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昔歳の彼
一、
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ハロウィンとクリスマスとバレンタインは、大嫌いだ。
なにがカボチャだ、なにがサンタさんだ、なにがチョコレートだ。そんなもん、馬鹿な男女の愚かな行事だ。僕が生きてゆくのには要らないものだ。
2月14日。駅ナカのチョコレート売り場で、僕はアルバイトしている。1月も半ばを過ぎるころになると、売り場はバレンタイン用に力が入った装飾や展示、ディスプレイが始まる。
――彼氏、甘いものが苦手なんですけど、甘くないチョコありますか?
――調理しやすいチョコレートはどれがいいですか?
――ラッピングのときに、このメッセージカードも一緒に入れてほしいんですけど
――私と彼のイメージに合うチョコってどれだと思います?
そんなもの、知るか! 知り合いからここでバイトしてくれと頼まれたから僕は働いているけれど、そうでなければこんなところすぐにでも辞めている。すこしばかり時給がいいからって‥‥!
大体の女が14日の直前になってチョコを買いに来るが、当日に慌てて買う奴や、当日が過ぎて安くなったのを狙って買いに来る奴と、いろいろと居る。
いちばん腹立つのが、カップルでべたべたと身体を寄せ合って来店する奴らだ。ディスプレイされている商品を片っ端から指差し、耳障りな声でああでもないこうでもないとくっちゃっべっている。そのくせ、買って行かなかったりする。
僕は今日が忙しくなるのを事前に聞かされていたので、大学の講義も早々切り上げてバイトに来ていた。いまは単位よりも金が欲しい。
店が用意したワイシャツに、目に優しくない色を放つピンク色のエプロンをかける。小さなトレイに試食用のチョコレートをいくつか乗せ、店頭に立つ。
チョコレートなんざ、ただの脂のかたまりだというのに。何故こんな地味な色合いの食い物が人気なんだろう。僕だって、あんなことがなければ、こうしてチョコを買いに来る馬鹿な男女と変わらなかっただろう‥‥。
なにがカボチャだ、なにがサンタさんだ、なにがチョコレートだ。そんなもん、馬鹿な男女の愚かな行事だ。僕が生きてゆくのには要らないものだ。
2月14日。駅ナカのチョコレート売り場で、僕はアルバイトしている。1月も半ばを過ぎるころになると、売り場はバレンタイン用に力が入った装飾や展示、ディスプレイが始まる。
――彼氏、甘いものが苦手なんですけど、甘くないチョコありますか?
――調理しやすいチョコレートはどれがいいですか?
――ラッピングのときに、このメッセージカードも一緒に入れてほしいんですけど
――私と彼のイメージに合うチョコってどれだと思います?
そんなもの、知るか! 知り合いからここでバイトしてくれと頼まれたから僕は働いているけれど、そうでなければこんなところすぐにでも辞めている。すこしばかり時給がいいからって‥‥!
大体の女が14日の直前になってチョコを買いに来るが、当日に慌てて買う奴や、当日が過ぎて安くなったのを狙って買いに来る奴と、いろいろと居る。
いちばん腹立つのが、カップルでべたべたと身体を寄せ合って来店する奴らだ。ディスプレイされている商品を片っ端から指差し、耳障りな声でああでもないこうでもないとくっちゃっべっている。そのくせ、買って行かなかったりする。
僕は今日が忙しくなるのを事前に聞かされていたので、大学の講義も早々切り上げてバイトに来ていた。いまは単位よりも金が欲しい。
店が用意したワイシャツに、目に優しくない色を放つピンク色のエプロンをかける。小さなトレイに試食用のチョコレートをいくつか乗せ、店頭に立つ。
チョコレートなんざ、ただの脂のかたまりだというのに。何故こんな地味な色合いの食い物が人気なんだろう。僕だって、あんなことがなければ、こうしてチョコを買いに来る馬鹿な男女と変わらなかっただろう‥‥。
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