しらぬがまもの

夕奥真田

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演劇名 予知と万能薬と守護者と神秘

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「うへぇ…!美味しくな~い!」

自分たちと同じ真っ白な髪を持ちながらも、身長や精神年齢的には他の兄妹たちよりもずっと小さく、幼いターイナがぺっ、ぺっ、と口に含んだ少量の紅茶を、その長い髪を振り乱しながら、あたりに吐き散らす。

金銭感覚が疎くとも、それなりの価値があることくらいは分かる、応接用のソファや絨毯などに茶色の島が浮かび始める。

「ふふふっ、見ろ、兄貴。ターイナの奴も不味いとよ」

「…残念だな。これでもかなり自信があったのだが」

窓辺に立ち、同じ紅茶を飲んでいた兄のプレシエンツァが困ったような笑みを浮かべる。

しかし、口から異物を吐き出したターイナはそんなプレシエンツァへと頬を膨らませ、横で静かに紅茶を啜っていたガルディエーヌの横腹を突く。

「苦いよ、これ~!ガルお姉ちゃんお砂糖!」

「…?私はお砂糖じゃない」

「お砂糖取ってって言ってるの~!」

「ん…」

意地悪なのか、本気で分からなかったのか、ガルディエーヌは持っていたカップをソーサーへと戻すと、大きな身長と手の長さを生かし、明らかにターイナの方が近いにも関わらず、テーブルの端に置かれたシュガーポットへと手を伸ばす。

男の様に短い髪型に、少し低め声、また、“左腕がない”ことを除けば、可愛らしく、心優しい妹だ。

「そうやって甘やかすとこいつはすぐにつけあがるぞ?ガル?」

「何だって…!?集合時間も守れないくせに!」

「そいつについては追求される前に、俺の方から頭を下げただろうが…。全く…」

こちらには強力な硫酸を製作するという重要な仕事があったのだ、数分の遅刻くらいは目を瞑ってもらいたいものだ。

「誠意が足りないの!」

「やれやれ…。嫌味な弟だ…」

久しぶりに顔を合わせたというのに、相変わらず高飛車で、自分勝手なその性格は変わってはいない。

アトゥの皮肉屋もちょいとしたものだが、ターイナの場合は、姉貴やガルディエーヌあたりが可愛がっているせいで、虎の威を借る狐の如く厄介だ。

「ターイナ、お砂糖」

「あっ、ありがとう!ガルお姉ちゃん!大好きだよ!」

「ん…」

シュガーポットを受け取ったターイナはガルディエーヌに抱きつく。

…あざといもんだ。

「それで?ペルメルやアトゥから招待状は届いたのか?」

出された紅茶には手はつけず、その茶色の水面から微かに湧き出る湯気を眺めながら、プレシエンツァに尋ねる。

日が昇り始めてから暫くが経つ。

余計な犠牲を出さない為にも、早々状況を伝え、準備を始めないと、何も知らずに街を離れる住民たちが出てくる。

「宣戦布告自体はソレイユが襲われる前に既に受け取っている。今はシエル王や魔王が対応を検討、各国にはレイダット・アダマーとの関係を詰問中…。シエル国内ではそういう体になっている」

「本当は…?」

ドバドバと紅茶へ砂糖を入れるターイナの長い髪がカップの中に入らぬよう、耳にかけてやったりしていたガルディエーヌが静かに事実を問う。

「だが実際は、各国の王たちにこの宣戦布告の事実と、それに我々が応じることを、国民に広める様、シエル王や魔王は伝えている」

「そうなれば、シエル以外の馬鹿な国民どもは、レイダット・アダマーという組織が、憎っくき魔物たちを殺していることに歓喜。各国の王たちは交渉という弱腰姿勢を非難される」

