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イベント阻止の影響
心配性な従者
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辺りを見渡すと、正門の柱の陰に見慣れた執事服を見つけ、目を見開いた。
「エリオット!?」
思いの外響いた声に口を押え、隣で目を丸くするミリたそに謝る。
「あ、ごめん、俺の従者で……」
柱の陰からこちらへ踏み出そうとして、止める。不可解な動きを繰り返すエリオットに首を傾げたが、学校の規則を思い出した。
従者が自由に出入りできるのは寮内だけ。その規則を順守しているのだ。
帰りが遅いから迎えに来たとかそんなところだろう。昨日のこともあるし、なおさら心配をかけてしまったのかもしれない。
「ちょっと待ってて!」
ミリたそに一声かけてエリオットに駆け寄れば、腕を引かれ抱き締められた。体に回された腕の力強さにたじろぎ、「エリオット!?」と声が裏返った矢先、「よかった……」なんて泣きそうな声が聞こえれば、罪悪感でいっぱいになる。
「ごめん……」
「一体こんな時間まで何をされていたんですか? 心配したんですよ」
「な、何って、ええと……」
寝ていました……。
馬鹿正直にそんなことを言えるはずもなく口ごもる。案の定、怪訝な視線を送られたが、なんと言っていいのかわからず、そっとエリオットの体を押し退けたときだ。
「一緒に課題をしていたんです」
「ね、モーヴ君」とミリたそに肩を掴まれた。そのまま引き剥がしてもらいつつ、必死に頭を縦に振った。
「そ、そう! 課題を一緒に、分かんないとこあったからさ、教えてもらってたっていうか、ほら、話も弾んじゃってさ、盛り上がってるうちに気づいたら……みたいな? 感じで……」
しどろもどろ。誰がどう見たって怪しいが、ミリたそが至って普通の態度で相槌を打ってくれるおかげで、エリオットの視線も和らいでいく。完全に信じたわけではないようだが、人前だからなのか、深くは追求されず胸を撫で下ろした。
「今後は事前に連絡をください。教務課を通せば寮に帰らずとも言付けできますから」
「そうなのか?」
完全に初耳だったが、呆れたようなエリオットの視線と、「入学式の日に先生が言ってましたよ」というミリたその耳打ちで身を縮ませた。
入学式後のHRで説明があったのだろう。その日の俺は自分がエロゲのモブキャラに転生したという事実でいっぱいいっぱいで、正直それどころではなかったのだ。ごめん、エリオット。
「ご、ごめん。これからは気を付ける……」
「そうしてください。モーヴ様に何かあっては旦那様に顔向けできません」
「分かった……。……あ、あの、この子が昨日話した新しい友達のミリたそ。……で、こっちが俺の従者エリオット」
いたたまれなくなって、慌てて話題を変えた。
魂胆を見透かしたエリオットの顔が不満気に歪んだけれど、それも一瞬のことで、すぐにミリたそと向かい合ってくれる。互いに挨拶をし終わったところで、「でさ!」と再び話を切り替えた。
「今度の週末、ミリたそと一緒に遊び行きたいなって話してたんだけど……行っていい?」
「今週末、ですか?」
エリオットの反応は渋い。
タイミングはミスった気もするが、本人がいる前で断らせることにエリオットが罪悪感を抱いてくれるのではないかと言う僅かな望みに掛けたのだ。
やはり、明日話すべきだったかも……。いや、でも明日は明日で、そんな急に言われても困りますと断られるかもしれないわけで。
「そう、今週末……。……だめ?」
ここで押し切るしかないと、エリオットの袖を掴んで強請る。
だって、ミリたそのお願い何てできることなら欄でも聞いてあげたいし、そうでなくともミリたそとのお出かけと言う激レアイベントを逃したくない。
これは、舞台装置でしかない俺が攻略対象からミリたそを掠めとるために必要なことなんだ。ここを逃せば、処刑エンドの可能性だって生まれるわけだし。
「なぁ、エリオット」と見上げれば、何だか一段と険しい顔になったのは気のせいであってほしい。
「僕からもお願いします。今日みたいに、遅くならないように気を付けます。……だめでしょうか?」
大きく一歩前に出たミリたそがエリオットと距離を詰める。その距離間にエリオットは一瞬たじろいて見せたが、ミリたそと目が合うとぴたりと動きを止めた。
……見惚れてるな。
気持ちは分かる。俺の身長でさえ、ぐっとくるんだ。エリオット程の長身なら、あまりの可愛さに呼吸を忘れてしまうのも無理はない。
エリオットは俺と違って現実ではもちろん、画面越しの交流ですらなかったから、その効果は計り知れない。俺だって、その距離その角度で見つめられたら動きどころか呼吸まで止めちゃうんだろうけど。
だけどさ、一応主人である俺には顔顰めたくせにミリたそにはそんな反応するんだって思っちゃう俺もいるわけで。
ミリたそより俺の方が可愛い何てバカな事を考得ているわけではないけれど、長年付き添った従者が自分以外に意識を向けているのを見るのは何だか面白くない。
ぽぅっと見惚れたように、どこか上の空なエリオットがにっこりと口角を上げるから尚更。
「……いいですよ」
「わぁ、ありがとうございます!」
「……」
「楽しみですね、モーヴ君!」
「うん……」
振り返ったミリたそが俺に微笑みかける間もエリオットの視線はぼんやりとしたままだ。
