婚約者の恋人

クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中

文字の大きさ
11 / 49

11

しおりを挟む





 話は少し前に遡る。
 その日執事のエリオらによって偽造された手紙がアルヴィア公爵邸に届いた。
 両親はもちろんシルフィーラの二人の兄達も、可愛い妹からの手紙を前にして興奮を隠せなかった。

 「何て書いてある?“早く帰りたいから迎えに来て”だろ?」

 「違うよカイン。僕達が迎えに行くまで待ってられないだろうから“これから帰る”でしょ!」

 小さかった妹は年頃になり最近めっきり冷たくなってしまったが、昔は甘えん坊でいつも抱っこをせがんできて兄達はメロメロだった。
 もちろんメロメロなのは今でも変わらない。日を追うごとに美しくなる妹に変な虫がつかないよう常に警戒し時に撃退してきた。
 それでもいつかは好きな男を作ってあっさり自分達を捨てて幸せになるのだろうとは思っていたが、どうせ相手は王都に居を構える貴族だろうから会いたい時にはすぐ会える。何かあれば旦那を殴り倒しに行ってやるくらいの気持ちでいたのだ。
 それなのにシルフィーラが選んだのはよりにもよって辺境の地に住まう男。これじゃ何かあってもすぐに対処できない。二人は頭を抱えた。
 けれどシルフィーラは都会育ちの箱入り娘。無骨な辺境伯との田舎暮らしには耐え切れず、すぐに帰ってくるだろうと思っていたのだ。
 しかし手紙の内容は彼らが想像していた内容とは真逆のものだった。

 「ベ……ベルクールの地を気に入った……?」
 「結婚を早めるだって……!?」

 「やっぱりな。こうなるだろうとは思っていたよ。」

 シルフィーラの父アルヴィア公爵は微笑む。

 「何言ってんの父上!?このままじゃシルフィーラは本当にあんなド田舎に嫁に行っちゃうよ!?」

 カインとアベルは二人揃ってテーブルに手を付き、前に身を乗り出して訴えた。まさか父親がこんな話を嬉しそうにするなんて。
 だって自分達以上にシルフィーラを可愛がっていたのは両親だ。とりわけこの父の妹への溺愛ぶりは時に息子達をも引かせたくらいだ。
 だから例えシルフィーラがベルクールへ行くと言っても絶対に反対するに決まってる。言わば絶対的な最後の砦のはずだった。

 「……ベルクール卿なら必ずシルフィーラを幸せにしてくれるはずだよ。王都で色恋に興じている貴族の子息なんかより余程ね。」

 父親の表情には迷いも躊躇いもない。
 本気でベルクール卿の事を信じている様子だ。

 「何でそう言い切れるのさ?その理由は?」

 それでも納得のいかない兄弟は尚も詰め寄る。人の事は言えないが妹の事となると本当にしつこく、そして見境なくなる兄弟だとアルヴィア公爵は頭が痛くなった。

 「お前達にはまだ話してなかったが、この縁談は卿自ら私の所へ持ってきたんだよ。どうしてもシルフィーラを妻に欲しいと頭を下げてね。」

 「「頭を下げて!?」」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には何年も思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

【完結】記憶を失くした旦那さま

山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。 目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。 彼は愛しているのはリターナだと言った。 そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。

夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。

MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。 記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。 旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。 屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。 旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。 記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ? それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…? 小説家になろう様に掲載済みです。

【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!

さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」 「はい、愛しています」 「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」 「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」 「え……?」 「さようなら、どうかお元気で」  愛しているから身を引きます。 *全22話【執筆済み】です( .ˬ.)" ホットランキング入りありがとうございます 2021/09/12 ※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください! 2021/09/20  

処理中です...