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第二章
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しおりを挟むこの前した“おまじない”のような触れるだけの優しいキスをされ、唇が離れる。
(淋しい…)
唇が離れた瞬間そう思った。だからもう黙っていられなかった。
「アンリ様…好き…好きなの…アンリ様のごどがだいずぎにゃの!」
最後の方は口が歪んでうまく言えなかった。だって“愛してる”って。アンリ様が私を“愛してる”って言ってくれたのが嬉しくて。
今まで私は自分でも気付かないうちに我慢をしていたんだろうか。心や涙がアンリ様の“愛してる”の一言を聞いただけで、まるで塞き止めていたものが決壊したかのように溢れ出ていく。
しかし私の発した不可解な言語がツボに入ったのかアンリ様は何だか色々堪えているご様子である。堪えすぎて色んなところから息が漏れている。ひどい。ひどすぎる。笑いたいならちゃんと笑ってくれ。その方がこっちも傷が少ない。
「…っふふ、エルフィリア…猫になっちゃったの?いくら二匹飼ってるからって…ふふっ、ごめん笑って…」
「ひどいアンリ様…わ、わだしがどれだけ悩んでたかじらないでじょ…うぅぅ…」
「どうしてエルフィリアが悩むの?悩んでいたのは私の方だよ。」
アンリ様が?どうして?
彼は優しく微笑み、ぐちゃぐちゃの顔で不思議そうに見上げる私の涙を拭ってくれる。
「ほら、鼻もかんで?」
小さな子供にするように布を私の鼻にあててくれるがさすがにそれは恥ずかしすぎるので、布だけ有り難く拝借した。
「…ずっとエルフィリアを特別な女性として接してきたのだけど……」
「“けど”何?」
何だか言いにくそうにしている。これはまた私の行いに何か問題があったのだろう。遠慮なく全部教えて下さい。
「…じゃあ言うね。どんなにエルフィリアに態度で示してもエルフィリアは私を治療の対象としか見ていなくて…だからわかってもらえるようにたくさん意思表示したんだ。」
「意思表示??」
「うん。魔力を貰うキスの後はあなたが回復するまでずっと腕に抱いていたでしょう?」
確かに。いつも具合の悪い私を気遣ってくれていた。
「あなたを信じて隠し通路も教えたし」
うん。星が綺麗だった。
「夜は帰って欲しくなくてキスの最中に眠ってくれるように頭を撫でて」
あれはそういう事だったのか!
「眠ってくれたら離さず腕に抱いて一緒に寝て」
思い出すと恥ずかしい。身体中がアンリ様の匂いだった。
「お父上に“今度正式にその話をさせて貰いたい”って言ったの憶えてる?」
憶えてる。で、その話ってどの話?
「結婚の話だよ。」
「結婚!?誰と誰が!?」
「私とエルフィリアだよ。」
「えぇっ!!??」
アンリ様はガックリと肩を落とす。
何で!?結婚て!!どうしたらそういう話になるの!?
「“あなたに帰って欲しくなくて起こさなかった”ってお父上の前で言ったでしょう?あれを聞いたら大概の人間は私達の関係を知らなくても私があなたをどう思っているか理解するよ。」
「私…アンリ様はひとりぼっちになってしまったから淋しいんだとばかり……」
でも違った。アンリ様はもうずっと前から私との結婚を考えるほど想ってくれていたんだ…
私の言葉にアンリ様は“あぁ、もう!”と少し呆れたような諦めたような声を出し、私の背に手を当てて後ろに倒した。跨がるようにして上から見下ろされ、胸が破裂してしまいそうなほど早鐘を打つ。
「心配だよエルフィリア…。私の方が聞きたい。あの日…目の前で苦しんでいたのが私じゃなかったらどうしてた?私にしたようにキスで魔力をあげた?」
アンリ様じゃなかったら……?
考えた事も無かったけど、そんなの決まってる。
「キスなんてしないわ。絶対にしない。」
私の即答にアンリ様の顔は驚いて固まる。
「私、未来でも今でも、キスはアンリ様としかした事ないわ。」
そう。今までの治療は練習も含め全て手からだった。未来でアンリ様にしたキスが正真正銘私の人生初めてのキスだ。治療だけど。
…でもその経験があったから…何度もしてたから今のアンリ様にも躊躇わずにできたのよね。
「エルフィリア…さっき言ってくれた言葉…もう一度聞かせて?」
「さっき言った言葉?」
「私を好きだって…もう一度…いや、何度でも聞きたい。」
「……好きよアンリ様…大好き……」
アンリ様ははにかむように笑い、私にゆっくりと顔を近付ける。
「…エルフィリア…今から少しだけいつもと違うキスをするけど逃げないで……?」
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