R18BLゲームの序盤で処刑されるモブキャラなのに何故か攻略対象に狙われています。

白井ゆき

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異世界ライフは甘くない

白衣と枕とお兄ちゃん

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 やけに現代じみた保健室に設置された異様に豪奢なベッドの上。ディスプレイ越しによく見ていたその柔らかな寝具の上でうつ伏せに寝そべる俺は、甘い匂いのする枕に顔を押し付け鼻を啜っていた。

「もう、そろそろ泣き止んでよ」
「う゛る゛ざい゛っ!」

 ベッドの縁に腰をかけ、啜り泣く俺の頭を撫でるジェイドは何度暴言を吐かれようとも、その手を止めることはない。

 分かっている。自分が大人げないなんてことは、十二分に分かっている。
 モーヴとしての人生で俺の意識が戻ったのはつい最近ではあるが、前世との年齢を合わせれば40歳近い俺はジェイドより圧倒的に年上だ。そんな大の大人が治療中に射精したあげく泣き叫び、年下に怒鳴り散らすなんて。ここが現代日本ならSNSに動画アップの末大炎上、最終的にネットミームとして語り継がれていてもおかしくない。

 でも、それでも。

「モーヴ君が潮吹きしたことなんて気にしてないからさ」

 いくつになろうとも、こんなこと出来事を経て正気でいられるわけがないんだ。

 しかも今の俺はほぼ裸だ。まだ2回しか袖を通していない新品の制服は、俺が出したあれやこれやで汚れてしまったせいで着れたもんじゃないので。
 全裸と白衣のどちらがいいかと選択を迫られたため、白衣だけを身に着けた露出狂の出で立ちだ。

 全て自分が招いたことではあるが、黙っていられるわけがない。

「うるさいって言ってるだろ!!」

 顔を上げてジェイドを睨みつける。しかし、俺を見下ろすハニーブラウンの瞳と目が合った瞬間、性器を這う手と潮を吹き出した感触が思い出され羞恥に襲われる。

「うわぁぁあああ!」

 奇声を上げて枕に突っ伏した俺にジェイドが困ったように溜息をついた。

 俺の頭の形に添って髪を梳いていた手が、顔を隠す横上をそっと耳に掛け、輪郭をなぞるように指先が滑る。そして、ベッドが軋む音の後、ジェイドの呼吸音が近づいたのが分かった。
 恐る恐る顔を横に向ければ、ジェイドの顔が目の前に遭って息を呑んだ。

「な、なんだよ」
「どうやったらモーヴ君が機嫌を直してくれるのかと思って」
「……俺だって好きで泣いてるんじゃない」
「知ってるよ。恥ずかしかっただけだもんね」
「ん……」

 そうだ。恥ずかしかっただけ。あと、堪え性のない自分が少し情けなかった。

 頬を撫でるジェイドの手の平にすり寄ると、目尻に溜まった涙を指で拭われる。それに目を細めれば、くつくつと喉を鳴らしたジェイドに後頭部を引き寄せられた。
 隣に寝そべるジェイドの胸に顔を埋める形となり身を捩ったが、腰に当てられた手にも力を込められてしまう。

「な、なにすんだよ!」
「何もしないよ」

 「よしよし」と幼子を宥めるような仕草に拍子抜けし、腕の中でジェイドを見上げた。優しく細まる瞳で俺を捉えると「うん?」と首を傾げて頭を撫でてくる。

「な、に、お前」
「何って、生徒のメンタルケアも教師の大切な仕事だからね」
「だからって、この体勢は、その……」
「おかしいって?」
「うん」
「でも、こうしてるとなんだか落ち着かない?」
「そうか……?」

 そう言われれば、そんな気もしてくる。
 腕の中にすっぽりと収まる感じは悪くない。けれど、同時に小っ恥ずかしい。大人になってからは、こんなことをしてもらうことなんて滅多にないし。

 おずおずとジェイドの胸板に顔を埋める。枕と同じ甘い香りが鼻腔を擽り、どこか落ち着かなかったが、くすくすと笑うジェイドに頭を撫でられればすぐに気にならなくなった。
 とくとくと規則正しい心音に荒れ果てていた心を撫でられて少しずつ凪いでいく。

