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戦闘終了
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ハーピーに運ばれ、巨人たちに注目されながら人間たちの陣があったその真ん中に降りる。
壊れた柵や、人間の遺体がゴロゴロ転がっているが、魔物たちは、人間を魔界から追い出して勝利に浮かれているようだった。
「陛下、人間どもは逃げ出しました。我らの完全勝利です」
デュラハンが跪いて報告する。
「うむ、ご苦労」
俺はゆっくりと賢者と神官を地面に下した。
すると、賢者は駆けだした。逃げ出したのかと思ったが、人間どもの躯に近づき呪文を唱える。すべてではないが、何人かは奇跡的に生き返る。
「よし、皆の者、聞け。もう戦いは終わった。無駄な死は必要ない。賢者のもとに遺体を運べ」
そうして、敵味方関係なく、賢者は運ばれてくる者たちの蘇生を試みた。死んでから時間が経ち過ぎていたり遺体の損傷状態で蘇生できる者とできない者に分かれるようだ。
「おい、お前も賢者を手伝ったら、どうだ」
突然の賢者の行動を、ただぼうっと見ていた神官に俺は声を掛けた。
すると、彼女は何かを思い出したようにハッとして門の方へ駆けていく。
「ん?」
神官は脱兎のごとく逃走した。俺は触手を伸ばさなかった。いまさらこちらの勝利は揺るぎないので、おれは見逃すことにしたのだが、コボルトの一匹が神官の逃走に気づいて矢で射ようとしたので俺が触手で止めた。
「我らは、勝った。小さな虫を一匹逃がしたところで、変わらん」
そう叫ぶと、門に向かう神官に魔族たちが道を開ける。
だが、神官は門に飛び込む前に、こちらをキッと振り返り、いざというときのために地面に書いておいた魔法陣に最後の一文字を加えて門の向こうに消えた。
「ん、やられたか?」
敏感な俺の触手が、門の前に見えない壁を感じる。そう、神官は門をふさぐような巨大な魔法の壁を残して行ったのだ。こちらが人間界に攻めてこれないようにする魔法陣を残して逃げたようだ。
こちらから人間界を攻めるつもりはもともとなかったが、戦略的な選択肢を狭められたのは事実である。
「やられましたな、陛下」
それに気づいたデュラハンも肩をすくめている。
「ま、いいさ。とりあえず、これでしばらくは平和になるだろう」
俺は賢者に近づいた。すると蘇った小数の兵が俺と賢者の間に割って入る。が、賢者は彼らを押しのけて俺に近づいた。
「私は人間界に帰れないようですね。捕虜ですか?」
「いや、勇者がいない上、お前だけでは脅威にならん。自由にしろ。悪いが、引き続き、敵味方関係なく、助けられる者は助けてやってくれ」
俺は触手で楽しんだばかりであり、賢者に固執する理由もない。
「分かりました」
そうして、賢者は戦った者たちを救い続けた。
賢者というよりは聖女だな。
俺は彼女の姿を見てそう思ったが、魔王として、戦後処理というものがあった。人間の中には我らを恐れて降伏した者もいた。そういう者たちを収容する施設として、奴隷の収監所として使われていた建物を再利用した。
人間界に一人残らず送り返したかったのだが、神官の残した魔法陣により、門は完全にふさがれ、送り返せないのでそこに収容することにしたのだ。
見えない壁がいつ消えるか分からないので、デュラハンの提案で、門を見張るための城が築かれることになった。
賢者も人間界に戻れなくなり、人間界のことを教えてもらう教師として、魔界で、俺の庇護下で来賓扱いで生活することになった。
壊れた柵や、人間の遺体がゴロゴロ転がっているが、魔物たちは、人間を魔界から追い出して勝利に浮かれているようだった。
「陛下、人間どもは逃げ出しました。我らの完全勝利です」
デュラハンが跪いて報告する。
「うむ、ご苦労」
俺はゆっくりと賢者と神官を地面に下した。
すると、賢者は駆けだした。逃げ出したのかと思ったが、人間どもの躯に近づき呪文を唱える。すべてではないが、何人かは奇跡的に生き返る。
「よし、皆の者、聞け。もう戦いは終わった。無駄な死は必要ない。賢者のもとに遺体を運べ」
そうして、敵味方関係なく、賢者は運ばれてくる者たちの蘇生を試みた。死んでから時間が経ち過ぎていたり遺体の損傷状態で蘇生できる者とできない者に分かれるようだ。
「おい、お前も賢者を手伝ったら、どうだ」
突然の賢者の行動を、ただぼうっと見ていた神官に俺は声を掛けた。
すると、彼女は何かを思い出したようにハッとして門の方へ駆けていく。
「ん?」
神官は脱兎のごとく逃走した。俺は触手を伸ばさなかった。いまさらこちらの勝利は揺るぎないので、おれは見逃すことにしたのだが、コボルトの一匹が神官の逃走に気づいて矢で射ようとしたので俺が触手で止めた。
「我らは、勝った。小さな虫を一匹逃がしたところで、変わらん」
そう叫ぶと、門に向かう神官に魔族たちが道を開ける。
だが、神官は門に飛び込む前に、こちらをキッと振り返り、いざというときのために地面に書いておいた魔法陣に最後の一文字を加えて門の向こうに消えた。
「ん、やられたか?」
敏感な俺の触手が、門の前に見えない壁を感じる。そう、神官は門をふさぐような巨大な魔法の壁を残して行ったのだ。こちらが人間界に攻めてこれないようにする魔法陣を残して逃げたようだ。
こちらから人間界を攻めるつもりはもともとなかったが、戦略的な選択肢を狭められたのは事実である。
「やられましたな、陛下」
それに気づいたデュラハンも肩をすくめている。
「ま、いいさ。とりあえず、これでしばらくは平和になるだろう」
俺は賢者に近づいた。すると蘇った小数の兵が俺と賢者の間に割って入る。が、賢者は彼らを押しのけて俺に近づいた。
「私は人間界に帰れないようですね。捕虜ですか?」
「いや、勇者がいない上、お前だけでは脅威にならん。自由にしろ。悪いが、引き続き、敵味方関係なく、助けられる者は助けてやってくれ」
俺は触手で楽しんだばかりであり、賢者に固執する理由もない。
「分かりました」
そうして、賢者は戦った者たちを救い続けた。
賢者というよりは聖女だな。
俺は彼女の姿を見てそう思ったが、魔王として、戦後処理というものがあった。人間の中には我らを恐れて降伏した者もいた。そういう者たちを収容する施設として、奴隷の収監所として使われていた建物を再利用した。
人間界に一人残らず送り返したかったのだが、神官の残した魔法陣により、門は完全にふさがれ、送り返せないのでそこに収容することにしたのだ。
見えない壁がいつ消えるか分からないので、デュラハンの提案で、門を見張るための城が築かれることになった。
賢者も人間界に戻れなくなり、人間界のことを教えてもらう教師として、魔界で、俺の庇護下で来賓扱いで生活することになった。
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