怪異の忘れ物

レンタルゾンビ

絶対に儲かると思っていたが、映画の影響で、ゾンビが人に噛みつき、噛みつかれた人がゾンビになってしまうというデマで、だれも、ゾンビを借りてくれなかった。ゾンビとは、ブードー教の秘術で、死体を操り、奴隷として働かせるものであり、本来は映画のように人を襲ったりしない。死体なので、文句も言わず力仕事をこなす。もう死んでいるからこき使っても、過労死にはならないお得な労働力のはずだったが、映画の悪影響で、ゾンビを借りようという企業は出てこなかった。牛丼屋のチェーン店でワンオペで働いていた店員が死ぬという痛ましい事件があっても、ゾンビのレンタル依頼は来なかった。
防腐剤や添加物の多い食事を現代人は多く食べているので、死体とはいえ、腐りにくく、長持ちするのに、誰もゾンビを借りてくれなかった。
それどころか、秘術を施して、せっかく従順なゾンビにして巨大な冷蔵庫のある倉庫に保管していたが、映画を信じた過激な連中が、倉庫を襲撃しゾンビは駆除すべきだと、倉庫を放火した。
私がいくら映画は嘘で、本物のゾンビは従順で言いなり通りに働くと訴えても、誰もが創作である映画のウソを信じて、私の事業は失敗した。