死後の世界研究倶楽部

雨木良

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最終回

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僕は罪人扱いなのか?ということは地獄行きのコンベアなのか?

僕は自分の行いを見直しながら、流されていた。

すると、目の前にまた重厚な扉が現れた。ベルトコンベアは止まることなく、扉に向かって進むと扉が自動ドアの様に開いた。

中には一つ目の巨人が待っていた。ビル五階分ほどの高さがあり、一つ目ということ以外は人の形をしていたが、毛髪は無く、肌は緑色で皺が一切なく、ゴムのような素材に見えた。麻布のワンピースのような服を着たその巨人は、僕を抓み上げ、大きな臼のようなモノに投げ入れた。

かなりの高さから落ちたが痛みは無かった。

回りを見ると、人の形をしたオレンジ色の光がたくさんいた。

何事かと思った瞬間、真上から鉄の塊のような巨大な物体が僕らを襲ってきた。

僕は手足が動かない為成す術がなく、その巨大な鉄の塊を正面から受け止めた。

押し潰されているのだろう。痛みは一切ないが、自分が破壊されていく感覚だった。

鉄の塊は一旦真上へと上昇すると、再び僕らを襲ってきた。それはまるで、餅つきのようだった。

生身の人間なら、ぐちゃぐちゃな無惨な肉の塊となっていただろうと想像するのが容易いほど、残酷な光景だった。

意識だけは変わらずハッキリとしていたため、鉄の塊に押し潰されるという恐怖だけを僕は何回も味わうことになった。

これは間違いなく地獄だ。僕の人生は何がいけなかったのか。僕は鉄の塊に押し潰されながら、そんなことを考えていた。

それから数十回経過すると、鉄の塊は真上の遠い位置で止まった。すると、今度は僕が乗っている臼のような受けが、徐々に傾き始めた。

僕らは、余った料理を皿から直接ゴミ袋に棄てられるかのように、巨大な透明な袋の中に落とされてしまった。

すると、さっきとは違う巨大がやってきて、僕らが入った袋をサンタクロースのように担ぐと、また別の扉を開けて部屋を移動した。

部屋に入るなり、巨人は袋を逆さまに持ち、僕らを巨大な籠に落とした。

相変わらず痛みもなく、身体は透明なままだが、色んな人間の肉塊がぐちゃぐちゃと音を立てて落ちてくるイメージだった。

僕らを籠に入れた巨人は、大きな声を出し、聞いたことのない動物の泣き声に近い言語を叫んだ。

すると、どこから現れたのかは分からないが、10体近くの巨人がウヨウヨと籠の回りに集まりだした。きっと、仲間を呼ぶ合図だったのだろう。

すると、また巨大はさっきとは違う言語で合図をした。

合図とともに、10体の巨人は、片腕を籠の中に入れ、ギュッと僕らの肉塊を掴むと胸の前で両手を使って捏ね出した。

まるで、泥団子を作って遊んでいる子どもの様だった。

ある程度捏ねると、巨人は僕らの肉塊の形を整え始めた。ただ何かをされている感覚だけがあり、透明な肉塊は何の形にされているのかは、全く分からなかった。

整形が終わったのか、僕の意識が入っている肉塊は、透明な箱に入れられ、またベルトコンベアに乗せられ運ばれ始めた。

この箱は、整形された肉塊にピッタリのサイズのようで、仰向けに寝かされたような状態のまま身動きが一切取れなかった。

一体僕は何をされているのか。ここは地獄なのか。やられている事は残酷だが痛みはない。僕の頭の中はクエスチョンマークだらけだった。

しばらく進むと、工場内の雰囲気が変わった。見えているのは天井だけなのだが、さっきまでのトタン製の古びた工場のような天井から、急に未来型の内装へと変化した。

すると、僕の進行方向から、機械音がしてきた。僕は首を動かせるだけ動かし、視点を真上に向けると、巨人な機械が迫っているのが見えた。ベルトコンベアは、そのままその機械の空洞部分に繋がっているようで、巨人なMRIに入れられる気分だった。

そして、いよいよその機械の中に突入しようとした所で、何が起きたのか、僕は箱ごとベルトコンベアから落下し、数メートル下の地面に叩き付けられた。

落下の弾みで、僕は箱から抜け出すことができ、自分の意志で身体を動かすことができた。

ふと、見上げると、二体の巨人が言い合いをしているようだった。どうやら、巨人の一体が、僕の箱に触れてしまい、僕を落下させてしまったようだ。

僕は何故か逃げなきゃと思った。

周りを見回すと、巨大な機械の先、ベルトコンベアが伸びる方向に、白い光が見えていた。ベルトコンベアのゴールはあの光の中らしい。

僕はその光に魅入ってしまい、光に向かって機械の横を走った。

もう手足を含め、全ての肉が自分のものではないのか、違和感を感じながら走り続けた。

しばらくすると、巨大たちが騒ぎ出す声が聞こえ始めた。僕が逃げ出したのに気が付いたらしい。

工場内にけたたましいサイレン音が鳴り響き、いくつものサーチライトが僕を探しているようだった。

僕は、ただただ光を目指して走り続けた。段々と光が大きく見えてきた。

ふと、後ろに振り返ると、巨人たちが僕を追ってきていた。巨人の一歩は大きい。あっという間に追い付かれそうだったが、僕は恐怖に戦くことなく、光を目指してひたすらに走り続けた。

巨人の一体が僕に手を伸ばした。巨人の腕が正に僕の身体に触れそうな瞬間、僕は真っ白な光に触れ、そのまま光に吸い込まれていった。

そこで記憶が途絶えた。




どれくらい眠りについていたのだろうか。

まるで、深い眠りから目を覚ますように、僕はゆっくりと目を開けた。

目の前には、また天井があった。だが、さっきとは違う天井だ。

僕は、どこか見慣れた雰囲気を感じて、地球に戻ってきたと感じた。

まだ僕は透明人間なのか。確認したくて起き上がろうにも、手を持ち上げようにも、思うように身体が動かなかった。

それと、うまく言葉を発することもできない。

ここが天国か地獄で、さっきの続きなのか。はたまた夢を見ているのか、悩んでいると人の声が聞こえてきた。

「産まれたんだね!」

ん?どっかで聞き覚えのある声だ。声の主が僕の目の前にやってきて、僕の顔を眺めるとニンマリと微笑んだ。

それは、友人だった。

失神ゲームから目覚めた訳ではなさそうだと感じたが、ここがどこなのか、僕は一体どういう状態なのかを友人に聞きたかったが、声が上手く出ない。

「抱っこしていい?」

友人は、僕に両手を回し持ち上げた。

嘘だろ?そんなに軽々しく持ち上げるなんて…。

僕は正面の鏡を見て絶句した。友人が抱いているのは、生まれたての赤ちゃんそのものだったからだ。

状況からして、あの赤ちゃんが僕だった。

そう言えば、前に友人が、歳の離れた兄弟ができると嬉しそうに話していたことを思い出した。

…そうか、僕は生まれ変わったのか。偶々なのか、神の悪戯なのかはわからないが、友人の弟として、生まれ変わったんだ。

だけど何故、僕には『僕』であった記憶があるんだ?

…あっ、もしかして、あの巨大な機械を通らずに光の中に入ったからか?

考えても謎は解けないが、どうやら僕はこのまま友人の弟として、人生をやり直すことになりそうだ。

記憶が残ったままなのは、良いことなのかは分からないが、僕が大きくなったら、また人間の死後の世界について、友人と、いや、兄と語り合いたいと思った。

僕らの『死後の世界研究倶楽部』は、まだまだ続きそうだ。

ー 完 ー
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