「でも、この戦いが終われば、どっちが正しい選択をしていたのかをその馬鹿どもは嫌でも知ることになる。そうでしょ?プレシエンツァお兄ちゃん?」

俺に続き、ターイナが結論を告げると、プレシエンツァは静かに微笑む。

その笑みに邪悪さはない。

大切な弟がちゃんと問題を解けたことを、素直に喜んでいるだけの笑みだ。

コンコンコン…。

状況の確認が終わり、また何の中身もない話でもしようかと思っていたところに、綺麗なノック音が響く。

部屋の主はそっと執務机にカップとソーサーを置くと、出入り口の扉へと歩み寄る。

「失礼します。領主様、お伝えしたいことがございます」

扉を開けると、黒髪を後ろでまとめ、執事服にそのすらりとした身を包む、女性召使いのトゥバンが部屋へと入り、相変わらず礼儀正しく頭を下げた。

「先ほどフェンリル様がお見えになったのですが、これを領主様にお渡しするよう頼まれました」

後ろ手に持っていた巻手紙を、一切の無駄な音もなくプレシエンツァへ手渡すも、トゥバンはそのまま部屋を出ようとはしなかった。

「ありがとう、それでフェンリルは今どこに?」

「…それが、手紙をお渡しになると、そのままお帰りになりました」

「帰った…?」

意外…という程ではないのだが、フェンリルの少々不可解な行動に反応したのはガルディエーヌだった。

その無表情に少し残念そうな色が浮かぶことに感化されたのか、トゥバンも少し悲しげな表情で静かに頷く。

「理由までお聞きすることは出来ませんでしたが、何やら急いでおられるように感じられました…」

シエル王や魔王が何を急ぐ理由があるのかは分からないが、フェンリルを伝令に遣わすあたり、それなりに急を要する事由が起こったと考えた方が良いだろう。

巻手紙をじっくりと見つめるプレシエンツァの次の言葉を、全員が固唾を飲んで待つ。

「…なるほど、そういうことか。トゥバン、申し訳ないが、至急、全騎士たちを招集するよう伝えてくれ。それから、街の住人で非戦闘員以外の魔物たちを街の門の前に出来るだけ集まるようにも」

「畏まりました。すぐに」

再び頭を下げると、トゥバンは足早に部屋を出て行く。

どうやら仕事の時間が早まったらしい。

「で?俺たちはどうする?兄貴?」

「手筈通りに動いてくれ。問題はないだろうが、だが、もし危険だと感じたら…」

「感じたら…?」

「近くの者たちを犠牲にしてでも逃げてくれて構わない」







「こんな時間に叩き起こしやがって…!くそっ!」

「文句なんか言ってる暇があったら、手を動かせ!」

ある程度日が昇ったとはいえ、時刻的にはまだ早い。

その上、知らぬ間に街が危機的状況に陥っているとなれば、住人たちが苛立つ気持ちも分かる。

罵声や舌打ち、欠伸などの声が入り混じる中、これから街を守るために共に戦う魔物や騎士、賞金稼ぎなどと共に、脆弱な門を守るため、土嚢などによる即席の防壁を築いていると、上空から一匹の竜が降りてきた。

「連中、すぐそばまで来てるぜ!急がないと、準備が終わる前に到着しちまうぞ!」

「黙れ、クエレブレ!馬鹿な癖に口出しするんじゃねぇ!」

「うるせー!飛べねぇ、お前らの代わりに俺が見に行ってやってるんだろうが!感謝しやがれ!」

売り言葉に買い言葉、兄や弟たちの喧嘩とさして変わらぬ発端と内容に、微かなため息を吐きそうになるが、同時に安心もしていた。

彼ら普通の人間や魔物と同じように、私たちも喧嘩し、協力することができるのだと。

「クエレブレ、敵方の本体の位置は何となく分かった。では、次に兵装や武装を偵察してきてくれないか?」

「あいよ!任せとけってんだ!」

領主である兄からの命令を受け、クエレブレと呼ばれた竜は再び天高くへと飛び上がる。

もう三往復目になるというのに、文句も言わずに飛び上がる彼は賞賛するに値する体力の持ち主だ。

しかし、実際、手放しに全てを褒め称えることも出来ない。

というのも、一度目の偵察飛行において、抽象的に多くを指示した結果、何も記憶に残らないままに帰ってきてしまったからだ。

賢く、歴代の魔王たちの側近として存在してきたと噂される、高位の魔物である竜族にしては、少しだけ頭が悪いのかもしれない。

それ故、こうして兄は偵察すべきことを一つずつしか指示しないのだ。

それにしても、あちらの戦力は未だいまいち掴めずにいるが、こちらの前線に出る者たちはどんなに多く見積もっても、千人いるかいないかといったところだろうか。

もちろん、街の中には人も魔物もまだ多くいるが、ほとんどの者たちが非戦闘員であり、その中で魔力を有する魔物や魔術師たちであっても、出来るのは街を守るための魔力による防壁を張ることくらいだろう。

