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しおりを挟む部屋に戻ると、ばあやと侍女が爛々と目を輝かせて待ち構えていました。
「アンネリーエ様!いかがでした!?」
「いかがでしたって、何が?」
「んもぅ!エリアス王子とどのようにお過ごしになられたかって事ですよ!」
どうやらふたりは、私とエリアス王子の仲に興味津々なようです。
ばあやに至っては、昨日動揺でティーポットを割っていたくらいですから、それは気になる事でしょう。
「あのように美しい殿方から愛されて求婚されるなんて……姫様が本当に本当に羨ましいです……」
年若い侍女は夢見るような顔で呟きます。
何だかハロルドの時よりも反応が凄いような気がするのは気のせいでしょうか。
「ですが……あんなにも麗しい殿方、しかも第二王子殿下であらせられるのに、何故ご婚約者のひとりもいらっしゃらないのでしょう?」
ばあやが不思議そうに呟きます。
言われてみれば確かにそうです。
確かエリアス王子の兄であるアヒム第一王子には、幼い頃からご婚約者がいたはず。
それならば決まったお相手のいないエリアス王子には、数多の貴族令嬢が群がるでしょうに。
「きっと姫様への想いが捨てられなくて、どのお話も断っていらしたに違いありません!」
侍女は力説しますが、例えそうだったとしても嬉しいとは思えません。
どの道お断りする話なのですから。
*
その晩、広間ではエリアス王子とその従者たちを歓迎する晩餐が開かれました。
父を上座に、そして私たちは長テーブルを挟み、ローナンの方々と向かい合わせに着席しました。
今夜は母と姉も出席しているので、私はエリアス王子と少し距離のある席次です。
何でしょう。昼間の事もあるので、少しホッとしている自分がいました。
──晩餐の場でもあんな風に見つめられたら、周りに変な風に思われてしまう
しかし、その考えは杞憂に終わります。
「そうですか、テレーゼ殿下は刺繍が趣味でいらっしゃるのですね。きっと素晴らしい腕前なのでしょうね。機会がありましたら、ぜひ拝見したいものです」
「まあそんな……エリアス殿下にお見せするような物ではございませんわ」
エリアス王子は晩餐の間、姉のテレーゼにばかり話を振っていました。
天使の微笑みをひとり占めする姉は、とてもご満悦な様子です。
この様子なら私と彼の仲を疑う人はいないでしょう。
──心配するだけ無駄だったわ……
人前で軽率な事はしないという約束を守ってくれているのでしょう。
ですがしかし、これでは彼が姉を口説いているようにも見えなくはありません。
男の人とはこんなにも上手に隠し事ができるものなのでしょうか。
私を想っていると口にしておきながら、いとも簡単に真逆の行動を取れるエリアス王子に対し、何故かモヤモヤした気持ちが湧いてしまいました。
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