婚約者をNTRれた勇者の童貞は初恋姉ポジの私が大変美味しく頂きました。

りんごちゃん

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 昨日はつい盛り上がる雰囲気のままヴィンスとセックスしちゃったけど、私は今後悔してる。

「みんな待ってるのにそのまま朝になっちゃったよ……!」

 というかお昼じゃないの、これ……!
 すやすやと満足そうなヴィンスの隣で頭を抱える。
 やっちまった感がすごい。
 昨日、ヴィンスにはがくがくと私を揺さぶりまくり、すっきりするまで付き合わせられた。煽った私が悪いってわかってる。わかってるけど、すきな人と両思いになったらテンション上がっちゃうのも仕方ないよね。しょうがないよね? そうだよね?

「ん……ミゲラぁ、まだねむい……」

 ん~~~~~~寝ぼけて私を抱き締めるヴィンスかわいい~~~~
 全裸の私の股間に顔を埋めてるのは我慢できないからポイってするけど。

「みげらぁ?」

 きょとんと首を傾げたヴィンスの顔を無言で抱きしめた。



「で、反省は?」
「してます……」

 メルリアの目が怖い。シメオン様が頬を染めて私たちから顔を逸らしてることに猛省する。
 昨晩は子どもには刺激が強い夜だったらしい。
 今現在私たちは客室にいる。貴族が話し合いをするような広い客室。
 昨日いなかった人が一人増えてるのが気になって、そちらをチラチラと見ていると目が覆い隠された。ちなみに王様はいなくなってた。少しほっとした。

「ヴィンス?」
「俺以外の男、あんまり見ちゃやだ」
「昨日さんざんしといて、まだヴィンセントはミゲラを男から遠ざけようとしてるわけ?」

 呆れたようなメルリアの声が聞こえる。
 私もメルリアにすこし賛成かな~。そしてたぶん私の視線の先にいる人は、そういうんじゃないと思う。

「剣の勇者、私はミゲラの従兄弟に当たる。妻子がいる身だから、君の思っているようなことにならない」

 やっぱり。
 シメオン様をでっかくしたような風貌の男性はやっぱり私の血縁者だったらしい。
 妻もいる身であるはずの王様がちょっとアレだったからすこし警戒するけど、この王子様は比較的まともそうだし、なによりヴィンスと敵対する気はなさそうでちょっと安心する。
 ヴィンスの手を剥がすと従兄弟と目が合った。

「はじめまして、従姉妹殿。私はミハイル。そなたに迷惑をかけたシメオンの兄であり、父の第一子。弟と父がすまないことをした」

 ……………………。

 それって王太子では?

「あ、頭を下げるのはやめてくださいっ!」

 王太子! 次期王様!
 慌てて頭を下げている王太子殿下を止める。

「だが、」
「怒っていません。シメオン様にも国王陛下にも」

 王様のことは気持ち悪いと思ってるけど、とは言わずに笑みを浮かべる。
 私にされた事で怒っていることは本当にない。もちろん最初はメルリアを傷付けた人だからシメオン様のことは警戒してたけど、何日か過ごすうちに絆されてしまった。かわいいし。
 王様に至ってはドン引きだけど、どうでもいいっていうか、うん。どうでもいい。できればもう関わりたくないなぁ、って思う。

「そうか。その寛大さに感謝する」

 この人、すごく常識人なんだなぁ。無表情だけど。
 もっともまともな王族にホッとする。よかった。これなら何事もなくお別れできそう。
 そもそも私の母が王族だったと言われても困ってしまう。私自身は今まで平民として暮らしてきたんだし。シメオン様は私を王族に迎えたがっていたけど、やっぱり無理。
 シメオン様と結婚するのも手かと思ってたけど、今となっては私を抱き締めている人物が許すはずもない。
 私が王族の仲間入りする未来は消えた。それにそんなのになっちゃったらヴィンスとの結婚が大変、というか難しくなると思う。やっぱり貴族になんてなれないよね。

「それで、いつ城に来るんだ?」
「…………はい?」
「すでに私の妹姫として迎える用意はできている。もうずっと前から。シメオンがそなたを引き止めていたとは知らず、不便な思いをさせた」

 ……………あ。この人、別に常識人じゃない。
 なんとも言えずに引きつった笑みを浮かべる。

「ごめんなさい。私、もう帰ろうと思ってて……」
「城にか?」
「兄様、ミゲラは王族にはなりません」

 どうやって返事をしようかと思っていると、シメオン様が言いづらいことをビシリと言ってくれた。
 シメオン様の言葉に王太子様が「なに?」と眉を上げる。
 無表情が不機嫌そうに眉を上げる姿が少し怖くてぶるりと震えると、ヴィンスがギュッと抱き締める力を強くしてくれた。
 そういうところ、すき。ヴィンスの手に自分の手を重ねる。
 ちゅっ、と頬にキスをされたけど、それはちょっと返せないからね。一応今は真剣なお話中だからね。

「ミゲラは私の妹になるのだろう?」
「恐れ多いことです、王太子殿下。私は今まで通りの暮らしで満足しております」
「恐れ多いことなどない。皆、そなたを歓迎している。ミシェル様は誰からも愛されていた。彼女がいなくなったとき、誰もが悲しんで嘆いたものだ。ミゲラを迎え入れることは民のためにもなる。もちろん、私も妻も妹がいないから妹ができることをとても楽しみにしている」

