嘘つきな獣

クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中

文字の大きさ
20 / 43

19

しおりを挟む




 ロートスを落とすのは赤子の手をひねるようなものだった。
 長い年月、いかに彼らがエドナの武力に頼り切りだったのか実感する。
 そして馬鹿にされながらも彼らを守り続けた自分たちの人の良さに嫌気が差した。
 事前に打ち合わせした通り、アレンと共に玉座の間へ向かい、王と王を守る兵士たちを捕縛する。
 
 「セシル殿!なぜこのような真似を……!!」

 ロートス国王は、あたかも自分が被害者のような口振りでセシルを非難した。
 しかしセシルは相手にせず、アレンにその場を任せて早々に立ち去った。
 
 セシルは混乱する城内を制圧しながら、シャロンの姿を探した。
 そして辿り着いたシャロンの部屋で、セシルは恋い焦がれた人と四年ぶりの再会を果たす。
 成熟した女性に成長したシャロンは信じられないほど美しかった。
 初めて出会った時とは比べ物にならないほどの衝撃がセシルを襲う。
 曇りない澄んだ瞳。
 こんなにも清らかな彼女が、本当に自分を裏切ったのか。
 やはり、なにか勘違いがあったのではないだろうか。
 とにかく落ちついて話をする必要がある。
 何よりシャロンは気の毒なほど怯えていた。
  
 ──怪我はないか

 そう口にしようとした時だった。
 セシルの視界にあるものが飛び込んできた。
 トルソーに飾られた花嫁衣装だ。
 上質な絹で作られた純白の衣装は、セシルが贈ったものよりもデザインが洗練されていて、見るからに豪奢だった。
 そして、それがエウレカの王子からの贈り物だと気付くまでに、時間はかからなかった。
 一瞬で身体中の血が煮え滾り、逆流したような錯覚を覚える。
 激しい怒りに身を任せ、ドレスを剣で引き裂くと、シャロンと侍女が悲鳴を上げた。
 化け物でも見るかのような視線を向けられ、セシルは自分を制御する術を失った。

 そこからはもう、自分でも思い出したくないことばかりだ。
 
 エドナへ帰国し、シャロンから話を聞くつもりだった。
 けれど、できなかった。
 彼女の部屋に飾ってあった花嫁衣装が、これまでセシルが抱いてきた疑問への答えそのものだと感じたからだ。
 そして彼女の身の安全を確保する目的で用意した塔で、セシルは許されない事をした。
 彼女の身を守るどころか、傷つけ、汚した。
 シャロンは最初からずっとセシルを裏切っていないと訴え続け、事実彼女は清い身体だった。
 それならエドナへ、そして自分の元に届いた調査結果はいったいなんだったのだ。
 しかしそれでも彼女を前にしてしまうと素直になれない。
 毎日のように彼女の元を訪れているのに、何ひとつ肝心な事を伝えられないまま日々が過ぎていく。
 
 
 
 



 
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

砕けた愛

篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。 あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。

ローザリンデの第二の人生

梨丸
恋愛
伯爵令嬢、ローザリンデの夫はいつも彼女より仕事を優先させ、彼女を無碍にしている。 彼には今はもういない想い人がいた。 私と結婚したことにいい思いをしていないことは知っていた。 けれど、私の命が懸かっていた時でさえも、彼の精神は変わらなかった。 あなたが愛してくれないのなら、私は勝手に幸せになります。 吹っ切れたローザリンデは自分自身の幸せのために動くことにした。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 1/10 HOTランキング1位、小説、恋愛3位ありがとうございます。

さよなら、私の初恋の人

キムラましゅろう
恋愛
さよなら私のかわいい王子さま。 破天荒で常識外れで魔術バカの、私の優しくて愛しい王子さま。 出会いは10歳。 世話係に任命されたのも10歳。 それから5年間、リリシャは問題行動の多い末っ子王子ハロルドの世話を焼き続けてきた。 そんなリリシャにハロルドも信頼を寄せていて。 だけどいつまでも子供のままではいられない。 ハロルドの婚約者選定の話が上がり出し、リリシャは引き際を悟る。 いつもながらの完全ご都合主義。 作中「GGL」というBL要素のある本に触れる箇所があります。 直接的な描写はありませんが、地雷の方はご自衛をお願いいたします。 ※関連作品『懐妊したポンコツ妻は夫から自立したい』 誤字脱字の宝庫です。温かい目でお読み頂けますと幸いです。 小説家になろうさんでも時差投稿します。

【完結】大好きなあなたのために…?

月樹《つき》
恋愛
私には子供の頃から仲の良い大好きな幼馴染がいた。 2人でよく読んだ冒険のお話の中では、最後に魔物を倒し立派な騎士となった男の子と、それを支えてきた聖女の女の子が結ばれる。 『俺もこの物語の主人公みたいに立派な騎士になるから』と言って、真っ赤な顔で花畑で摘んだ花束をくれた彼。あの時から彼を信じて支えてきたのに… いつの間にか彼の隣には、お姫様のように可憐な女の子がいた…。

処理中です...