兄お抱えの騎士たちは、敵の本拠地である砦を奇襲する為に、半分程の人員が割かれ、彼らを輸送する竜たちもここには止まらない。

街の防衛戦であり、持久戦となれば蓄えもあるこちらが有利とはいえ、それでもあちらには、ターイナの創り出した厄介な切り札がある。

…私が前に出なくては。

右腕に担いでいた土嚢を渡すと、そっと兄の元へと向かう。

「兄様、先陣を切ります…。よろしいですか…?」

「それはまだ許可できない」

「…何故ですか?」

「我々が存在感を示す場ではないからな。これはあくまで魔物側が人間側を打ち倒す“演劇”だ」

「…」

兄の考えていることは常に読めない。

だが、兄の考えに異を唱えるつもりもない。

信奉とまでは言わないが、兄をとても信頼しているから。

兄がそう言うのであれば、少なくとも自身の信念に反さぬ限り、それに従おう。

「…そうむっとした表情をしないでくれ、ガルディエーヌ」

「…兄様は、兜も透けて見える?」

頭部を覆っているはずの兜に手をやる。

しっかりと兜を被っているはずなのに、何故表彰が見えるのか、不思議だった。

もっとも、実際に自分がむっとした表情をしていたかは分からないが。

「ふっ、そうではないさ。君が私の妹だからだよ」

「…?」

「優しい君のことだ。大方、彼らを守るためにも自分が前に立たねばならない、そう思っていたのだろう?」

そっと、これから共に戦う者たちを見渡し、静かに頷く。

「その優しさを私の一言で無下にされては、優しい君もさすがに嫌な気分になる、そう思っただけさ」

「…兄様、すごい」

「…この程度のことで褒められるのは何とも言えぬものだが、君の言葉なら素直に受け取ろう。ありがとう、ガルディエーヌ」

「おぉ~い!た、大変だ~!」

慌てた声が上空から降ってくる。

見ると、偵察に出ていたクエレブレが戻って来るところだった。

先ほど偵察に出て行ったばかりなのに、もう帰還出来るということは、それだけ彼らが近づいているということだろう。

「た、大変だ、領主…!奴ら、馬鹿みたいに武器を持ってやがる!」

「一度落ち着いてくれ、クエレブレ。一つずつでいい、何があったのかを教えてくれ」

「あ、あぁ…そうだな…。まず目に付いたのが、あの…石を飛ばす奴だ、あの…」

「投石機」

「そうそれ!…だと思う。あと、あの、馬鹿でかい矢を放つ奴!」

「バリスタか…。なるほど、彼らもそれなりの装備を整えているな…」

クエレブレとの話を聞いていた戦士たちの間に恐怖や不安が生まれ、徐々にそれらが波紋していく。

もっとも、投石機にバリスタ、近づいてしまえば、歩兵たちにはそうそう当たりはしない。

一気に詰め寄り、射手を殺してしまえば、ただの置物へと変わるそれはむしろ問題ではない。

それに、たとえ街中へと打ち込まれたとしても、ターイナたちが創り出す魔力の防壁がある。

恐るべきはやはり、切り札の黒い騎士たちだ。

ターイナによって創作され、私がアトゥたちへと運んだあの防具一式に武器は全部で二十人分ある。

フェンガリやソレイユの街をどれほどの人数で陥したのかは分からないが、少なくともフェンガリを襲った時には一人分しか渡してはいなかったはず。

とするなら、たった一人の黒い騎士であっても、その戦力は計り知れない。

兄様はこの戦いを“演劇”と例え、でしゃばることを控える様告げていたが、もしも束になって来られては、そんな悠長なことは言ってはいられなくなる。

やはり、私が前に出て戦い、黒い騎士たちの数を減らさなくては…。

