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屋上の彼
三、
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「寒いねぇ。こういう冬こそバニラアイスが美味しいんだよねぇ」
学校の屋上から降りてきた俺と先生は、駅近くのコンビニに来ていた。
寒い寒いと両の手を擦りあわせながら、アイスクリームや氷が陳列されたケースの前で品定めする先生。
夕方と夜の間が短い冬は、すぐに暗くなるし、寒さが増す。駅の近くだというのに店内は俺と先生しかいなかった。安っぽい音質のクリスマスソングと、サンタ服を纏う店員。異様な空間を感じていた。
「どれがいいですか。買ってあげますよ。誕生日なんでしょ」
「違うよ、誕生日は28日。今日はクリスマス。一緒くたにしないで」
ぷく、と頬を膨らませる先生は、俺に反論しているくせに俺を一度も見ないで、ケースからひとつのアイスを取り出した。
「あれ。バニラアイスじゃなくていいんですか。それ、チョコレート味ですよ」
「いいんだ、これが食べたい」
つい、と俺の袖を引っぱってレジに向かう先生。俺は慌てて同じアイスをひとつ掴み、先生を追う。
「チキンも美味しそうだったよねぇ」
立てつけの悪い自動ドアを抜け、先生は首を縮こめて言った。
「頼めばよかったじゃないですか。どうせ俺の支払いなんですし」
「バニラアイスはさ、誕生日に食べるから。そのときもまた支払いよろしくね」
アイスが入った袋を俺に持たせ、そのまま手をつないでくる。
これではどちらが子どもか判らない。俺が子ども、というわけでもないけど、年齢を考えると‥‥
「煙草」
「なんですか」
「そういえば、さっき屋上で吸ってたのが最後だったなぁって」
「買います? さっきのコンビニで」
「うん‥‥いや‥‥いいや。どうせまた橋本が吸ってるでしょ。それをもらうよ」
沈む先生の声。
先生は、橋本結城のことが好き、だった。いまはもう過去の話。
学校の屋上から降りてきた俺と先生は、駅近くのコンビニに来ていた。
寒い寒いと両の手を擦りあわせながら、アイスクリームや氷が陳列されたケースの前で品定めする先生。
夕方と夜の間が短い冬は、すぐに暗くなるし、寒さが増す。駅の近くだというのに店内は俺と先生しかいなかった。安っぽい音質のクリスマスソングと、サンタ服を纏う店員。異様な空間を感じていた。
「どれがいいですか。買ってあげますよ。誕生日なんでしょ」
「違うよ、誕生日は28日。今日はクリスマス。一緒くたにしないで」
ぷく、と頬を膨らませる先生は、俺に反論しているくせに俺を一度も見ないで、ケースからひとつのアイスを取り出した。
「あれ。バニラアイスじゃなくていいんですか。それ、チョコレート味ですよ」
「いいんだ、これが食べたい」
つい、と俺の袖を引っぱってレジに向かう先生。俺は慌てて同じアイスをひとつ掴み、先生を追う。
「チキンも美味しそうだったよねぇ」
立てつけの悪い自動ドアを抜け、先生は首を縮こめて言った。
「頼めばよかったじゃないですか。どうせ俺の支払いなんですし」
「バニラアイスはさ、誕生日に食べるから。そのときもまた支払いよろしくね」
アイスが入った袋を俺に持たせ、そのまま手をつないでくる。
これではどちらが子どもか判らない。俺が子ども、というわけでもないけど、年齢を考えると‥‥
「煙草」
「なんですか」
「そういえば、さっき屋上で吸ってたのが最後だったなぁって」
「買います? さっきのコンビニで」
「うん‥‥いや‥‥いいや。どうせまた橋本が吸ってるでしょ。それをもらうよ」
沈む先生の声。
先生は、橋本結城のことが好き、だった。いまはもう過去の話。
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