いつもと違うエリオットの態度に釈然としない気持ちを抱えながら決意する。
二度とエリオットとミリたそを会わせてやるか、と。
「エリオット!?」
思いの外響いた声に口を押え、隣で目を丸くするミリたそに謝る。
「あ、ごめん、俺の従者で……」
柱の陰からこちらへ踏み出そうとして、止める。不可解な動きを繰り返すエリオットに首を傾げたが、学校の規則を思い出した。
従者が自由に出入りできるのは寮内だけ。その規則を順守しているのだ。
帰りが遅いから迎えに来たとかそんなところだろう。昨日のこともあるし、なおさら心配をかけてしまったのかもしれない。
「ちょっと待ってて!」
ミリたそに一声かけてエリオットに駆け寄れば、腕を引かれ抱き締められた。体に回された腕の力強さにたじろぎ、「エリオット!?」と声が裏返った矢先、「よかった……」なんて泣きそうな声が聞こえれば、罪悪感でいっぱいになる。
「ごめん……」
「一体こんな時間まで何をされていたんですか? 心配したんですよ」
「な、何って、ええと……」
寝ていました……。
馬鹿正直にそんなことを言えるはずもなく口ごもる。案の定、怪訝な視線を送られたが、なんと言っていいのかわからず、そっとエリオットの体を押し退けたときだ。
「一緒に課題をしていたんです」
「ね、モーヴ君」とミリたそに肩を掴まれた。そのまま引き剥がしてもらいつつ、必死に頭を縦に振った。
「そ、そう! 課題を一緒に、分かんないとこあったからさ、教えてもらってたっていうか、ほら、話も弾んじゃってさ、盛り上がってるうちに気づいたら……みたいな? 感じで……」
しどろもどろ。誰がどう見たって怪しいが、ミリたそが至って普通の態度で相槌を打ってくれるおかげで、エリオットの視線も和らいでいく。完全に信じたわけではないようだが、人前だからなのか、深くは追求されず胸を撫で下ろした。
「今後は事前に連絡をください。教務課を通せば寮に帰らずとも言付けできますから」
「そうなのか?」
完全に初耳だったが、呆れたようなエリオットの視線と、「入学式の日に先生が言ってましたよ」というミリたその耳打ちで身を縮ませた。
入学式後のHRで説明があったのだろう。その日の俺は自分がエロゲのモブキャラに転生したという事実でいっぱいいっぱいで、正直それどころではなかったのだ。ごめん、エリオット。
「ご、ごめん。これからは気を付ける……」
「そうしてください。モーヴ様に何かあっては旦那様に顔向けできません」
「分かった……。……あ、あの、この子が昨日話した新しい友達のミリたそ。……で、こっちが俺の従者エリオット」
いたたまれなくなって、慌てて話題を変えた。
魂胆を見透かしたエリオットの顔が不満気に歪んだけれど、それも一瞬のことで、すぐにミリたそと向かい合ってくれる。互いに挨拶をし終わったところで、「でさ!」と再び話を切り替えた。
「今度の週末、ミリたそと一緒に遊び行きたいなって話してたんだけど……行っていい?」
「今週末、ですか?」
エリオットの反応は渋い。
タイミングはミスった気もするが、本人がいる前で断らせることにエリオットが罪悪感を抱いてくれるのではないかと言う僅かな望みに掛けたのだ。
やはり、明日話すべきだったかも……。いや、でも明日は明日で、そんな急に言われても困りますと断られるかもしれないわけで。
「そう、今週末……。……だめ?」
ここで押し切るしかないと、エリオットの袖を掴んで強請る。
だって、ミリたそのお願い何てできることなら欄でも聞いてあげたいし、そうでなくともミリたそとのお出かけと言う激レアイベントを逃したくない。
これは、舞台装置でしかない俺が攻略対象からミリたそを掠めとるために必要なことなんだ。ここを逃せば、処刑エンドの可能性だって生まれるわけだし。
「なぁ、エリオット」と見上げれば、何だか一段と険しい顔になったのは気のせいであってほしい。
「僕からもお願いします。今日みたいに、遅くならないように気を付けます。……だめでしょうか?」
大きく一歩前に出たミリたそがエリオットと距離を詰める。その距離間にエリオットは一瞬たじろいて見せたが、ミリたそと目が合うとぴたりと動きを止めた。
……見惚れてるな。
気持ちは分かる。俺の身長でさえ、ぐっとくるんだ。エリオット程の長身なら、あまりの可愛さに呼吸を忘れてしまうのも無理はない。
エリオットは俺と違って現実ではもちろん、画面越しの交流ですらなかったから、その効果は計り知れない。俺だって、その距離その角度で見つめられたら動きどころか呼吸まで止めちゃうんだろうけど。
だけどさ、一応主人である俺には顔顰めたくせにミリたそにはそんな反応するんだって思っちゃう俺もいるわけで。
ミリたそより俺の方が可愛い何てバカな事を考得ているわけではないけれど、長年付き添った従者が自分以外に意識を向けているのを見るのは何だか面白くない。
ぽぅっと見惚れたように、どこか上の空なエリオットがにっこりと口角を上げるから尚更。
「……いいですよ」
「わぁ、ありがとうございます!」
「……」
「楽しみですね、モーヴ君!」
「うん……」
振り返ったミリたそが俺に微笑みかける間もエリオットの視線はぼんやりとしたままだ。
いつもと違うエリオットの態度に釈然としない気持ちを抱えながら決意する。
二度とエリオットとミリたそを会わせてやるか、と。
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