それに、アトゥとの約束である、オネちゃんを探す必要もある。

「ちょいと、失礼」

兄様がクエレブレと情報の共有をしていると、専ら見張りの騎士が活用している外壁の歩廊から、顔を布でぐるぐるに覆い、微かに目元しか見えない男が飛び降りて来た。

アルだ。

世間体ばかり気にしていた彼は、如何にも怪しげなこの風体で戦闘に臨むらしい。

「領主さんよ、トゥバンから嫌な知らせが入った」

「聞こう。クエレブレ、礼を言おう、君は持ち場に戻ってくれ」

クエレブレは満足気に鳴くと、また空へと飛び上がり、街の中へと飛んでいく。

「それで?一体なんだ?」

アルはちらりと辺りを見渡し、誰も聞き耳を立てていないことを確認すると、そっと囁いた。

「例の防具と武器を持った連中が明らかに多い…。トゥバンの見立てでは百以上はいる…。それに、先頭に姉貴の姿も見えたらしい…」







「で?これは一体どういう手違いか説明してもらおうか?ターイナ?」

予想外の事態を対応するため、一度執務室へと戻ると、アルは真っ先に僕のことを疑いにかかってきた。

もちろん、どんな状況なのかはトゥバンから先に説明されているため知っているが、開口一番に僕を疑ってくるあたり、よほどアルは僕のことが気に入らないらしい。

「僕は頼まれた分しか創ってないもん!ガルお姉ちゃんだってそれは知ってるもん!」

同意を得るべく、ガルお姉ちゃんを見つめる。

「うん、私もターイナが創った分しか運んでない…」

「なら、トゥバンが見たのは幻覚か?それとも、トゥバンが嘘をついているとでも?」

「信じてないね!アルの癖に!」

せっかく集中しかけていた魔力が、アルへの怒りのせいで霧散していく。

街に被害が出たらアルのせいにしてやる…。

僕の怒鳴り声をさも鬱陶しそうに、耳を塞ぐと、アルはプレシエンツァお兄ちゃんに判断を仰ぎ始める。

「…兄貴、一体どういうことだ?」

「…何にしても、例の騎士たちが予想以上となれば、こちらも大きく動かねばならない。ガルディエーヌ、君はやはり最前線で他の者たちを守ってやってくれ。アルは毒矢で少しでも本隊の突撃を遅らせ、ガルディエーヌたちの援護射撃を頼む」

「わかった…」

「まぁ、ご期待に添えるよう努めるさ」

ガルお姉ちゃんとアルは先に部屋を出て行く。

敢えて僕が残されたということは、プレシエンツァお兄ちゃんも怒っているのだろうか…?

「…あ、あの、プレシエンツァお兄ちゃん?」

「ん?なんだ?」

「…怒ってる?」

「怒る?何にだ?」

「だって、僕が創った騎士たちが多すぎるんでしょ…?アルは絶対僕が間違えて多く創ったと思ってる…」

「あぁ、だから、君にああも噛みついていたのか…。なるほど…」

どこか嬉しそうにプレシエンツァお兄ちゃんは微笑むが、僕はちっとも笑える気分じゃない。

「それで、お兄ちゃんも、僕を疑って、怒ってるのかな、と思って…」

「まさか。君を疑う理由など何処にもない。むしろ、こんなことをしてくるのは、おそらく彼女だけだろう」

「彼女…?」

僕がぽつりと呟くが、プレシエンツァお兄ちゃんは何も答えずに椅子から立ち上がる。

「ターイナ、先ほどは君にこの街を魔力によって防壁を創ってくれと頼んだが、それは撤回しよう。君には、敵軍の戦力を大きく削る要となってもらう」

「分かった…!何をすればいいの?」

「まずは手筈通り、雨雲を呼び寄せてくれ。彼らの砦を落とす為の奇襲部隊を気づかれずに届けるには厚い雲が必要だ。それが済んだら、魔法によって攻城に役に立ちそうな兵器を全て無力化して欲しい」

