生き血を吸いたい私と死にたい君と

koystory_maria

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夕焼けとシルエット

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16時頃になり、
いつまで経っても遊び疲れない子供達を追いかけ疲れた私は、


「あのカフェでちょっとお茶しようよ」



と彼と子供達を呼んで、
公園内にあるカフェへと誘った。





宝良はまだ3歳になったばかりで体力も消耗したのか、さすがに疲れてカフェに向かっている間にベビーカーで眠ってしまった。






彼が、おもむろに背負っていたリュックを下ろして中からタオルを出した。







そして寝てしまった宝良の胸の上にそっと掛けてあげていた。







・・・驚いた。






22歳の男の子が何も言わずして、眠った子供に自分のタオルを掛けてあげる事が出来るなんて…。






静かに、然り気無くする姿に私の心がまた1つ彼に拐われた気がした。







私「あぁ…智也くんタオルごめんね



ありがとう。。。」













暫く男性自体を避けて来たからかな。人を好きになる免疫が無くなっちゃったんだろうか。




彼が取る一つ一つの行動を見る度に、
胸を撃ち抜かれるような感覚になる。





カフェでアイスコーヒーを飲みながら、私の前に座る彼と、その隣に座ってスィートポテトを頬張る次女まあさ。





私の隣に座る長女まりなが提案してきた【しりとりゲーム】を4人で廻しながら、





まあさの頭を優しく撫でる、彼の手を見ていた。






指は細く真っ直ぐで、女性みたいに綺麗だった。
その拳が本当にあんな激しい打撃に使われていたとは思えない。





その美しい指先が、まあさの頭から髪の毛の先へとスルスル動く。




正直…彼に愛でて貰えるまあさが羨ましいと思って見ていた。







彼は普通にしていると狐目のような細くクイッと引っ張ったのうな目元だけれど、

瞳のレンズは光を浴びると少しブラウンで、



喋りや醸し出す空気は柔らかくほんわかしているのに、
やはり武術をしてきている人らしい強い眼光で、その鋭さは人を射すくめる力がある。






私は彼が子供達に目を向けている時だけ、ジッと観察していたけれど彼が私を見た瞬間に目線を外して、目が合わないようにしていた。






興味はあるけど、私が手を出してはいけない気がする…。







これまで数時間言葉を交わしてみて、彼は博識で教養もある人だと感じた、それは22歳とは思えない程で話していても違和感無く落ち着く事が出来る。



だけど大学生らしい若さと青さもあって、まだまだ色んなものに護られている光を感じる。








何か触れてはいけない、
私が汚してはいけないような
儚くて美しい若さ。









長々と子供達としりとりを続けながらコーヒーを飲み干して、


再度公園の遊具のある場所へと戻った。








17時、
日が暮れ出した頃に突然空がピンクからオレンジに、そして赤く焼け始めた。







ここ何ヵ月で久し振りに見る美しい夕焼けだ。






カメラを持つ彼の背中や横顔、
子供達と触れ合う彼のシルエットを追ってシャッターを切っていた。







すっかり真っ暗になるまで遊んで、お別れをする時に
彼と子供達は1人ずつハグをした。




「また会おうね」




そう言って、
なかなか離れようとしない子供達を引っ張るように駐車場へ連れて帰った。









帰路の車内で音楽を掛けて、彼との今日を思い出していた。







スキマスイッチの【藍】が流れてきて、私も行き交う車のライトを眺めながら口ずさんだ。






「愛」どこで誰が創造したもんなんでしょうか 難解なんだね

感情ってどこへ向かうべきもんなんでしょうか そっと教えてよ

飛ぶ鳥は大空を迷うことなく飛べるのに

いったい僕らはどこへ向かうんだろう




恋愛の成功率はね 散々でね いつだって成就しないまま


とはいえ好きになっちゃうんじゃ もう嫌になるよ


どうかいなくなれ こんなんなら存在自体よ消えちまえ


そう思ってどのくらい経つだろう


来週はいつ会えるんだろう











何故だろう。











なんでわたし胸がこんなに苦しいんだろう。








どうして口ずさんでるだけで涙が頬を伝うんだろう。





次に続く→【ケーキと30分】

      
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