めがさめたら、田舎にいた。

ミックスサンド

文字の大きさ
24 / 30

黒いコップと秘密①

しおりを挟む



ピンポーン…


鈍いチャイムの音が鳴る。
今現在、私は白い箱を両手に抱え、黒屋敷の扉の前に立っていた。

チャイムが鳴らし数分、扉が開き、中から黒い長袖の上着に白いズボン姿の黒崎さんが出てきた。

「やぁ、結子くんか。」


今日もお美しい…。
黒崎さんの艷やかな黒髪と、私の天パもどきのばさばさな髪とを勝手に比べて会って1秒で落ち込んだ。 

「こんにちは………黒崎さん…」

「何故急に落ち込むんだ。」



私はこの前と同じ黒いテーブルに、持ってきた白い箱を置いて座った。

「紅茶と珈琲、どちらが君好みかな?」
「えっと、その前に渡したい物があるんです」


私は白い箱の蓋をあけた。
中には丁寧に包装された黒色のプラスチックのコップが2個、入っている。
通販で頼み、 先日林さんが持ってきてくれたのだ。

「おや、これは…」

「はい!プレゼントです。
これなら落ちても絶対割れませんから!!」


ドヤァ!という効果音がつきそうな顔で、黒いカップを顔横に掲げる。
黒崎さんはノリ良く、「おお!」といってパチパチ拍手してくれた。


「嬉しいね。ちょっと待っててくれ、弟がくれたお菓子を持ってくるよ。」

(黒崎さんの弟さん、お菓子屋さんか何かなのかな…)


黒いテーブルに、熱い湯気が出る紅茶と
青色の背景に「Cookie」と黄金色でかかれた高級そうな箱が置かれた。

中にはバニラとチョコのクッキーが半々で入れてある。
私はバニラクッキーに手を伸ばし、口内で噛み砕く。
(おいしい…!)
お菓子屋にも当たり外れはあるのに、こうも美味しいお菓子ばかり送ってくる弟さんはきっとかなりグルメか、姉思いなのだろう。
いつか会って話をしてみたいものだ。



「悩みがある顔だ。」

突然、紅茶を飲んでいた黒崎さんは 私の顔を指差した。

「え?」

「話してご覧。
思考を脳に留まらせると、淀みができる。
一度外に出してしまった方が思考は捗る。

それに生憎、私は話し相手もいないし、秘密を話すにはうってつけの人物であると思わないかい?」


黒崎さんは私を見て微笑む。
黒崎さんの微笑みには、人に秘密を打ち明けさせる効果でもあるのだろうか。

私は、私の顔をぐにゃりと水面に写す紅茶のカップを両手で持ち、見つめる。

自然と口が動いた。

「…あの、 
凄く突拍子も無いお話なんですがー…」



そして私は、私が『倉田さち』である事を語った。





   
           ✴




          


          


        




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

処理中です...