「うん、任せて!」

小さく胸を叩くと、プレシエンツァお兄ちゃんはにこりと微笑んでくれた。







厄介なことをしてくれたな、ペルメル…。

外壁の歩廊からでも敵軍が見え始めてきているが、トゥバンが報告してくれた通り、先頭には例の黒い騎士たちがずらりと横一列に並んでいる。

明らかに、ターイナに創作させた数よりも多い。

「ふっ、全く、彼女は…。へらへらしていながら、最も腹の内が読めないな。君もそうは思わないか?」

そっと横を見つめる。

雪の様に真っ白で、明るい日の元ならば、その輝きを反射しそうな鱗に覆われた竜は静かに頭を下げた。

同意と受け取るべきか、あるいは単に早く乗れと促しているのか…。

そっと下げられた頭の突起などを伝って背へと乗る。

「こうして君の背に乗せてもらうのは久しぶりだな…。あまり動いていない身だ、重かったら遠慮なく言ってくれ?」

ぐるる…。

竜は喉を軽く鳴らし、何の問題もないとばかりに、勢いよく立ち上がる。

「では、そろそろ行こう。トゥバン?」

片手に持つ斧槍をしっかりと握りしめ、優しく背を叩くと、トゥバンは大きな咆哮と共に飛び上がり、大地を埋め尽くさんばかり敵の戦士たちに向かって行く。

弓兵たちがこちらを射殺さんと、叩きつける風雨の中、必死に目を凝らしてこちらへと矢を放ってくる。

しかし、ほとんどの矢はこちらへと届きもしない。

もっとも、届いたとしてただの弓兵の矢など、美しいトゥバンの鱗を貫通するはずはない。

問題は、黒い騎士たちの弓兵だと思っていたが、やはり彼らはこちらのことなど意にも介さず、黙々と進軍を続けている。

第一優先はコハブということか…。

「馬鹿にされたものだな…。トゥバン!」

声をかけると、トゥバンは速度を落とさぬまま、くるりと旋回し、黒い騎士たち目掛けて急降下する。

トゥバンの速度に任せ、斧槍で黒い騎士たちを一気に薙ぎ払う。

薙ぎ払われた黒い騎士たちは、その強靭で重量感のある装備にも関わらず、見事な受け身で体勢を整えると、こちらをちらりとも見ずに、何事もなかったかの様に進軍を再開する。

その鎧には傷一つ付いていない。

大方はターイナが創り出した装備を複製した贋物なのだろうが、やはり生半可な攻撃では、殺すことはおろか、破壊することすら叶わなそうだ。

「全く、私を困らせることに生き甲斐でも感じ始めたのか…。ん?」

上空から全体を見下ろしていると、先頭を歩き続ける黒い騎士たちの中に、立ち止まって、こちらを見上げ、にこにこと微笑む、一際目立つ金色の髪を垂らした女がいることに気がついた。