 とても楽しみにしているような表情ではない無表情。
 正直、とても困る。民とか言われても、私はその民側。そもそも民とか、ピンとこない。

「兄様、あまりミゲラを困らせないでください」
「元はと言えばお前がミゲラをさっさと城に連れてこなかったのが悪いのだろう。私もミゲラを可愛がりたかった……」

 心なしかしょんぼりしてる王太子殿下だけど、私のことを何歳だと思ってるんだろう。成人済み女性のことを可愛がるって。遠慮したい。

「あの、王太子殿下……」
「ミハイルお兄様、と」
「え?」
「ミハイルお兄様と呼ばれたい」

 無表情のままジッと私を見つめる王太子殿下に根負けして、「ミハイルお兄様」と呟いた。
 なんかもう逃げ出したいなあ。そう思って視線をメルリアに向けると、メルリアも疲れた顔をしてる。

「私は王族として相応しくありません。そのように育った覚えもない。ですから、私のことはどうかお忘れください。私には私の生活があります。見ての通り、恋人もおります。今、王族として城へ招くと言われても、とても困るのです」

 不敬罪、と言われたらどうしようと思いながらも、私には遠回しな言い方ができるような学がない。自分の気持ちを思ったままに吐き出すしか、方法がなかった。

「恋人……。剣の勇者ヴィンセントだな」
「はい」
「君はミゲラがスノーベルの王族かを確認するために来たんだな」
「……はい」

 ちらりと私を見て、意を決したようにヴィンスがうなずいた。ヴィンスの私を抱き締める力が強くなる。
 さすがに痛くなってきたんだけど、ヴィンスが震えているから離してとは言えない。
 そんなに怖がらなくていいのに。というか、なにをそんなに恐れているんだろう。

「私も父王も、君にミシェル様とその家族をを見つけたなら連れ戻してほしいとお願いしたのに、君はそれを聞かなかった。いや、そもそも聞く気がなかったのか。それどころか隠そうとしていたんだな? その確認のために、我が国に来たのか」
「その通りです。俺の身勝手な気持ちで大勢の人を悲しませると知りながら、俺はミゲラと共にいることを選びました。今も、そうです。ミゲラが王族として城に行くと言ったら、懇願して引き止めようとしてる。ミゲラは優しいんです。俺が懇願すれば優先させてくれることを知っています」

 いや、王族なんて絶対に嫌だけどね?
 ヴィンスに懇願されようと、王族にはなりません、絶対に。ヴィンスに振られたときは、もうなんだっていいやけくそ精神だったけど、今はちゃんとはっきりしてる。いやです。
 ミハイルお兄様がヴィンスになにかを言おうと口を開いて、けれど私がヴィンスの頭を撫でていることに気がついて、そのまま口を閉ざした。そして私を見る。

「ミゲラ、君は今の暮らしが気に入っているのか」
「はい、とても」
「ミシェル様は、君の目から見てどうだった。幸せそうだったか?」
「──記憶の中の母は、いつも笑顔でした」

 もう朧げな愛で溢れた記憶。きっと両親は幸せだっただろう。父も母もお互いを深く愛していたと思う。
 私の言葉にミハイルお兄様は「そうか」と納得したように頷く。

「ミゲラ、我々は君を手離すよ」
「ミハイルお兄様……」
「本来であれば、王位継承権を持つミゲラを野に放つことは争いの火種になりかねない。けれど、君には最強の騎士がいるだろう」

 王位継承権なんて言われてギョッとする。王族になったら、そんなものまで与えられてたんだ。危なかった。
 ヴィンスをちらりと見ると、ミハイルお兄様に向かってこくんとうなずいた。

「ミゲラは俺が一生守ります。ずっと永遠に」
「ヴィンス……」
「そうか。その言葉を聞けてなによりだ」

 ヴィンスの言葉にミハイルお兄様の顔が緩んだ。無表情の美青年の笑顔ってすごく絵になるなぁ、と思ってると、後ろからギュッと抱き締められる。

「俺のことだけ見て、ミゲラ」

 私の勇者は本当に嫉妬深い。
 耳元で囁かれた言葉に唇に自然と弧を描いた。
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みんなの感想(36件)

さんしろう
2019.12.01 さんしろう

部屋に入った時は2人だったけど出るときには3人になっていたエンドでいいのかな

解除
ななし
2019.11.26 ななし

ミゲラさんて偽善者っぽい…
幼なじみ勇者も最低だし💢
ミゲラは二人の関係を我慢して見てるぐらいなら手を出すべきじゃなかったし
離れるべきだった‼️お姉さんぶってるのが
憤りを感じる😣普通は好きな人の幸せは願うけど見てはられないと思う…自分以外の人と寄り添ってるんだから⤵️相手も男としてハッキリしろよ‼️いつまでもガキではいられないんだぞと言いたい😤

解除
lemon
2019.11.24 lemon

話は面白くて一気読みさせて頂きました。
ヒーローも初恋拗らせて暴走してますが必死過ぎて応援したくなります。
ただ、主人公さんが思い込みが激しい割りに諦めが悪いというか割りきってないというか言動がブレブレで若干苛々します(笑)
すごくめんどくさい人という印象…。
でもまぁ、簡単にくっついたら話は終わっちゃうから仕方ないんでしょうね。
想いが通じあってこれからどうなるのか楽しみにしています。

解除

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