王女は魔道師団長の愛に溺れる

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 ユーインと並んで歩けるなんて夢のようだった。
 しかし王宮内の宮廷魔導師団の本部から、自室のある宮殿まではそう遠くない道のりだ。
 次はいつこんな機会に恵まれるかわからない。
 だからこそ限られた時間でたくさん聞いてみたいことがあった。
 けれど、頭の中で幾度も考えてきた質問の数々も、いざその時が来ると緊張で何も出てきてくれない。

 「殿下は勉強熱心ですね」

 「え!?」

 思いがけずユーインの方から話を振られ、裏返った声が出てしまった。
 
 「受講する者たちの中で、一番熱心に話を聞いてらっしゃるから」

 ユーインが自分を見てくれていたことに喜びを感じる一方で、講義を受ける動機の中に邪な気持ちも混じっているリーリアは、何だか申し訳ないような気持ちになる。

 「あの……変わってると思われますか?魔力も持たない私が魔法の勉強なんて……」

 この国の子どもたちは皆、七歳を迎える年に魔力持ちかそうでないかの審査を受ける。
 魔物という異形の生物に対抗するには人間はあまりにも非力だ。
 だから早いうちに魔法の才能の有無を見抜き、優秀な魔導師へと育て上げることに国は力を入れている。
 もちろんリーリアも七歳の誕生日を迎えた日に審査を受けた。
 しかし立ち会った魔道師たちからは【リーリア王女は魔力を有さず】という判断が下された。
 同じく七歳の時に審査を受けた姉姫たちも同様の結果だったし、何よりユーインと出会う前の出来事だったので、その時は悲しいとか残念だとかいう気持ちを抱くことはなかった。
 けれどドニエの森でユーインと出会ってから、リーリアはその日自分に下された判断を呪った。
 もし魔力があれば、リーリアが王族の一員として政略結婚を強いられる可能性は大きく減る。
 優秀な魔道師は国の宝だ。
 研鑽を積み、立派な白魔法の使い手になれば、ユーインの側で魔導師として生きる道もあった。
 けれど魔力を持たないリーリアが、いくらアカデミーで勉強をしたところでいつかは終わりがくる。
 頭ではわかっていても、どうしてもあきらめられなかった。
 それに、ユーインのことを抜きにしても、リーリアは魔法の神秘的な世界に魅せられていた。
 魔力がなくとも、この知識が役に立つ日は必ず訪れる。そう信じて必死で学んだ。

 しかし周囲がリーリアに向ける眼差しは、好意的なものだけではない。
 王女の道楽だと馬鹿にする者だっている。
 だがそれも当たり前だ。リーリアは皆のように誰かを守る訳でも、命を懸けて戦う訳でもないのだから。
 
 「私たちは魔法使いは個々の能力は高いかもしれませんが、その正しい使い方を知らなければ無力と一緒です。そして人と異なる能力を持つがゆえに孤独を抱える者もいる。そんな時、殿下のように私たちの存在を受け入れ、同じ志を宿してくださる方がいるのは素晴らしいことです」

 「ユーイン様……」

 自分の存在を否定されなかったことが嬉しかった。けれどそれよりも気になることが。

 “孤独を抱える者”

  ユーインも、人知れずなにかを抱えているのだろうか。

 ──もっとあなたのことを知りたい
 
 そんな気持ちが今日、リーリアの胸の中でまた一つ大きく膨らんだ。









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