ペルメル…。

生まれは最も近い妹であり、それ故に最も信用し、その力を高く評価しているが、同時に最も厄介な人物だとも思っている。

…奴のことだ、まだ何かを隠しているに違いない。

この黒い騎士たちは弟たちに任せ、奴の相手をするべきか。

「トゥバン、後ろに回り込んでくれ!ペルメルの気をこちらに引きつける」

トゥバンは鳴き声を上げて、返事をすると、再び急降下し、大群のすぐ真上を堂々と突っ切っていく。







「見えた!」

誰かがそう叫ぶと、その場にいたほとんどの者たちが自身の武器を構え直す。

街を取り囲まんばかりに横に並んだ黒い騎士たちと、その奥に見える数千もの戦士たちの姿が遂に見えてきた。

すぐにでも駆け出し、右手に持つ戦鎚を振り回したい衝動に駆られ、体が微かに震える。

彼らを殺したくて仕方がない訳ではない。

共に戦う彼らを守るためにも、いち早く飛び出し、彼らの危険を取り除きたいのだ。

しかし、勝手に飛び出すことは出来ない。

攻撃開始のタイミングは高台から様子を見ているアルの一声を待たなくてはならない。

無闇に飛び出せば、私の後ろに誰かが続いてしまい、逆に危険を増やす可能性すらあるのだから。

体にぶつかる風雨に耐えながら、じっとその時を待つ。

そして…。

「今っ!」

雷の轟音にも負けぬくらいに張り上げられたアルの叫び声が、耳へと届いた。

その声が耳に届いた者たちから、駆け出す。

背後の街からは、ターイナの魔法によって創られた無数の虹色の矢や、アルの毒矢などが援護射撃の様に正確に敵を狙い撃ちしてくれている。

それらに気を取られた、あるいは食らい怯んだ黒い騎士たちの頭部目掛けて戦鎚を振り下ろし、頭から地面へと叩きつける。

兜ごと頭部を無くした黒い騎士たちは微かに動くこともなかった。

何とかなる…。

手こずるとは考えていなかったが、この程度のものならば、全員を守れることだろう。

一直線に向かってくる黒い騎士たちの頭を同様に破壊しながら、辺りの様子もしっかりと見渡す。

手こずっている者や、怪我を負った者たちの近くにいる敵を優先的に狙い、共に戦う仲間たちを守る。

これこそ、私の生まれた意味なのだ。





あらかたの黒い騎士たちを倒し終えるも、まだ普通の戦士たちはその物量で押し切ろうと、向かってくる。

だが、その物量も所詮は人の単位。

どれだけ人が集まろうとも、ただの人間には強靭な魔物たちには一撃を食らわすことは出来ない。

もう彼らの心配はいらない。

そろそろアトゥから頼まれた、オネちゃんを探しに行かなくては。

今度は戦鎚を横へと振り、敵の戦士たちを薙ぎ払いながら、大群の中を掻き分けていく。

彼女とは何度か顔を合わせたことがある。

それ故、彼女がどんな防具を装備しているかは分かっている。

問題は、その防具を着た者たちの中から、どうやってオネちゃんを見つけるかだ。

早くしなければターイナたちの援護射撃がここまで及んで来てしまう。

並みの人間にあの威力の魔法と毒には耐えきれない。

急いで見つけなくては…。

そっと、戦鎚を背中の武器袋へとしまい、代わりに小さめの戦棍を取り出し、構える。

これならば、力加減が効きやすく、兜だけを破壊することも容易だ。

向かってくる者が軽防具の者たちならば一度兜を破壊し、その顔を確認した後、もう一度振り下ろす。

そもそも違う防具の者ならば、戦鎚同様に兜ごと頭を潰していく。

「ひっ…!?」

これをひたすら繰り返しながら戦っていると、遂に砕けた兜の下から、綺麗な褐色肌のオネちゃんの顔が現れた。

「見つけた…」

一撃で兜を破壊されたせいか、戦斧を構えながらも、完全に逃げ腰になり、よろよろと後退りするオネちゃんへと近づく。

「く、来るな…!た、隊ち…!うっ…」

滅茶苦茶に振り回される戦斧をその腕ごと止め、頭突きを食らわせる。

骨などが折れない程度に加減はしたつもりではあったが、鼻からは血が流れ出てくる。

心の中で謝りつつも、気絶してくれたオネちゃんを担ぐと、一目散に街へと駆け出す。

敵前逃亡など、撤退の命令が無ければ決して行うべきではないが、弟との大切な約束とならば天秤にかける余地もない。

