R18BLゲームの序盤で処刑されるモブキャラなのに何故か攻略対象に狙われています。

白井ゆき

文字の大きさ
24 / 63
イベントは阻止するもの

推しと友達になれました

しおりを挟む
 普段の射精とどこか違って、あとを引く甘い疼きが体に残る。どこもかしこも敏感で、ミリたその呼気ひとつで体を震わせると笑われ、その振動でまた跳ねる。
 そんなことを繰り返していれば、少しずつ理性を取り戻した頭が現状を正しく理解し始め、羞恥心に体を覆われる。

 やってしまった。いや、この場合はヤラれてしまった……?
 笑えない。あぁ、でも最後までしていないし未遂か。だとしても十分まずいけれど。
 とにかく、とんでもなくまずい状況であることは確かだ。

 一体、何でこんなことになってしまったのか。頭を回して思い出すけれど、ローションを取り出したあたりからどうもおかしい。
 ミリたその設定は慎ましい美少年ではなかったのか。いや、確かにそうだったはずだ。恥じらう姿が愛らしいと話題になったから間違いない。
 じゃあなんだ。この短期間で手を出されすぎて自らローションを持ち歩く様になってしまったというのか。……まぁ大事だけど。ミリたその可愛い尻が裂けてしまうなんて事態があっていいわけないけれども。
 だからといって他人の尻のためにそれを使って、さらにはその相手が俺だなんて、どう割り切ればいいんだ。

「モーヴ君、そろそろ落ち着きましたか?」
「っ、はい!」

 やたらと活きのいい返事をしてしまった。
 くすくすと控えめに笑いながら俺の顔を覗き込むその姿は、さっきまで人の中を掻きまわしていたようには見えず、清純という言葉がぴったりだ。

 ついつい掴んだままだった手を離し、ぐちゃぐちゃの下半身を隠す様に身を縮める。シャツを伸ばし、できる限り隠しながら無邪気に笑うミリたそを見れば伸びてきた手に頬を撫でられた。

「へぁっ……?! あ、なに、でしょう」
「どうでした?」
「……どうだったとは……?」
「気持ちよかったでしょう?」
「……へ?」

 邪気のない顔。だからこそ真意が分からず身を固くする。

「この学校入ってから、嫌なことばっかりだなって思ってたんです」
「……」
「でもね、全部モーヴ君を満足させるための試練だったと思うと悪くないなって思います」
「……うん?」
「気持ちいいこと共有できて、嬉しいです」

 そう言って、花が咲いたように笑う姿に確信する。

 ……あぁ、これはあれだ。ミリたそを襲ったヤツらが悪い。度重なるハプニングがミリたそをおかしくしてしまったんだ。普通はお礼で人のケツなんて弄らないんだよ。
 なんてかわいそうなんだ。可愛く生まれてしまったばかりにこんなおかしな常識を植え付けられてしまうなんて。まだ15歳なのに……。

「今までなんて苦労を……」

 送る視線に同情を滲ませてしまう。
 その小さな手を握り締め慰めたいところではあるが、お互いあれやこれやで汚れているので、それはやめておく。

 小さな体で一体どれほどの苦労を抱えているのか計り知れないが、それをおくびにも出さないとは。なんて健気なんだ。現代日本は彼を優先的に保護すべきだ。

 にこにこと笑う姿に涙を禁じ得ないが、……何というか、あれだな。汚いな。
 ミリたその頬についている精子は、そのかわいい顔には似合わない。俺のせいだけど。前世では毎日のようにかけていましたけれども。生のミリたそで、しかもその心情を知った今となっては罪悪感で直視できない。

