婚約者をNTRれた皇太子をNTRたい

りんごちゃん

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 媚薬とは普通男性が女性に使うもので、男性に使用したりはしない。
 それがこの世界の常識。

「むぅ」
「難しい顔して考え込んでるお嬢様も可愛らしい……」

 そっち系の本を片っ端から読んだけど、なにも出てこなかった。
 むむむむ。なんということ。媚薬がないってことは素面で挑むしかないってことなの? 私の技術がものを言うのね。なによ、なんだか燃えてきたじゃない。
 前世でも処女だったけど、私はちゃんと知識はあるわ。耳年増ってやつよ。知識があればきっとなんでもできる。
 ぶっつけ本番も悪くない。頑張る。

「今日はデートですよね! 私、頑張ってお嬢様を着飾ります!」
「ええ、マーズ。わたくしの美しさを最大限に引き出してね。あなたならできるわ」
「はいっ!」

 媚薬とか調べてるけど、今日は皇太子とのお出かけの日。
 前日まで行くのが嫌で嫌でたまらなかったけど、当日になって準備まで始まったら行く気が湧いて来た。
 デートかどうかは疑問だけど、かわいい宝石買ってもらおうっと。今日は私のスカイブルーの瞳に合わせたイヤリングが欲しいの。欲しいものが決まってるんだもの。夕食は城で食べる予定で、お泊りなんですって。
 なんて都合がいいのかしら。お酒に酔ったフリして……って、私お酒に超絶弱いんでした。あのマーズが絶対に飲むなっていうくらいだもの。飲まないように気をつけようっと。

「髪はアテシがやりますね、お嬢様」
「あら、キュリー。久し振りじゃない。帰ってたのね」
「あい。諜報もひと段落ついたんでねェ。マーズ、お嬢様に似合う髪留め持ってこいや」
「は、はいぃっ!」

 私の長い髪を優しく櫛で梳きながら、うっとりと目を細めるキュリーを鏡越しに見つめる。
 キュリーは私の秘密兵器その2で、私の情報源の一つでもある。キュリーはね、水曜日(的な曜日)に会ったのよ。拾ったというより、潜り込んでたのよね、私の家に。
 美しいのよ、キュリーって。男装してるんだけど、その中にも女性の色気があって、うっとりしちゃう。キュリーとマーズだったら、キュリーのほうが古参なのよね。キュリーはマーズをメイドとして徹底的にしごきあげて、立派なメイドにしてくれたんだけど、おかげでマーズはキュリーが苦手になっちゃったの。
 キュリーは特殊な魔力があって、すごく存在感が薄いっていう特性がある。だから私の家に潜り込んでご飯を漁ってたのよね。残飯なんて食べてるから、普通のパンとスープをあげたら懐かれちゃった。それにキュリーの存在に気付いたのって私が初めてだったんだって。たぶん魔力の多さが理由だと思ってる。
 その存在感のなさを利用して、いまではすっかり私の秘密兵器として諜報的な役割を担ってる。だから家には滅多にいないのよねぇ。

「そういえば城でジュンを見かけましたよ」
「ああ。今異世界人のことで調べさせてるから」
「へェ。アテシはまだ見たことないですねェ」
「絶対会っちゃダメよ。貴方達はわたくしのものだもの。あの男の手垢がついたら怒るわよ」
「わかりました。ジュンはいいんですか?」
「ジュンはあれでも一応男だもの。問題ないわよ」

 ジュンも秘密兵器の一人。双子なのよ、ジュンって。ジュンのほかにピーターがいる。二人合わせてジュピターよ。木曜日に拾ったの。
 どっちも男の子なんだけど、ジュンはまるで女の子みたいに線が細くて可愛らしいのよね。それとは正反対にピーターはガタイが良くて強そうなの。ピーターは庭師がてらの番犬をさせてる。この二人は二人の間だけテレパシーが使えるから、ジュンが知ったことは逐一私の元にピーターが報告にくるのよね。
 二人を並べるとアンバランスな魅力が美しくて最高なの。

「ふふ」
「どうしました?」
「わたくしの美しい秘密兵器たちは最高だと思っただけよ。キュリー、これからも令嬢たちの噂集めよろしくね」
「ええ、お任せください。アテシの美しいお嬢様」

 うむ。苦しゅうない。



 準備が終わると、美しい私がさらに美しくなりました。うーん、かわいいわ、私。

「ありがとう、キュリー、マーズ」
「美しいお嬢様がさらにお美しくなって、アテシも嬉しいです」
「お嬢様綺麗! 抱いてくださいっ!」
「アテシが抱いてやろうか?」
「遠慮します」

 ケラケラと笑うキュリーと、心底嫌そうな顔をするマーズの姿を見てくすくすと笑っていると、馬車が私の家の前で止まる音が聞こえた。
 来たのね、皇太子。
 階段を降りて下に向かう。

「アスティ」
「ごきげんよう、ユージン」

 にっこりと微笑んだ。
 それにしても皇太子の顔が本当にタイプでどうしよう。なんだかドキドキするわ。性格は全然タイプじゃないのに。やっぱり顔って偉大。

「今日も綺麗だね」
「っ、」

 そんなタイプの人間からそんなことを言われては赤面するってもので。
 だから童貞って呼ばれちゃうのよ! もっと余裕を持ちたい。
 だってなんだか最近皇太子の前だとソワソワするんだもの。嫌だわ。かっこ悪い。私としたことが。

「じゃあ行こうか」
「ええ。今日は楽しみにしてたのだから、ちゃんと楽しませてね」
「もちろん」

 そうよ。今夜よ。絶対絶対ユージンのことを堕としてやるんだから。身体で! その小さいのあんあん言わせるんだからっ!
 馬車に乗り込むと、二人きりの空間。緊張するけど、大丈夫、問題ないわ。

「今日は宝石商だけじゃなくて、仕立て屋にも行こうね」
「え……」
「ドレスも贈りたいから」

 さらりとそんなことを言われたけど、寝耳に水だわ。
 そんな予定聞いてない。さっそく馬車から降りたくなってきた。
 だってドレスなんて、ドレスを選ぶってなんかエロいじゃない。で、でもそうよね。私が選べばいいのよね。
 選んでもらう、じゃなくて私が選べば問題ないわ。
 素肌は見せない方向で。触れたら嫌だもの。

「いいわ。でも、高いの頼んでも怒っちゃダメよ?」
「そんなに甲斐性なしじゃないよ。アスティの好きなものを選ぶといい。アスティがどんなものを選ぶのか楽しみにしてる」

 なんだかバカにされてる気がするのはどうしてかしら。そんなことあるはずないのに。
 やっぱり皇太子の私に対する評価がすごく高い気がする。
 当たり前のことなのだけどね。だって私、美しくて非の打ち所がないもの。中身は置いといて。自分がちょっとクズ寄りの思考をしてることは知ってるわ。嫌いじゃないわよ、この思考。
 しょうがないじゃない。楽して生きたいもの。引きこもり生活したいもの。
 そのために皇太子を落とすんだから、あら? そうよね。評価が高くていいのよね。幻滅されても、しょうがないわ……よね。

 だって、それが私だもの。今さら自分を変えるなんてできない。

「わたくし、悪いことしてないわ……」

 皇太子に好かれようと寝取ることが悪いことなんて、全然全く思わないわ。
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