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しおりを挟む「え……」
避ける間もなかった。
アルベールの端正な顔が近づき、薄く開いた唇がサラのそれを優しく食んだ。
「ん……や…………ぁ…………」
アルベールはサラの果実のようなぷっくりとした下唇の感触を味わうように、角度を変えながら二度三度食むと、今度は深く口づけてきた。
サラにとっては人生初めての異性との口づけ。
しかもこれから自分を裏切り、暗殺者を雇って殺す人とだ。
「ん……んぅ…………んっ」
熱い舌が腔内に滑り込み、ゆっくりと歯列をなぞり終えるとサラの舌を絡め取った。
合わさった唇の隙間から聞こえる唾液の撹拌される音が耳に届き、羞恥心を刺激する。
アルベールの舌はまるで生き物のようにうごめいて、サラを捕らえて逃がさない。
「ん…………っ…………!」
サラはどうやって息を継げばいいのかわからず、あまりの苦しさに思わず身を捩った。
ようやく唇が解放され、サラは大きく胸を上下させた。
「…………サラ…………」
名を呼ばれ、息も絶え絶えのサラがアルベールに視線を向けると、彼は濡れた唇をそのままに、恍惚の表情でサラを見つめていた。
「アルベール……さま……?」
アルベールの白く長い指先が、サラの額に張り付いた髪を優しく払う。
「あぁ……可愛いね、サラ。……嫌ではなかった?」
嫌ではない。
むしろずっと望んでいたことだ。
けれどそれは今じゃない。
「サラは、アルベール様の気持ちが──」
「これが私の気持ちだよ」
言い終わらぬうちに、アルベールの手がドレスの中へ潜り、指先がサラの太ももをそうっと撫で上げた。
「あっ……だめっ」
抵抗しようとしたサラの両手を頭の上でひとまとめにすると、アルベールは再びサラの唇を塞いだ。
絡み合う舌に気を取られている隙に、アルベールの手はサラの秘所を覆う下着に辿り着き、中心を円を描くように撫で回した。
「んっ、んっ、んん────!!」
初めて知る感覚に、頭の中が真っ白に染まる。
アルベールは唇を離すと今度はサラの耳朶に舌を這わせた。
鼓膜に響く粘着質な音と吹きかけられる熱い吐息に何も考えられなくなる。
「あっ、あん、嫌ぁ、アルベール様ぁ」
自分のものとは思えない鼻にかかった甘い声。
アルベールはうっとりと目を細め、満足気に微笑むと、少し力を加えた指で割れ目に沈む布地を下から上に繰り返しなぞった。
「あぁ、あっ、あぁん、だめ、だめぇ……!」
「サラ……あぁ、たまらないな……」
アルベールの手が下着の横から滑り込み、すっかり潤みきった花弁を指の腹でなぞるように往復させた。
そこから痺れるような甘い疼きが生まれ、サラの腰が自然と浮いた。
「ドレスを脱がせられないのが残念だ……この胸も可愛がってあげたかったのに」
アルベールが切ないため息を落とす。
(脱がせられないのが残念……?)
不思議顔のサラに、アルベールはふふっと笑みを漏らした。
「そんなことをしたら屋敷の皆にバレてしまうだろう。君に良くない噂が流れるのは本意ではないからね」
どうやらサラの外聞を気にしてくれているようだが、それならそもそもこういうことをしなければ良いのでは。
「サラ、よそ見しないで」
「あっ、あん……」
水たまりをかき回すような水音とともに、アルベールの指の動きが滑らかになる。
速度を増す指の動きにサラの奥は悦びに震え、足を硬直させた。
「あっ、あっ、もうやめて」
感じたことのない強い快感が、爆ぜる場所を探し求めてサラの奥深くで暴れまわる。
「いや、アルベール様、だめ……!」
「いいよ、サラ……そのまま何も考えずに私の指に集中して」
怖い、けれどもう解放されたい。
サラはぎゅっと目を瞑り、必死でアルベールにしがみついた。
サラを高みへ導こうと、アルベールの指がぷっくりと赤く膨らんだ蕾を擦り上げる。
「ひっ、あっ…………あ…………っ」
一際高く啼いたサラの弱い場所を、指の腹で執拗に捏ね回す。
「ん、あん、あ……ひっ、い…………あ──っ!!」
強烈な快感が下肢から脳天に向かって突き上がる。
頭の中で星が弾け飛び、サラはガクガクと腰を痙攣させながら絶頂へと達した。
快楽の余韻に身体が小刻みに震え、やがてぐったりと脱力した。
放心状態のサラが目を開けると、アルベールは自身の指にたっぷりと絡みついた愛液を舌で舐め取っていた。
サラは驚愕し、すぐさまアルベールの手を両手で掴んだ。
「やっ、やだっ、アルベール様やめて」
「どうして?」
「どうしてって……汚いから」
「サラに汚いところなんてない」
愛液をすべて舐め取ると、アルベールは再びサラをソファに横たえた。
「身体がつらいだろうから、もう少しこうしていて」
(慣れてる……)
事後の扱いも、どこをどうすれば女性が悦く啼くのかも。
知りたかったのは彼の気持ちで、こういうことではなかったのに。
これまで彼と過ごした六年の時間がすべてひっくり返るような感覚。
(私はこれまで、アルベール様の何をみていたんだろう)
サラは益々彼のことがわからなくなってしまった。
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