 毎朝エリオットが用意してくれるハンカチをポケットから取り出し、ミリたその頬に当てて、相応しくないその汚物をふき取る。

「拭いてくれるんですか?」
「え、あ、……へぃ」
「優しい……」

 そう言って頬をすり寄せてくる。ハンカチ越しに感じる柔らかな質感に元気な息子が顔をあげようとするのを、頬の内側を噛んで阻止する。

「まぁ、その……へへ、ミリエルさんにだけっすよ」
 
 へこへこ首を前に出して首を掻くと、頬に当てていた方の手が、ミリたその手に包まれる。
 ミリたそからの接触にドギマギしつつ目を泳がせていると「なんで」と呟く。

「何で、さっきみたいに呼んでくれないんですか?」
「へっ」

 白くて柔らかそう、というかめちゃくちゃ柔らかい頬をぷっくりと膨らまし、むくれるミリたそに目が点になる。

 さっきみたいに、とは……? ……話したこともないただのクラスメイトでしかない俺が馴れ馴れしくミリたそと呼ぶなんて許されないと慎重にしていたつもりだったが、もしかして口にしてしまっていたのだろうか、あの喜色の悪い愛称で。
 うわ最悪だ最悪すぎる。絶対引かれたドン引きだろこんなの確実に気持ち悪いと思われた通報されて残りの人生は薄汚い牢獄で……――。

「……え、あの、呼んでいいんすか……?」

 俺の聞き間違いでなければ、ミリたそのカナリアのような声は「なんで呼んでくれないんですか」と言っていた気がするんだが……?
 いやいや、俺のキッショい妄想じゃないんだからそんな訳ないだろ。

 言ったそばから己の痛さに気分が悪くなる。いくら貴族という身分があっても許されない。

「な、なんちゃてー、はは――」
「うん、呼んでほしい」
「はは……え?」
「呼んで?」
「はわ、はわわ」

 夢? これは夢でしかないだろいやでもじゃあチンコ丸出しはおかしいよなてかなんでこの状況で呑気に呼び方にこだわってるんだマイペースすぎるだろまぁそういうところも可愛いんですけれども。

「嫌?」
「よ、呼びます! 呼ばせていただきます!」

 ミリたそに掴まれていない方の手を真っ直ぐと上に伸ばして姿勢も正す。ついでに首も激しく振っておく。
 推しの願いを叶えないオタクはいないので。数年に渡りミリたその顔(ディスプレイ越し)を汚してしまった罪が薄まるなら安いもんよ。

 さぁ、呼んでくださいと言わんばかりの輝く瞳を向けられ緊張で高ぶってしまうけれど、その期待を裏切るわけにはいかず、乾いた唇を舐めて口を開く。

「み、みりっ、みりたそ……さん」
「さんはいらないです」
「あ……みり、たそ」
「なんですか、モーヴ君」
「わ……」

 これは許されるんだろうか。何かの間違いで俺みたいにこの世界に飛ばされたミリたそのオタクに呪い殺されてしまうんじゃないんだろうか。いや転生してなくとも、正真正銘この世界の住民である人間の中だけでも、ファンとか親衛隊とかがいるだろうし、快楽刑の前に殴り殺されるかもしれない。

 とにかく満面の笑みのミリたそに名前を呼ばれるのはそのくらい凄まじくて、輝かしい笑顔を前に固まる俺の手に頬を寄せてすりすりとし始めるのだから堪ったものではない。

「僕ずっと憧れだったんです」
「あこがれ……」
「はい。友達にあだ名で呼ばれてみたかったんです」
「と、友達!?」
「はい。……あれ、違いましたか……?」
「はぅ……! いえ! 友達です! なりたいです!」
「嬉しい!」

 「よろしくお願いします」と差し出される手をまじまじと見つめる。

 俺とミリたそが友達……? 友達ってあれだよな、放課後にマックで駄弁ったりゲーセンで格ゲーをする関係性で合ってるよな? それともなんだ、この世界の友達は挨拶を交わすだけのような浅い関係性だったりするのか。いや、それでも嬉しいけど。生身のミリたそ最高だけれども。

 人間とは欲深い生き物なので、一度極上の餌を見せられるとそれが欲しくなるというもので。

 精子に塗れた決して綺麗とは言えない手に恐る恐る手を伸ばし、熱い握手を交わした俺の心臓は、期待と興奮でとくとくと脈打っていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

転生したが陰から推し同士の絡みを「バレず」に見たい

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

処理中です...