それが愛する人を助けてくれ、というものなら尚更だ。

それに、彼らの相手は魔物たちに任せてもおそらく問題はない。

投石機やバリスタが破壊され、黒い騎士たちも消えた今、既に勝負は決している。







「久しぶりね~。こうやって顔を合わせるのは何年ぶりかしら~?」

「十年…経つか、経たないか、そんな具合だろうな」

「早いわね~。もうこっちは苦労しっぱなしだったんだから…!帰ったら、この愚痴に数週間は付き合ってもらいますからね!」

「あぁ、もちろん。だが、まずはこのくだらない茶番について説明してもらわないとな」

「ん~…これは…ちょ~っと、魔が差したというか…何というか…」

ペルメルは特に悪びれる様子もなく、真っ黒な空を見上げながら、顎のあたりを撫でる。

本当は答えなど聞くに値しない、大した理由ではないのだろうが、今は下手に攻撃することも出来ない。

何故なら、彼女の周りには、先ほど本隊の先頭を歩いていた黒い騎士たちとは、少し形状が異なるが似た黒い防具を装備した騎士たちがずらりと十人は並んでいるからだ。

…どうやら、ペルメルを本隊から誘い出したつもりが、逆に孤立させられたのはこちらだったらしい。

そして、前に並ぶ騎士たちからは、あの本隊に大量にいた黒い騎士たち以上に“命”の匂いがしてならない。

先ほどの黒い騎士たちがターイナの模造品にならば、こちらは完全にペルメルが自ら創り上げた物たちといった感じだろうか。

正直、一人ではどうすることも出来ない…。

「まぁ、十年近くも一緒にいるとねぇ…。情も湧くってもんなんですよぉ…。ちょ~っと勝たせてあげたいなぁ、なんて…。分かるでしょ~?」

「…申し訳ないが、理解出来んな。そんな下らない理由で、こちらの計画を台無しにされては敵わない。とっとと、それらを処分してもらおうか?」

「あぁ!そうだ、思い出した!」

「…?」

こちらの話など無視するかの様に、ペルメルはぽかぽかと掌を叩く。

その顔はひどく楽しげだ。

「どうしてもあの子たちに勝たせたかったのは、この計画を狂わせて、貴方のその気取った態度を一度はぐちゃぐちゃにしてやりたかったからなのよ。このマザコン野郎」

にっこりとこちらに笑みを向けたかと思った瞬間、十人の騎士たちが一斉に飛び出してくる。

…やはりな。

斧槍を構えつつも、目を瞑り、意識を集中させる。

「右からの攻撃が最も早く到着、次は正面、三人目は上空から…」

手に取るよう、とまでは言わないが、十人の攻撃の順番、何処から仕掛けてくるかの“予知”くらいは出来る。

故に、反撃することは難しいが、回避することは難しくはない。

「そして、最後に…!」

背後を振り返り、迫ってきていた虹色の剣を弾き落とす。

「んふふ。やるわねぇ~。さっすがお兄ちゃん!っていったところかしら~?」

「魔力で創り上げた剣を飛ばす…相変わらず君はこの手が好きだな」

「だって体を動かすのは疲れるでしょ~?」

そう言うと、ペルメルは片腕を挙げる。

すると、その周囲に先ほど弾き落とした物と同じ虹色の剣が数本現れる。

もはや援護射撃を隠す気は無いらしい。

「さぁ、準備運動はお終い。次からは本格的に踊ってもらうわよ~?」





「はぁ…はぁ…」

さすがに苦しくなってきた…。

集中力が切れてきたせいか、こうも間近の“予知”すらままならなくなってきている。

そのせいで、ペルメルの確実にこちらの隙をついた攻撃を対処出来ない。

「んふふ~。随分苦しそうになってきたわねぇ~、プレシエンツァ」

「はぁ…はぁ…流石と言っておこう。君の攻撃もだが、こうも強力な騎士たちを創り上げたことに対してな」

「あらぁ、そう言って貰えると苦労した甲斐が…」

「だが、欠点もある…」

「あらぁ?それならどうして一人も倒せないの?」

「ふっ、その必要性がないからだよ、ペルメル」

ペルメルは微笑みを浮かべたまま、口をつぐむ。

「大方、ターイナと同じで、装備者の“命”を吸い取り、それを異常な力に還元する装備たちなのだろうが。君の物は彼の物よりも力を高める代わりに“命”を吸い取る早さが早いようだ」

