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しおりを挟む「間違いないの?」
オレクに問い掛ける。
すると彼は真剣な顔で頷き、続いて護衛として同行していた騎士が口を開いた。
「おそらく間違いないでしょう。旅姿をしていますが、雰囲気が物々しいので少し前から気になっていました」
馬車を停車させたのは、私の指示を仰ぐためと、追跡者らしき者を試したのだという。
「こちらが停まった途端、あちらも休憩を取りました」
「……確かに怪しいわね」
こんな早朝で人通りもない時間帯に、同じ方向へ用があるなんて。
偶然にしては出来すぎだ。
しかも休憩のタイミングまで一緒だなんて。
「人数は?」
「三人です」
「帯剣してる?」
「マントが邪魔で確認できませんが、おそらく」
騎士の数はこちらが上だ。
しかも連れてきているのは侯爵家の精鋭。
「急ぎましょう。あなたたちを信じるわ」
引き返すという選択肢がなかったわけではない。
しかし既に郊外に差し掛かっている今、戻るより少し先にある宿場を目指した方が早い。
そして馬車は再び走り出す。
「何事もなければいいけど……」
だがこのあと、私は自身の選択を酷く後悔することになる。
*
緊張に包まれながら旅路を急いだものの、その後、危惧していたようなことは起こらず、私たちは無事に宿場へたどり着くことができた。
「ここに泊まるのも久しぶりね」
領地に行くたびに立ち寄り、世話になった馴染みの宿。
だが、いつも笑顔で迎えてくれていた店主と、その家族の姿が見当たらない。
出迎えてくれた男性は、キョロキョロと辺りを見回す私に声を掛けた。
「あの、どうかなさいましたか」
「あぁ、ごめんなさいね。こちらの宿にいつもお世話になっていたのだけれど……ご主人はどこにいらっしゃるのかしらと思って」
「ああ、そうでしたか。実は……前の店主は身体を壊されて、ここを継いでくれる人間を探していたんです。それで縁あって、わたくしが引き継がせていただくことに」
「まあ、そうだったの」
前の店主はとても人当たりが良い人だった。
そして同じく気立ての良い奥さんと、毎日楽しそうに宿を切り盛りしていた。
この辺りに宿屋はいくつかあるが、ここはその中でも特に宿泊客の安全を重視していて、店主が少しでも引っ掛かりを感じるような怪しい人物は宿泊を断るし、夜の戸締まりもしっかりとしている。
気分の重い道中だったが、あのご夫婦にまた会えるのだと思うと少し心が和らいだ。
新しい店主だという男性は、人が良さそうというか、なんだか気弱そうな感じもするけれど、なんといってもあのご主人が店を任せたくらいだ。
きっと大丈夫だろう。
「こんな大人数の急な宿泊も、嫌な顔一つせずに引き受けてくれて本当に嬉しいわ。前のご店主も、あなたにこの宿を継いでもらえて喜んでいるでしょうね」
「ありがとうございます」
男性は目を細め、微笑んだ。
私たちは記帳を済ませると、それぞれに割り当てられた部屋へと向かった。
「あなたたちも、交代したらちゃんと休んでね」
私は部屋の前を守る騎士にそう伝えたあと、寝台に身を沈めた。
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