異世界でスポーツ科学の達人〜パフォーマンス向上と怪我予防の冒険者ギルド日記

あさあき

文字の大きさ
50 / 51
エリカの限界を見極めろ!

バックスクワットのエラー修正(1)

しおりを挟む
「さて、さっき発見した課題への対処法も少しやっておこうか」
「まずは、頭のポジションの修正だ!」
「頭のポジションの修正で大事なのが、トレーニングを行っている本人が自分の頭の角度を自覚しながらバックスクワットを行えることだ」

「2015年の論文[Kushner2015]では、バックスクワットを行う際の頭のポジションを自覚しながら修正する方法として、豆が入った袋を頭の上に乗せてバックスクワットを行うことが推奨されている」

「せっかくだから、タヌキを頭に乗せてみようか」
「マミー、出てこいー」

とフジカルが呼ぶと、異空間からひょっこりとマミが登場した。

「はいー。お呼びでしょうか?なのです」

「体重を軽めにした状態で、ちょっとエリカの頭に乗ってくれ」

「拝承なのですー」とマミが頭に乗った。

「これ、もうちょっと何とかなりませんか?さすがにやりにくいんですけど」

と困惑するエリカ。

「しょうがない。じゃあ、今回は、小さな豆、小豆(あずき)が入ったお手玉にしようか。マミ、お手玉に変身してくれ!そしてエリカは、それを頭から落とさないようにバックスクワットをやってみようか!」

マミは妙に可愛らしいメルヘンチックな模様がついたお手玉に変身し、エリカは、それを頭に乗せた。

お手玉を頭に乗せて、棒をかついでバックスクワットを10回繰り返すエリカ。当初は、しゃがむと同時に頭が前に出て視線が床に向かっていたエリカだったが、頭に乗せたお手玉を落とさないようにするために視線が前を向きながらしゃがむようになった。

頭を動かすな、という指示をしたとしても、本人が自分の頭と地面に対する傾きを自覚するのは難しい。自分自身の身体を意識するのではなく、頭の上に乗せた物体という、身体の外部にある物体と頭の関係という、外的フォーカスの方が、結果として求める身体の角度を実現しやすい場合もあるわけだ。

全ての場合において外的フォーカスが優れているわけではないが、自分自身の身体を意識する内的フォーカスとの使い分けを上手に使うことが、効率の良いトレーニング指導で求められることもある。
外的フォーカスを使うのか、それとも内的フォーカスを使うのか、その選択も、運動に関連する指導においては重要である。
声の掛け方は、キューイング(Queing)と呼ばれるが、どのようなキューイングを行うのかによって、多くの人々が思っている以上に結果や効果が変わってしまうこともあるのだ。

そして、求める結果を出す方法はひとつとは限らない。

「今回はお手玉を使ったが、頭の上に何かを乗せるという方法以外にも色々と方法があるぞ。たとえば、少し離れた壁に目印を作って、そこを凝視し続けながらバックスクワットを行うという方法も2015年の論文[Kushner2015]は推奨している。」

「壁に目印をつけるようなことができない場合、たとえば、外でトレーニングを行うようなときには、こうやって目の前に立って、見つめ合うというのも方法のひとつだ!」

そう言いながらフジカルは、少し離れたところで立った。

(こういうシチュエーションで見つめ合うのって、どうなのだろう?)
そう思いながらも、少し離れたところに立つフジカルの目を見つめながらエリカはバックスクワットを行う。

「他にも頭や視線を維持する方法はあると思うので、必要に応じて工夫してくれ!」

このような頭の位置や視線といったエラーは、ちょっとした意識で修正できる場合も多い。非常に地味だが、見落とされがちなであるとも言える。

今後、エリカがグループに対して指導を行うような場合もあるだろうが、そのときには忘れずにチェックしたいポイントのひとつだと思う。ただ、首の可動域制限などによってどうしてもできないような場合もあるし、改善しようとする試みで痛みが出るような場合もある。痛みがあるような場合には無理はしないことも大事なので注意して欲しいということを後で伝えないと、そう思うフジカルであった。

「次は、正面から見た時の骨盤の角度を修正していこう」

======
参考文献
======

[Kushner2015]
Kushner, A. M., Brent, J. L., Schoenfeld, B. J., Hugentobler, J., Lloyd, R. S., Vermeil, A., ... & Myer, G. D. (2015). The back squat part 2: Targeted training techniques to correct functional deficits and technical factors that limit performance. Strength and conditioning journal, 37(2), 13.
https://doi.org/10.1519/SSC.0000000000000130
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...