか。よくテレビや漫画で見るように、目の前に瀕死の自分がいるような映像を見ているのか、死んでいるおばあちゃんが、川の対岸から自分の名前を呼んで手招きしている世界にいるのか、いくら考えても答えに辿り着けない疑問を頭の中で展開していた。
そんな矢先、瀕死だった友人は、ゴボッという音とともに、海水を吐き出した。ライフセーバーや野次馬からは歓声が上がった。
泣き崩れていた友人も立ち上がり、両手を上げて喜んでいた。
でも何故だろう、僕は友人が生き返った嬉しい気持ちより、すぐにでも友人に今まで見ていた世界を聞きたくてしょうがなかった。
その後、友人は救急車に乗せられ、数時間後には、いつもの姿の友人に戻っていた。
僕は病院で、目を覚ました友人と会話をした。僕が最初友人に何て言ったのか。今でも覚えている。
「向こうの世界はどうだったんだ?」
その言葉に、友人が口をあんぐり開けていたことも記憶の中に鮮明に残っていた。
だが、その友人とは今や親友である。僕が抱いていた死後の世界に対する好奇心は、彼にも伝染し、暇があれば二人でする会話は、人の死についてばかりだった。
瀕死を体験した友人は、死と隣り合わせだった間の記憶は何も無かったと言っていた。
『死』とは『無』なのか。それとも、何かを体験していたが記憶に無いだけなのか。
高校二年生になった今でも、その疑問の答えは出ていなかった。
一体どうしたら良いのか。
一番早いのは、仮死の状態で、死後の世界に一歩足を踏み入れて、その記憶を保ったまま、息を吹き返すことだとは思っていた。
だが、その術と勇気がなく、時間だけが経過していた。
「おい、凄い話があるぞ。」
今から五分前、友人のこんな言葉で始まった。そして友人が続けた。
「体験しようぜ、死後の世界。」
僕の目はきっと、キラキラしていたに違いない。
高校生活が始まり、あっという間に一年が経過したわけだが、いわゆる高校生活を謳歌しているかと聞かれると、首を横に振るしかない。部活にのめり込むわけでもなく、バイトに明け暮れるわけでもない。ましてや、彼女がいるわけでもない。
「じゃあ、こんな毎日が退屈でしょうがないか?」
そう聞かれても僕は首を横に振る。何故なら、毎日考え事で頭がいっぱいであり、少しでも解決に導くために、毎日を研究に費やしているからだ。
その考え事とは何か。それは、誰もが一度は何かの拍子に考えることが必ずあるだろう。
『人は死んだらどうなるのか?』
僕がこの世界的な疑問にのめり込んだのは、目の前で瀕死の友人を見てからだ。
中学二年生の夏、僕は友人と三人で近くの海に泳ぎに行った。僕は小さい頃から水泳を習っていたので、泳ぐのだけは自信があった。つい調子に乗ってしまい、遊泳エリアを示すブイを越え、沖まで泳いでしまった。
すると、負けず嫌いの友人の一人も、どうやら僕の後を付けてきたらしく、僕が沖で止まり、立ち泳ぎをすると、すぐ横にその友人がいた。
だが、友人の体力は限界だったようで、僕が自分の位置から浜辺までの距離を目視している間に、友人の姿が消えていた。
そう、海中に沈んでいたのだ。ふと、海の中に視線を写すと、友人の頭が海水に滲むように見えた。
僕は焦った。だが、僕は泳ぎは得意だが、救助などは勿論したことはなく、成す術がなく浜辺に向かって、できる限り大きな声と動作で助けを呼んだ。
すると、声を上げた途端、僕の目の前にライフセーバーがやってきて、そのまま海中に潜り、あっという間に友人を海面までは引き上げてきた。
後から聞いた話だが、どうやら僕がブイを越えたあたりで、監視員が目を付けており、注意をするために既に僕らの元に向かっていてくれたようだった。
ライフセーバーは、友人を肩に掛け、僕に浜辺まで泳げるかと聞いた。僕は頷き、友人を抱えながら泳ぐライフセーバーの後ろに付いて浜辺へと向かった。
浜辺に着くなり、ライフセーバーは友人を浜辺に仰向けに寝かせ、声を掛けた。
大丈夫か?と何度も大声で聞くが、友人はピクリともしなかった。
僕は、何が起きているのか、正直理解できていなかった。もう一人の友人は、僕の横で震えて泣いていた。
それから、何人ものライフセーバーがやってきて、意識が戻らない友人の頬を叩いたが、やはり反応がなく、人口呼吸と心臓マッサージを始めた。
教科書や教材ビデオでしか見たことのない、心臓マッサージを瀕死の友人がされている光景を見て、僕は不思議な気持ちになった。
「あぁ、きっと友人は死んでしまうんだ。」
口には出さなかったが、僕はこんな酷いことを考えていた。勿論、目を覚まして欲しいという気持ちもあった。だが、身近な人の死を目の当たりにして、僕は恐怖よりも、この人はこのまま死んだらどうなるんだろうという好奇心が芽生えてしまった。
ふと気が付くと、もう一人の友人は僕の横で泣き崩れていた。更に、見守るライフセーバーの一人が、僕に冷ややかな目線を向けていることにも気が付いた。
どうやら、僕の中では、友人の心配よりも、前述の好奇心のが勝っていたらしく、ニヤけているように見えたようだ。僕は咄嗟に表情を作り、友人に駆け寄った。目を覚ませとか、頑張れなどと、必死で声を掛けた。勿論演技だった。
今、瀕死の友人の中では、何が起きているのか。よくテレビや漫画で見るように、目の前に瀕死の自分がいるような映像を見ているのか、死んでいるおばあちゃんが、川の対岸から自分の名前を呼んで手招きしている世界にいるのか、いくら考えても答えに辿り着けない疑問を頭の中で展開していた。
そんな矢先、瀕死だった友人は、ゴボッという音とともに、海水を吐き出した。ライフセーバーや野次馬からは歓声が上がった。
泣き崩れていた友人も立ち上がり、両手を上げて喜んでいた。
でも何故だろう、僕は友人が生き返った嬉しい気持ちより、すぐにでも友人に今まで見ていた世界を聞きたくてしょうがなかった。
その後、友人は救急車に乗せられ、数時間後には、いつもの姿の友人に戻っていた。
僕は病院で、目を覚ました友人と会話をした。僕が最初友人に何て言ったのか。今でも覚えている。
「向こうの世界はどうだったんだ?」
その言葉に、友人が口をあんぐり開けていたことも記憶の中に鮮明に残っていた。
だが、その友人とは今や親友である。僕が抱いていた死後の世界に対する好奇心は、彼にも伝染し、暇があれば二人でする会話は、人の死についてばかりだった。
瀕死を体験した友人は、死と隣り合わせだった間の記憶は何も無かったと言っていた。
『死』とは『無』なのか。それとも、何かを体験していたが記憶に無いだけなのか。
高校二年生になった今でも、その疑問の答えは出ていなかった。
一体どうしたら良いのか。
一番早いのは、仮死の状態で、死後の世界に一歩足を踏み入れて、その記憶を保ったまま、息を吹き返すことだとは思っていた。
だが、その術と勇気がなく、時間だけが経過していた。
「おい、凄い話があるぞ。」
今から五分前、友人のこんな言葉で始まった。そして友人が続けた。
「体験しようぜ、死後の世界。」
僕の目はきっと、キラキラしていたに違いない。
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