「落ち着いた?」
「……別に」
「そっかそっか。……あのことは誰にも言わないから安心して」
「あ、当たり前だろ!」

 バッと顔を上げると、「そうすぐ怒らないの」と元に戻された。そして、わしゃわしゃと髪をかき混ぜるのだ。

「俺とモーヴ君、2人だけの秘密。ね?」
「……うん」

 子供扱いされている感が否めないが、まぁいいかと投げやりになる。

 だって、安心するし。

 不慮の事故で大変なことになってしまったが、ヴィクターと違って常識あるし良心的だし。兄ちゃんがいたらきっとこんな感じだったんだろう。

 実は兄と言う存在に憧れがある。「お兄ちゃんなんだからしっかりしなきゃ」とか「お兄ちゃんなんだから妹のことは守ってあげなさい」とか、兄に生まれた運命とも呼べる言葉の数々を言われてきたわけだが、兄としての自覚もないまますくすく育ってしまった俺には微塵も理解できなかった。いやだって、手本もなしにできるわけないだろ。
 守ってあげろというが、俺にいわせてみれば、出来損ないの兄を反面教師に、器用に世の中を渡り歩く妹の方がよっぽど逞しかったよ。俺が高校を卒業したあたりからパワーバランスは完全に逆転していたし。

 俺にも兄ちゃんがいたら、もう少しましな人生を送れていたのかな、なんてらしくもなく感傷にふけていると、どこからともなく現れた寂しさがむくむくと大きくなり心の大部分を占めてしまう。

 それで、つい目の前にある体にしがみついた。隙間をなくすように腕を回し、ぎゅうぎゅうと抱き着けば頭を撫でる大きな手が止まる。

「モーヴ君、さぁ……」
「ジェイド?」

 何か言いたげなジェイドの表情に小首を傾げる。もっと撫でてほしくて服を引っ張る。けれど、動き出したのは頭に添えられた手ではなく、腰を支える手だった。円を描くようにゆっくりと撫でるその動きに、さらに首を傾ければ、ジェイドは目を細めて「うーん」と唸り始める。

「どっちかなー、これは」
「何が?」
「んーん、こっちの話」

 お茶を濁され、むっと唇を突き出す。後頭部に回された手に頭を押し付けてジェイドを見上げた。意図を汲んでくれたのか、髪の毛に沈んだ手が上下に動き始める。上から下へ撫で下ろす手の平が、項にたどり着くと襟足をかき分けて肌を優しく撫でてきた。そわそわとした感覚に笑いながら「くすぐったい」と身を捩る。

「くすぐったいだけ?」
「うん」
「じゃあ、こっちは?」

 そう尋ねるジェイドは、項を撫でていた指で首筋を擽りながら、ゆっくりと移動させる。
 そしてたどり着いた耳たぶ、親指と人差し指で挟まれ、感触を楽しむように揉んだあと耳の中へ入り込む。凹凸のすべてに指を這わせて形を確かめられると、それだけで治まっていた熱がぶり返してきた。

 さっきので出し切ったのか反応こそしないけれど、下半身を覆い尽くす熱は確かに存在していて、耳を弄る指先を握った。

「耳は、やだ」
「どうして?」
「だって、何か、変な気持ちになるから」
「変な気持ちになっちゃうんだ」

 やけに嬉しそうな笑顔のまま、次は腰を支えていた手を下らせ、白衣の上から尻を撫でられる。尻全体を撫でほ回した手が下から持ち上げるように尻肉を持ち上げ、そして柔らかく揉むのだ。
 ジェイドが塗った軟膏のおかげで尻の麻痺は治っているはずなのに、その優しい刺激だけで息が上がってしまう。
  
「ジェイド、それっ、……なんか、ぁ、ゃ」

 体に溜まった甘い疼きに、ジェイドにしがみついた。腕の中で見上げて小さく首を振る。すると、ジェイドはその端正な顔立ちを愉悦に歪めた。

 そして、くるりと体を反転させる。横向きに寝ていたはずが、仰向けに転がされていて、上にはジェイドがいた。
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