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第一章
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しおりを挟む「だからねお父様、あれは花火のつもりだったみたいよ?ちょっと度が過ぎただけで……。」
父の機嫌は最悪だ。それも当たり前だ。訳のわからない玉が飛んできた各国からの質問書に【うちも訳わかりません】とは言えない。だからと言って【うちのアホな魔法使いが花火を打ち上げました】とも言えない。とりあえず謝るのが関の山だ。
「でもこれで私の予言は当たったでしょう!?いい加減信じてくれるお父様!?」
お父様は物凄く渋い顔をしている。駄目よそんな顔しても怖くないわ。お父様はまん丸で可愛いお顔なんだから。
「……私だって可愛いお前の言う事を信じてやりたいのは山々だ。だがいきなり我が国がローゼンガルドに滅ぼされるなどと言う荒唐無稽な話を信じろと言われてもな………。」
それはそうだ。私だって逆の立場ならすぐに信じろと言われても無理だろう。やはりなにか証拠を見つけないと……。
「お父様が信じられる証拠を見つけてくるわ。だから待ってて!」
きっとアンリ様が教えてくれる。私の求める何かを。今は彼を信じるしかない。そして私は今夜に備えた。
「っ!!!………………今晩は。」
今夜はいきなりベッドの上に落ちてきた私をアンリ様は怒りもせず優しく迎えてくれる。でもびっくりさせちゃったみたいね。
「今晩はアンリ様。ご機嫌はいかが?身体は大丈夫?」
アンリ様は呼吸は昨日より楽そうだがやはり少し苦しそうだ………。
「だいぶ調子が良かったのですが………昼過ぎ頃から少しずつ……。」
「わかりました。まずは身体が先だわ。アンリ様、手を出してくれますか?」
私はアンリ様の手を取ると、ゆっくりと魔力を流し込む。
「………あの…昨夜はこの方法では……。」
う………やはりあの時意識があったのね。急に私の頬に火がつく。
「あ、あれはその……身体に負担をかけずに一気に流し込むにはあの方法しかなくて……。」
アンリ様………まさか私の事痴女だとでも思ってるのかしら……思ってないわよね!?アンリ様の顔を見ると彼もまたその青い瞳に私を映している。
「それなら…昨夜と同じようにしていただけませんか………?」
「えっ!?」
昨夜と同じようにって………それってチューしろって事!?真っ赤に染まっているであろう私
の顔を見てアンリ様の頬も朱に染まり、照れているのか手で口元を押さえている。
「あ、あの……アンリ様?」
「…あなたが嫌なら…聞かなかった事にして下さい。でも身体に負担をかけずに時間も短縮出来るなら……私はそちらの方が……。」
あぁそうか…。私と沈黙のなかずっと手を握り続けられるのも辛いわよね……。さすが大人だなぁ……。よく知りもしない女に一発チューされる方が楽なんて…。それならそうしてあげようか。
「わかりました。」
私の答えにアンリ様が嬉しそうに微笑んだように見えたのはきっと気のせいだろう。ホッとしたのだ多分。
私はアンリ様に膝立ちになって近付くと、その両頬を包む。
「アンリ様、少しだけお口を開けて?」
うぅ…やりづらい。アンリ様、どうして目を閉じてくれないのかしら。そんなに目を見つめられると恥ずかしくてたまらないわ。
アンリ様は私の言う通り形の良い唇を少しだけ開けてくれる。美しく並んだ白い歯がチラリと見えて、何だかドキドキしてしまう。
少しずつ顔を近付け、魔力が漏れ出さないようにぴったりと唇を合わせる。私の身体から魔力がアンリ様へと流れ出す。
ん……!?何これ……
私の背中と腰にアンリ様の手が回る。大きな手は優しくてまるで…何だかすごく大切に扱われてるみたい……大人ってこんな風にキスもスマートに出来るのね。何だか勘違いしちゃいそうだわ……。それに少しずつ身体を寄せられてる!?何してるのアンリ様!?あ!そうか体勢が辛いのかな!?私が変に意識して離れすぎてたからかな。
これはアンリ様の治療。アンリ様は紳士だから私が不快な思いをしないようにしてくれてるだけ。落ち着けエルフィリア。
やがて血の気が引く感覚が訪れて治療は終わる。目の前に星が飛ぶ私をアンリ様は膝の上に抱いた。
あぁ、こうしてもらうと幾分か楽だ。未来の私は貧血などお構いなしに立たされアンリ様の部屋から連れ出されていたから………って呑気に膝に抱かれてる場合じゃない!
「す、すみません!今退きます………」
介抱されてどうする私!しかしアンリ様の腕は私を抱えたまま動かない。
「アンリ様………?」
目の前にはまだ星が飛んでいてアンリ様の表情がわからない。
「大丈夫です。あなたの症状が治まるまでこうしています。」
「申し訳ありません……でも魔力を貰っているからと言ってあまり気を遣わないで下さいね。これは私がまだまだ未熟なせいでもありますから…。」
その言葉にアンリ様は何も答えなかった。
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