R18BLゲームの序盤で処刑されるモブキャラなのに何故か攻略対象に狙われています。

白井ゆき

文字の大きさ
51 / 63
初デートの鉄則

夢か現か

しおりを挟む
 シャワーを浴びて温まった体にバスローブを巻き付ける。初めて着たけれど案外ふわふわしていて気持ちいい。
 因みに、ミリたそがバスローブを着ていたのは単に服を乾かしているからだった。脱衣所に掛けられた濡れた服を見てようやく気が付いた。そりゃそうだ。考えて見れば分かることだが仕方ない。ラブホらしきこの部屋に無防備な推しと2人きりというこのシチュエーションで冷静さを保っていられるわけがない。
 ついつい興奮して2発も出してしまったが、おかげで冷静さを取り戻したのでよしとする。直接危害を加えるよりはマシだよな。うん。

 扉を開く前、一応深呼吸をしてから力を込める。決して他意はない。
 ドアの隙間から部屋の様子を窺えば、ソファの背もたれからミリたその頭が確認できた。

 そうですよね。ミリたそはソファに座るタイプです。ベッドには座りません。解釈一致です。現代日本に存在していたら気を紛らわすために付けたテレビからAVが流れて慌てふためくタイプです。そして「何やってんだよ」って揶揄われて顔真っ赤にするんですよね。
 ……待てコイツ誰だ。少なくとも俺ではないな散れ。

「モーヴ君、あがったんですね」
「あ、はい! あがりました!」
「……そこに居たら疲れてしまいませんか?」

 ソファ越しに振り返ったミリたその眉がわずかに下がる。

「いえそんな滅相もない! お気になさらず!」

 これ以上近づくと何をしてしまうか分からないので!
 喉元まで出かかった言葉を飲み込み、脱衣所から出した首をぶんぶん振る。すると、ミリたその眉はもっと下を向き、さらには顔を俯かせてしまう。

「あ……やっぱり嫌ですよね、僕の隣なんて……」
「何を! 喜んで座らせていただきます!」

 今にも消え入りそうなそんな声が聞こえれば、カスみたいな理由でこんな変な場所に立っているわけにはいかない。すぐさま飛び出してミリたその隣へ飛び込むように腰を下ろす。
 すると、ホテル備え付けの香りの強いボディソープの奥からミリたそ特有の甘い香りを感じられて、うっと座面ギリギリまで離れてからミリたそを見る。けれど、まだ浮かない顔のままだ。

「ど、どうかされましたか……」

 そう尋ねてからハッとする。
 どうもこうも絶対俺の恰好が原因だろ。バスローブ姿が見るに堪えなかったに違いない。そうだよな、こんなんチンコ丸出しも同然だしな。

「これは服が乾いていなかったからであって、それ以外の思惑は一切ないので安心してください」
「……?」
「……服のことでは?」
「違います! ただ……」

 バスローブ姿を誤解されていないことに胸を撫で下ろしつつ、「ただ?」と聞き返せば、そろりと上目で窺われた。

「無理をさせてしまっているのではないかと思って……」
「無理?」
「いくら雨宿りのためとはいえ、こんな場所に僕と2人きりは嫌ですよね……」

 そんな天地がひっくり返ってもありえないことを言いだすものだからぎょっとする。「そんなことは!」と吃りながら否定しても、悲しそうな顔のまま「でも、モーヴ君さっきから様子おかしいです」と呟いて距離を詰めてきた。
 着衣状態でも慣れない距離感に慌てて上体を反らしたところで、合わせから覗く素肌の先、頭の中で散々チンコを擦りつけてしまった乳首が見えそうなことに気付き、慌てて斜め上へと視線をずらす。

「ふ、普通だと思います……」
「ほら、目を合わせてくれないじゃないですか……」
「それは緊張と言うか目のやり場に困るというかそんな薄着で迫られると理性が限界を迎えるというか――」

 自分が何を口走ったか気付いたときにはもう遅い。一瞬、きょとんと目を瞬かせたミリたその顔がほのかに赤くなるのを見て反対に顔を青くした。

「ま、待って、今のなし、忘れて……っ」

 必死に訂正を重ねるが正直意味があるのか分からない。どう取り繕ったってさっきの発言には下心しか含まれてないし。この世界で怯える子に向けていい言葉ではなかったよな絶対。
 でも悲しきかな。上手く誤魔化すことができるほど俺の頭は優秀ではなく。

 目の前で瞼を伏せるミリたそに掛ける言葉を探していれば、「それって」と口を開く。

「僕のこと意識してくれているってことですか?」
「あ、ぁー……そう、なります、かね……」

 しどろもどろ。返答こそ曖昧だがすでに2回おかずにさせていただいています。すみません。
 あぁ、終わった。死にたい。愚か者はこうやって身を滅ぼすんですね。俺が超絶スパダリな攻め様だったら結果は違っていたんでしょうか。こんな形の赤面ではなく真っ当な俺だけの赤面スチルをゲットできたいたんでしょうか。

 後悔したって時すでに遅し。時間を操作する魔法がないことは確認済みなので、あまりに残酷なこの現実を受け止めるほかない。とはいえ、そう簡単に受け入れることはできず項垂れていれば、不意にミリたその太腿が俺の太腿に触れる。
 決して厚くはないタオル地2枚越し。ぴったりと寄りそうようにくっつく太腿の柔らかな感触に体を強張らせると、行儀よく膝の上に置いていた手を上から包まれた。

「ひぇ……あの、手……」
「モーヴ君も僕とそういうことをしたいということですか?」
「は、はい……って」

 モーヴ君”も”?

 顔を上げれば思いの外至近距離にいるミリたそと目が合い、ふわりと綻んだ可愛い顔に心臓が跳ねる。
 「嬉しい……」と小さく零したミリたそが一層体を寄せてきて狼狽えたとき。

「わ、わ、ミリたそ――んっ」

 唇が柔らかい感触の何かに包まれる。目の前に広がるのはきめの整った白い肌と、閉じた瞳を縁どる長い睫毛。何故なんて考える余裕もない。呼吸すら忘れれてしまう程体を硬直させた俺の頬を、濡れた髪が擽った矢先。ゆっくりと唇を離したミリたそが瞼を上げた。
 ハチミツを溶かしたような目を細めるミリたそに、震える唇を動かす。

「い、今……」

 キス、された……?
 そんなわけない夢だろと脳内の自分が全力で否定してくるけれど、手を包み込む手にきゅっと力が籠められる感覚や、少し身じろぎしただけで再び唇が触れ合ってしまいそうな距離にいるミリたその吐息の熱さは、夢と結論付けるにはあまりにもリアルで。

「嫌でしたか……?」

 その問いかけに気が付けば小さく首を振っていた。
 嬉しそうに目を細めたミリたそは、俺の手を掴んでいた手を太腿へ移動さる。その手が付け根の方へゆっくりと上がっていき、口内に溜まった唾液を飲み込んだ。

「……僕は、モーヴ君とこの先もしたいです」
「こ、この先……?」
「はい。キス以上のこと」
「ぃや、あ、え……」
「……だめでしょうか?」
「…………いいん、です」

 か。言い終わるよりも先に、ミリたその柔らかい唇が押し当てられていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

転生したが陰から推し同士の絡みを「バレず」に見たい

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

処理中です...