「さすが~。相変わらず良い観察眼よねぇ~」

「故に、彼らの稼働時間も少なくなる」

実際、既に黒い騎士たちの動きは徐々に鈍くなってきている。

戦力としては申し分ないが、効率化という点ではやはりターイナの物に今一歩劣るといったところだろう。

「つまり、時間さえ稼げれば、倒す必要もないということだ」

「む~、ちょ~っとそれ、卑怯なんじゃないの?」

「生憎、既に汚れた手だ。汚い手などいくらでも使うさ。それに、今回に関して、私が倒さずとも、“彼”を呼んでおいたからな」

「彼…?ん?」

ぐらぐらと大地が揺れ始める。

どうやらやっと“彼”が到着してくれたらしい。

海にその巨体を隠さねばならぬ程の大きさを持つ彼でも、こんな僻地へとやって来るのには少し時間がかかったようだ。

「ペルメル、私同様、彼に会うのは久しぶりだろう?改めて紹介でもしておくべきかな?」

「…ふぅ、いりませんよ~だ。全く、ヨルムンガンドまで呼んでおくなんて…。本当に用意周到ですこと…!」

いーっ、と子どもの様に歯を見せつけると、ペルメルは指をぱちりと鳴らし、霞の様にその姿を消した。

「全く、可愛らしい妹だ…」

やはり、魔力による分身だったが、その実力は自身の知る本物と寸分違わぬ力であった。

たった十年でここまで実力をつけてくるとは…。

半ば見張り役として同行させたアトゥが無事で本当に良かった。

戦闘の終わりを何処かで見計らっていたのか、トゥバンが空から舞い降りて来る。

「ヨルムンガンドが到着したようだ。早く砦に向かい、奇襲部隊の騎士たちを回収しよう。おそらくは彼もそこにいる」

トゥバンはしっかりと頷き、背に乗ると素早く砦へと飛び出す。

後方からは既に、意図せずとも踏み潰しながら大地を泳ぐ巨大な蛇、ヨルムンガンドの姿が確認できた。

急がねば砦にいる者たちも踏み潰されてしまう。





全速力でレイダット・アダマーの砦まで向かうと、既にほとんど者たちが竜などの魔物たちに乗り込み、撤退の準備を始めていた。

「この砦にヨルムンガンドを向かわせている。すぐに街へ撤退を始めてくれ」

「わ、分かりました!しかし、あの男はどうすれば…?」

一人の騎士が指さす方向を見つめると、子どもの魔物を腕に抱きながら、瓦礫の山をじっと見つめるリウのと、その横に立つビルゴの姿があった。

「…やはりここにいたか。言いたいこと、聞きたいことはあるだろうが、今はここを離れるとしよう。竜に乗り込んではくれないか?」

そっと、リウへと近づき、声をかけると、彼は静かに振り返る。

その顔には怒りも悲しみも滲んではいなかった。

昨夜出会った時と同じ、如何にも他者を嫌い、嫌われる不快そうな表情を浮かべている。

「ヨルムンガンドという大型の魔物を呼びつけたのでね。急がなければ、我々もぺちゃんこにされてしまうぞ?」

「…分かった」

小さく頷き、横に転がっていた杖を手に取ると、リウはすたすたとトゥバンの方へと歩いていく。

「…ヨルムンガンドを呼んでおいたなら、僕たちがここに来る意味は無かったのでは?」

リウの後ろ姿を見つめていると、横に立っていたビルゴが声を低い声で尋ねてくる。

…やはり、アルが見込んだだけの男だ。

「確かに、だが、こうも地鳴りを起こしていたのでは、この砦にいた者たちに気づかれ、逃げられてしまうのではないかと考えていたのでね」

「あの大きさに追いかけられたら、飛行出来る魔物たちでもいなければ逃げられないはずです」

「…かもしれないな。だが、我々の敵はレイダット・アダマーだけだ。もしその構成員が逃げたからといって、それを追って他の街を襲撃することは出来ん」

「…」

「念には念をと言うだろう?さぁ、君も早く乗り込め。そして、早くコハブへ帰ろう」

ビルゴの背を軽く叩き、トゥバンの元へと駆け足で戻る。

そう、あくまで現状の敵はレイダット・アダマーだけなのだ。

この戦いは各国に魔物の力を見せつける為の“演劇”に他ならない。
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