R18BLゲームの序盤で処刑されるモブキャラなのに何故か攻略対象に狙われています。

白井ゆき

文字の大きさ
3 / 63
異世界ライフは甘くない

推しとモブ

しおりを挟む
「う、うそだろ」

 入学式後の教室。親交を深めましょうという担任の粋な計らいにより、一人ずつ自己紹介が始まったわけだが。その中の1人、ピンク色の紙を靡かせ琥珀色の瞳を輝かせる美少年に俺は釘付けになった。

「ミリエル・スノウと申します。至らぬ点も多いと思いますが、よろしくお願いいたします」

 ふわりと花のような笑顔を浮かべると、教室中から感嘆の声が漏れる。例にもれず俺もその一人で、だらしのない緩み切った顔をお見せしてしまったわけだが、すぐに引き締めた。
 そして教室中の視線を集める美少年を再び見る。

 おいおい嘘だろ。これって、これってまさか……!

「な、なぁ、めっちゃ可愛くね?」

 驚きで震えるしかない俺に話しかけてきた隣の席の男を睨む。先程の自己紹介ではサーブと名乗っていた。

 やぁ、サーブよろしく。でも今お前に構っている暇はないんだ。
 だって俺は気づいてしまったのだから。

「ここってまさかのゲームの世界?」

 皆の視線を搔っ攫っていった美少年ことミリエル・スノウ。
 俺はその名前に随分と心当たりがある。いや、心当たりなんてものではない。何を隠そう、彼は高校生の頃から俺がお世話になっていた抜きゲーの主人公なのだ。

 抜きゲー。つまりは、おかずである。
 彼のアへ顔が映し出されるディスプレイに何度己の精子をぶっかけたことか……!

 「ゲーム? 何の話?」と話しかけてくるサーブのことはどうでもいい。お前なんかに構っていられるか。

 今俺の目の前には、長年恋焦がれてきたミリたそがいるんだぞ!

 前世の俺がそれはもう大変お世話になったミリたそは、R18BLゲーム『白き塔の恋人たち』の主人公である。その愛らしい顔立ちのせいで、学園中のいたるところで攻略対象(ときどきモブ)にあんなことやこんなことをされてしまう不憫な主人公だ。
 嫌がりながらも快楽に身を投じる姿は、俺だけではなく全国の男を魅了しただろう。愛してるよミリたそ。

 そして、そんなミリたそに不埒な行為を働くのは4人の攻略対象だ。

 まず1人目。ダリウス・レイヴンウッド。
 赤髪にオレンジ色の瞳が特徴である俺様キャラのダリウスは、ミリたそと同じクラスで、授業中にみんなが真剣に頭を回している中で、ミリたその中を掻きまわしていたド変態である。
 授業中にそんな暴行を働いてもお咎めがないのは王族の次に地位が高い公爵家の子息だからだろう。知らんけど。
 何はともあれ、授業中の衆人観衆公開プレイは大変お世話になりました。この調子でいけばあの素晴らしきM字開脚スチルを生で見れるということでしょうか。彼には是非とも頑張っていただきたい。

 2人目は、ヴィクター・クロムウェル。
 銀色の髪と碧い瞳が冷たい印象を与える彼は、その見た目とおり冷酷無比な男だ。礼節を重んじる教師と言えば聞こえがいいが、貴族たるものいかなる時も平常心を~とかなんとか言って生徒に手を出すカスである。
 ちなみに、高校時代の担任を思い出すのでこの変態クソ眼鏡のことは嫌いだ。でもスチルは全部見た。めっちゃ抜けた。

 3人目は、ジェイド・バードウェル。
 緑色の髪にハニーブラウンの瞳を持つ彼は、この学校の保険医だ。
 何かと大変な目に遭うミリたそに、治療と称してセクハラをかます変態だが、彼の優しいプレイはミリたその甘い声を存分に引き出してくれるので一番攻略していた。
 自らが開発した媚薬漬けにする快楽エンドも非常にお気に入りである。

 そして、最後。ガイル・ハーヴィンである。
 焦げ茶の髪に緑の瞳という見た目からして誠実なこのキャラは、『白き塔の恋人たち』の良心と言われていた。ちなみに攻略難易度はトップクラス。理由はこのゲームの特性と彼の性格にある。

 攻略対象の好感度を稼いでエンドを目指す一般的なゲームとは違って、『白き塔の恋人たち』では快楽度を稼ぐのだ。つまり、ミリたそは一番ヤリまくったキャラと将来を誓う。
 ところがこのガイル、お前の理性は鋼でできているのかと疑ってしまうほどミリたそに手を出さない。こんなに可愛くてシコい人が間近にいるのに、だ。
 そのため、ガイルエンドを目指そうにも、その前に他の攻略対象との快楽度が満タンになってしまうため、彼のエンドを終ぞ見ることはかなわなかった。無念。

 全キャラ攻略後にシークレットルートが開放されるという噂は聞いたことはあるが、その真相も今となっては闇の中である。

「――……ン」

 ちなみに、悪役キャラもちゃんといる。
 この国の第4王子、カーティス・ダルクレインだ。甘やかされたこの王子は、何事も自分が一番じゃないと気が済まない質で、皆の視線を独り占めするミリたそを強姦に襲わせたり、娼館へ落としたりしようとするわけだが最終的に返り討ちに遭ってしまう。
 俺はミリたそ一筋だが、彼の処刑スチルもなかなかに良かった。気の強い受けと言うものは最推しでなくとも抜けるというものだ。
 まぁ、ミリたそが一番だが。これは決して浮気ではない。

「――……ヴ・レイン」

 あぁ、そうそう。悪役と言えば、序盤で処刑されるキャラもいるんだよな。
 校内のいたるところでおっぱじめるミリたそに、「はしたない!」というごもっともな意見をした結果、「嫉妬をするなんてなんと醜いやつなんだ、性根を叩きなおしてやる!」と快楽の刑に処されるなんとも可哀そうなモブだ。
 しかも彼にはスチルなんてものはない。だというのに、毎回処刑されるのだから彼には幸せになってほしい。

 名前もいかにも脇役って感じで、えーと、たしか……。

「モーヴ・レイン! 何度呼べばいいのですか? あなたの番だと言っているでしょう!」

 眉を吊り上げる教師の声に俺は冷や汗を垂らした。

 モーヴ・レイン。
 その名前は『白き塔の恋人たち』の序盤で雑に処理される、脇役の名前である。そして、奇しくも今世の俺の名前と1字違わない。

「俺、処刑されるってこと……?」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

転生したが陰から推し同士の絡みを「バレず」に見たい

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

処理中です...