生き血を吸いたい私と死にたい君と

koystory_maria

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彼を見る時間

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私「こんにちは」


彼の背中から、ヒョイと前に出て声を掛けた。




私「初めまして、○○○(インスタアカウントの名前)です」




彼はふわっと笑顔になると、
私が抱いていた宝良(たから)に手を伸ばして頬を触り


彼「こんにちはぁ宝良くん」と優しい声を出した。






私「ふふ…はじめまして。

たぁちゃん、ともやくん、だよ。」






何とか宝良を通してから彼を見ようとするのだけれど、
こんなに間近で若者を見る機会がもう10年は無かったし、





若い子ってこんな眩しいんだっけ…。と思うほどキラキラとした瞳、そして笑顔も輝いていて目も合わせられなかった。






彼「さっき…そこで、まあさちゃんらしき子を見掛けたんですが」





私「あぁ。多分そうだよ!そこの坂で遊びよったけねぇ。

お昼食べてないやろ?
サンドイッチあるけん食べる?」




会話するのも照れくさい、
何日か前にちょっとふざけてやり取りしたメッセージが頭をよぎったりして



足がフワフワして地面にちゃんと着いてないみたいに落ち着かない。



チラチラと彼の肩を視界に入れながら荷物を置いたベンチの方へと歩いて行った。





ベンチに彼を座らせて、
こぶし2つ分開けたその隣に私は腰を掛けてサンドイッチを取り出した。





昼前に、何かテイクアウト出来るお店を探して見付けた
天神から程近い場所の薬院にある
サンドイッチ屋さんで買ってきたもの。





彼の手に渡して、私も1つ隣で頬張った。






正直、緊張して何を食べているのか味が分からない程だった。






彼「何かこのサンドイッチお洒落ですねぇ。」


私「そうね!薬院で買ってきたんだよ~」






彼「ん…。薬院…?そういえば僕、
昨日の夜天神らへんの美味しそうなお店調べてて、



その中にサンドイッチ屋あったな。



…あ、ほらこれ。」




彼がスマホを取り出して
サッと見せてきたお店の写真。




私「あっ!これ買った店やん!同じ!!

えぇ~!私は今日午前中にね、何か公園に買っていこうと思って調べたらお弁当屋さんとか色々出たけど、サンドイッチもいいなと思ってそこで買ったんよねぇ!」






彼「僕も昨日そこ美味しそうだなぁ、食べたいなって思って…嬉しいです。うん、美味しい。」






何て偶然なんだろうと胸がドキドキした。




お店なんて山ほどあるのに、昨夜彼が見たお店を今朝私が買いに行くなんて、そんな奇跡あるのかな。



不思議な感覚に喜んでいると、
遊んでいたうちの姉妹がベンチにやって来た。






まりな「こんにちは!ママ、お兄さんがカメラマン?」
誰にでも人懐こい長女が最初に声を掛けた。




少し人見知りな次女のまあさはモジモジして照れ笑いしながら見ていた。





姉妹はまた遊び場に飛んで行った。公園で仲良くなったお友達と鬼ごっこをしたり楽しそうだった。








サンドイッチを食べている時に、宝良がパンの部分をちぎって


宝良「おさかないきたい」
と言った。






この大濠公園は大きな池があって、そこに鯉や亀が沢山いるので、餌をあげる為に宝良もパンをちぎったのだ。



宝良が1人でタタッと走り出して池の方に向かった。


私「…あっ、待って!落ちたら危ないから!」





私は持っていたサンドイッチを慌ててビニールに包み直して、すぐに宝良の後を追ったけれど





宝良は既に池の目の前まで向かっているのが見えた。





慌てて走って公園を囲む柵が終わる、入り口まで走って行って


池の方を向くと






宝良の隣に彼が既に立っていた。






えっ?



私のが先に追いかけたはずなのに、追い越されて無いよね?









まさか、この柵を飛び越えた…?






走って彼と宝良の側まで行って、
ハァハァと肩で息をしながら聞いた。







私「ねぇ、来るのめっちゃ早くない?


まさかあの柵越えて来た?」


彼「え…?あぁ、はい。真っ直ぐのが早いから」とニッコリ彼が微笑んだ。




この人が、あの少林寺拳法の凄まじい蹴りを出して叫んでいた人なの?





柔らかい物腰、幼稚園に居そうなほんわかした保育士さんみたいなゆったりした優しい喋り方、







とても同一人物のように見えない。





私「智也くんて、物腰が柔らかだよね…あの、闘ってる人には見えない…。服装も、体型が分からないし」




彼「あぁ~、…はい。何か、俺強いですみたいな、風を肩で切って歩くみたいなの、カッコ悪くないですか?

そういうの、分からないように服もわざと大きめ着てるんです。」




いるいる、筋肉付いてる人がわざとの様にピチピチした小さめのTシャツとかタンクトップ着て、俺の筋肉見て、みたいなアピールしてるのよくある(笑)




そういうのが分からないように、服装も歩き方も喋り方も優しい人。







何なの、好青年過ぎる。





彼はカメラを取り出して、宝良と遊ばせている私を撮りだした。




空気のように、
子供達の遊びを邪魔せずそのままの姿を撮ってくれていた。






彼がカメラのレンズを覗いている姿を、私もカメラを構えて撮っていった。




レンズから目を離して
たまに彼がこちらへ、ニコリと微笑む時間がたまらなく愛しくて
優しくそよぐ風が彼の笑顔と共に私の胸の中を通り抜けていった。




次に続く→【夕焼けとシルエット】

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