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第二章
5
しおりを挟むいつもと違うキスって……?
キスに種類なんてあるの?何が違うの?
アンリ様はゆっくり身体ごと近付いて来て、かかる重みにベッドが軋んで音を立てる。
「エルフィリア…」
私の名前を呼ぶ声もいつもと違う。
それは焦がれるような熱を孕んでる。
“逃げないで”って言うけど逃げるほど嫌な事をするの?でもアンリ様にされて嫌な事…?そんなのないわ。
私は彼よりずっと年下で子供だけど、そのおかげでこれからたくさんの“初めて”を彼と経験できる。きっとアンリ様はその度に何も知らない私に優しく教えてくれる。それを幸せと思うことはあっても逃げるなんて有り得ない。
柔らかくて私より少しだけ冷たい唇が優しく降りてきて、目を閉じる瞬間アンリ様の唇が少しだけ開いたのが見えた。
(えっ!?)
彼の温かい舌が遠慮がちに私の中に入って何かを探してる。
(アンリ様の舌が…舌が入ってる……これもキスなの?)
「…エルフィリア…舌を出して?」
少しだけ唇を離しアンリ様はもう待てないと言うように切ない顔をする。
(舌を出すなんて…そんなの恥ずかしいよ…!)
でも…恥ずかしいけど嫌な訳じゃない。
舌を出せって言ってもどうやって出すの?
ベーって出す?…何か違う気がする…。
答えを知らないんだから考えても仕方ない。
教えて貰おう。
「アンリ様?どうやって出せばいいの…?」
「…エルフィリアの口の中に入るから…同じように舌で応えてくれる…?」
舌で応える…舌同士が挨拶するようにすればいいのかな…。
もう一度、今度は躊躇わずに入ってきた舌に自分のそれで触れると、まるで生き物のように絡めとられお互いの唾液がゆるゆると混ざっていく。
何て気持ち良いんだろう。頭の中はふわふわとして、口の中は柔らかいアンリ様の舌に可愛がられて。
(ずっとこのままでいたい…。)
人のお口の中がこんなに甘くて柔らかくて美味しいものだなんて知らなかった。
でもアンリ様は苦しそうな顔をして唇を離してしまう。どうして離れちゃうの?どうしてそんなに苦しい顔をしてるの?魔力が足りなくて苦しくなってしまったの?
「違うよ。好きで好きでたまらなくて…苦しいんだ…。」
「好きで好きでたまらなくて苦しいの…?」
「エルフィリアは違うの?私を想う時…」
アンリ様を想う時……。
私も苦しかった。アンリ様の心がわからなくて。でも今は違う。
「アンリ様の心がわかった今は嬉しい。嬉しくて幸せ。あのねアンリ様…今のとっても気持ち良くて…だからもう少しキスしていたいの…。駄目?」
私がそう言った途端アンリ様の顔は火がついたかのように赤くなる。耳朶に至っては火傷でもしたのかと思うような色合いだ。
「アンリ様!?」
「…エルフィリアは一体私をどうしたいの?可愛すぎて心臓が止まりそうだよ…!」
心臓が止まる!?
「大変アンリ様!早くお口を開けて?今力をあげるから……あ、あのねアンリ様?力をあげながらさっきの…して欲しいな…」
最後は恥ずかしくて、少しうつむいてもじもじしてしまった。ちゃんと伝わったかな…?
顔を上げて見るとアンリ様は手のひらを顔に当てて仰向けに倒れている。
「えぇっ!?アンリ様!?アンリ様どうしたの!?」
殺されてしまうかもしれない。アンリはこの夜、愛しくも少し幼い恋人の何気無い発言がとんでもない威力を持って自分を仕留めに来る怖さを知った。不謹慎だがファルサよりも身体に悪い気がした。
けれどエルフィリアはそんなアンリの気持ちも知らず、早く魔力を渡そうと口付ける。
エルフィリアはこの夜、眠るまでたっぷりとお願いを叶えて貰って文字通り夢見心地だった。
まだ戦いはこれからなのに。目の前にいるアンリ様が愛しくて愛しくて少しだけ幸せを欲張ってしまった。
だからきっとあんな夢を見てしまったのだ。
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